27 / 37
27. 臨海&林間学校【2日目、3日目】その4
しおりを挟む
山登りの後は冷たい海で汗を流す。ひんやりとした海水は、火照った身体を冷やしてくれる。姫奏と一緒に泳いだり、マノン先輩たちとも色々な事をして遊んだ。
その日の夜は先月から生徒会でこっそりと進めてきた企画、肝試し。今日の昼間に係の生徒が海や山に行っている生徒にバレないようにこっそりと設置した仕掛けが山ほどある、宿舎の裏手の雑木林の散歩道がコースだ。
一緒にいきたい人がいる人はペアで、特にそういう人がいない場合はくじで二人組をつくって回ることになる。希望者のみの参加なのだけれど姫奏曰く毎年ほぼ全員が参加しているらしい。普通に歩けば五分ほどの散歩道だけれど、ペアに与えられた懐中電灯一つだけで薄暗く薄気味悪い道を歩くのには時間がかかり、十五分ほどかかってしまう。そういう事情もあってコースが三つ設置され、各々から二分後とに次々と出発してゆく。コースごとに仕掛けは若干異なるものの怖さは変わらない。
無論わたしのペアは姫奏だ。ふと隣にいる姫奏をみると、前に立つ生徒会役員の説明を聞きながら軽くため息をついていた。
「……どうかしたんですか?」
「えっ? ああ、いえ、大丈夫よ。ちょっと思い出したことがあってね……」
「思い出したこと、ですか?」
「そう。清歌はこのイベントの別名を知ってるかしら?」
何故か頬を少し赤らめながら訪ねてくる。わたしは疑問におもいつつも、
「う~ん、知らないです」
と答える。すると姫奏は更に赤くなると、わたしにだけ聞こえるような小さな声で正解を教えてくれた。
「……悲鳴と嬌声の夜」
「ふえっ!?」
思いがけない名前に思わず声を大きくしてしまった。
「悲鳴と嬌声の夜、というのよ。……今智恵が口うるさく繰り返しているでしょう?」
姫奏の指差す方を見ると、確かに智恵先輩が何度も何度も、
『就寝時刻までには戻ってくるように!』
と繰り返していた。……どういうことだろう。今はまだ八時前。就寝時間の十一時には程遠いのに。全員が回りきったとしてもまだまだ時間はたっぷりと残る。
「あのね、この学校には私たちみたいなカップルが多いでしょう? だからね、こういうイベントの時にはね……その……みんな羽目を外してしまうのよ」
「あぁ……なんとなく分かったような気がします」
「ね? スタートの時には名前を確認するのにゴールではしないでホテルでする理由は分かる? ……八割を超える生徒がゴールせずに行方不明になるからなのよ」
八割……!?
「はじめは悲鳴はがり聞こえていた雑木林や近くの丘、海岸に至るまで、あちらこちらから聞こえてくる嬌声。だから悲鳴と嬌声の夜というのよ」
「…………」
わたしはあまりの驚きに声もでなかった。確かになんでゴールで名前の確認をしないんだろうとか、コースの割りには仕掛けが少ないとは思っていたけれど、みんなそういうのを気にせず甘い時間を過ごしにどこかへいってしまうからだったんだ……。
「大抵ながくそういうことをしたい人が多いだろうと、まだ明るいうちから上級生が出払って、明るいうちからまわるのはつまらないから譲ってくれたのかしら……。と勘違いした後でいく下級生が、その空気から何があるのかを察して……が毎年のサイクルよ」
「な、なるほど……。でも、先生方は何も言わないのですか?」
そう。自由にできる行事だからといっても引率の先生はもちろんいる。そういうことを知らないはずもないと思うけれど……。
「うちの先生方は大体うちの卒業生でしょう? ……だからほとんどの先生も同じことをやってたと思うの。だから何も言わず、というかむしろ先生方同士でもそういうことをしている姿を見つけたことがあるわ……」
「ひえぇ……」
まさに星花女子学園の伝統、な訳ですね……。
ふと、ということはわたしたちもするの? と思って姫奏に尋ねる。
「……もちろんわたしたちもするんですよね?」
「当たり前じゃないの」
「えと、ちなみにいつ頃出発ですか?」
「あら、言っていなかったかしら。オープニングパレードとして、誰よりも早く出発よ♪」
……今夜は相当な覚悟しておかないと、大変なことになりそうです。
その日の夜は先月から生徒会でこっそりと進めてきた企画、肝試し。今日の昼間に係の生徒が海や山に行っている生徒にバレないようにこっそりと設置した仕掛けが山ほどある、宿舎の裏手の雑木林の散歩道がコースだ。
