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流行
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リカルドとサブリナが婚約してから、四年が過ぎた。
リカルド達は、社交シーズン開始の十二月のパーティーで婚約者となった。そして、今も同じ十二月。新年最初の日に一つ歳を取るので、今のアデライトは十二歳。年が明けたら、十三歳になるという訳だ。
領地から出ることはなかったが一回目の経験に加え、ミレーヌからも教育を受けていたので幼いながらも、アデライトは立派な淑女になっていた。更に領地経営もうまくいき、領主の後継者としても一目置かれていた。
ゆるやかに波打つ白銀の髪と、透き通った青い瞳。
髪や目の色は勿論、変わらない。だが一回目では王宮に引き取られ、未成年で公式の場に出ないからと最低限の衣服しか与えられなかったが、巻き戻って父親と暮らしている今はそんなことはない。いや、むしろ戸惑うくらい色んなドレスを着ている。
これには、二つの理由がある。
一つは一回目と違い、父と共にいるので使用人達が、ここぞとばかりにアデライトを着飾らせる為。
あと、もう一つは――昨年の冬、王都でドレスの新しい流行が起こり、アデライトの為に流行りのドレスが作られたからだ。
慎み深く、落ち着きのある色調のドレスから、レースやリボンを使った、柔らかく明るい色調のドレスへ。一回目の時は子供だったし、王妃から渡されるのは流行前のドレスだったので、よく解っていなかったが。
「意識してか、無意識かは解りませんが……王太子妃が成長することで、現王妃の抑圧から逃れようとしたってことだと思います」
「成程ね」
「ええ。ただ、一回目の時は王妃の好みではなかったので私の手には入りませんでしたが……今回はサブリナですから、親やリカルドにねだって嬉々として購入しているようですね」
「まあ、若い子はそうだろうね」
就寝前。寝台の上で長い丈の夜着姿で膝を抱え、呟くアデライトに傍らで宙に浮きながら、同じように膝を抱えたノヴァーリスが答える。
この四年でアデライトの背は伸びてきたが、神であるノヴァーリスは変わらないままだった。見た目二十代前半くらいの彼が、年寄りめいたことを言うのは少し面白い。
「でも流行するって解ってたなら、いっそドレスの流行自体を君が発信すれば、もっと有名になったんじゃない?」
「それも、考えたんですが……王妃に睨まれてしまうので、やめました。代わりに、お茶会やパーティーが増えるのが解っていたので、薔薇のジャムやお茶、あと香水を用意しておきました」
王妃は、相変わらず女性に貞淑な妻や母であることを求めている。
だから王妃に従う女性は、そのまま流行前のドレスを着て、その代わりに香水で華やかさを取り入れている。一方、令嬢達はやはり流行を取り入れたいので、内々で集まって新しいドレスを披露している。おかげでアデライトの領地の薔薇で作られた商品が売れて、領地が潤うという訳だ。
「だから、君のクローゼットには流行前と流行後、二種類のドレスがあるんだね」
「ええ。王妃派の方には、流行前のドレスの方が印象が良いですし。懐に入り込むまで、嫌われる訳にはいきませんから」
そう言って微笑むと、アデライトは寝台横の棚から、先程まで読んでいた手紙を手に取った。
……それはアデライトに、王都やサブリナの様子を知らせてくれる手紙だった。
リカルド達は、社交シーズン開始の十二月のパーティーで婚約者となった。そして、今も同じ十二月。新年最初の日に一つ歳を取るので、今のアデライトは十二歳。年が明けたら、十三歳になるという訳だ。
領地から出ることはなかったが一回目の経験に加え、ミレーヌからも教育を受けていたので幼いながらも、アデライトは立派な淑女になっていた。更に領地経営もうまくいき、領主の後継者としても一目置かれていた。
ゆるやかに波打つ白銀の髪と、透き通った青い瞳。
髪や目の色は勿論、変わらない。だが一回目では王宮に引き取られ、未成年で公式の場に出ないからと最低限の衣服しか与えられなかったが、巻き戻って父親と暮らしている今はそんなことはない。いや、むしろ戸惑うくらい色んなドレスを着ている。
これには、二つの理由がある。
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あと、もう一つは――昨年の冬、王都でドレスの新しい流行が起こり、アデライトの為に流行りのドレスが作られたからだ。
慎み深く、落ち着きのある色調のドレスから、レースやリボンを使った、柔らかく明るい色調のドレスへ。一回目の時は子供だったし、王妃から渡されるのは流行前のドレスだったので、よく解っていなかったが。
「意識してか、無意識かは解りませんが……王太子妃が成長することで、現王妃の抑圧から逃れようとしたってことだと思います」
「成程ね」
「ええ。ただ、一回目の時は王妃の好みではなかったので私の手には入りませんでしたが……今回はサブリナですから、親やリカルドにねだって嬉々として購入しているようですね」
「まあ、若い子はそうだろうね」
就寝前。寝台の上で長い丈の夜着姿で膝を抱え、呟くアデライトに傍らで宙に浮きながら、同じように膝を抱えたノヴァーリスが答える。
この四年でアデライトの背は伸びてきたが、神であるノヴァーリスは変わらないままだった。見た目二十代前半くらいの彼が、年寄りめいたことを言うのは少し面白い。
「でも流行するって解ってたなら、いっそドレスの流行自体を君が発信すれば、もっと有名になったんじゃない?」
「それも、考えたんですが……王妃に睨まれてしまうので、やめました。代わりに、お茶会やパーティーが増えるのが解っていたので、薔薇のジャムやお茶、あと香水を用意しておきました」
王妃は、相変わらず女性に貞淑な妻や母であることを求めている。
だから王妃に従う女性は、そのまま流行前のドレスを着て、その代わりに香水で華やかさを取り入れている。一方、令嬢達はやはり流行を取り入れたいので、内々で集まって新しいドレスを披露している。おかげでアデライトの領地の薔薇で作られた商品が売れて、領地が潤うという訳だ。
「だから、君のクローゼットには流行前と流行後、二種類のドレスがあるんだね」
「ええ。王妃派の方には、流行前のドレスの方が印象が良いですし。懐に入り込むまで、嫌われる訳にはいきませんから」
そう言って微笑むと、アデライトは寝台横の棚から、先程まで読んでいた手紙を手に取った。
……それはアデライトに、王都やサブリナの様子を知らせてくれる手紙だった。
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