一緒にいきたい人がいる人はペアで、特にそういう人がいない場合はくじで二人組をつくって回ることになる。希望者のみの参加なのだけれど姫奏曰く毎年ほぼ全員が参加しているらしい。普通に歩けば五分ほどの散歩道だけれど、ペアに与えられた懐中電灯一つだけで薄暗く薄気味悪い道を歩くのには時間がかかり、十五分ほどかかってしまう。そういう事情もあってコースが三つ設置され、各々から二分後とに次々と出発してゆく。コースごとに仕掛けは若干異なるものの怖さは変わらない。
無論わたしのペアは姫奏だ。ふと隣にいる姫奏をみると、前に立つ生徒会役員の説明を聞きながら軽くため息をついていた。
「……どうかしたんですか?」
「えっ? ああ、いえ、大丈夫よ。ちょっと思い出したことがあってね……」
「思い出したこと、ですか?」
「そう。清歌はこのイベントの別名を知ってるかしら?」
何故か頬を少し赤らめながら訪ねてくる。わたしは疑問におもいつつも、
「う~ん、知らないです」
と答える。すると姫奏は更に赤くなると、わたしにだけ聞こえるような小さな声で正解を教えてくれた。
「……悲鳴と嬌声の夜」
「ふえっ!?」
思いがけない名前に思わず声を大きくしてしまった。
「悲鳴と嬌声の夜、というのよ。……今智恵が口うるさく繰り返しているでしょう?」
姫奏の指差す方を見ると、確かに智恵先輩が何度も何度も、
『就寝時刻までには戻ってくるように!』
と繰り返していた。……どういうことだろう。今はまだ八時前。就寝時間の十一時には程遠いのに。全員が回りきったとしてもまだまだ時間はたっぷりと残る。
「あのね、この学校には私たちみたいなカップルが多いでしょう? だからね、こういうイベントの時にはね……その……みんな羽目を外してしまうのよ」
「あぁ……なんとなく分かったような気がします」
「ね? スタートの時には名前を確認するのにゴールではしないでホテルでする理由は分かる? ……八割を超える生徒がゴールせずに行方不明になるからなのよ」
八割……!?
「はじめは悲鳴はがり聞こえていた雑木林や近くの丘、海岸に至るまで、あちらこちらから聞こえてくる嬌声。だから悲鳴と嬌声の夜というのよ」
「…………」
わたしはあまりの驚きに声もでなかった。確かになんでゴールで名前の確認をしないんだろうとか、コースの割りには仕掛けが少ないとは思っていたけれど、みんなそういうのを気にせず甘い時間を過ごしにどこかへいってしまうからだったんだ……。
「大抵ながくそういうことをしたい人が多いだろうと、まだ明るいうちから上級生が出払って、明るいうちからまわるのはつまらないから譲ってくれたのかしら……。と勘違いした後でいく下級生が、その空気から何があるのかを察して……が毎年のサイクルよ」
「な、なるほど……。でも、先生方は何も言わないのですか?」
そう。自由にできる行事だからといっても引率の先生はもちろんいる。そういうことを知らないはずもないと思うけれど……。
「うちの先生方は大体うちの卒業生でしょう? ……だからほとんどの先生も同じことをやってたと思うの。だから何も言わず、というかむしろ先生方同士でもそういうことをしている姿を見つけたことがあるわ……」
「ひえぇ……」
まさに星花女子学園の伝統、な訳ですね……。
ふと、ということはわたしたちもするの? と思って姫奏に尋ねる。
「……もちろんわたしたちもするんですよね?」
「当たり前じゃないの」
「えと、ちなみにいつ頃出発ですか?」
「あら、言っていなかったかしら。オープニングパレードとして、誰よりも早く出発よ♪」
……今夜は相当な覚悟しておかないと、大変なことになりそうです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
白雪様とふたりぐらし
南條 綾
恋愛
高校1年生の紫微綾は、生きることに疲れ、雪の山で自らの命を終えようとしたその瞬間――
美しい御小女郎姿の少女・白雪が現れ、優しく彼女を救う。
白雪は実は古の仏神・ダキニ天の化身。暇つぶしに人間界に降りた彼女は、綾に「一緒に暮らそう」と提案し……?
銀髪の少女と神様の、甘く温かなふたりぐらしが始まる。
【注意事項】
本作はフィクションです。
実在の人物・団体・宗教・儀礼・場所・出来事とは一切関係ありません。 作中で登場する神仏や信仰に関する表現は、物語の雰囲気づくりを目的とした創作によるものであり、特定の宗教や思想を推進・否定する意図は一切ございません。
純粋なエンターテイメントとしてお楽しみいただければ幸いです。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる