4 / 43
逆鱗
しおりを挟む
魔力の属性は大抵一つ、二つ以上あるとそれだけで珍しいと言われる。
かつての勇者は、全属性の魔法が使えたと伝わっており――それ故、同様に全属性の魔法を使えるアルバを、勇者の再来と呼ぶ者もいる。
「もしや、と思ったけど……遊星も、全属性なのね」
召還された訳ではないが、遊星も伝説の勇者と同じ異世界人だ。
そんな訳で、カリィは属性を調べられる水晶を遊星に持たせた。すると、それぞれの属性を示す色が水晶の中で幾つも煌いた――カリィに拾われたばかりの、アルバのように。
(属性を調べるのは本来、六歳になってからだしな)
知っていれば村を、両親を助けられただろうか――そう思ってしまうこともあるが、過去は誰にも変えられない。それに属性があっても放出させ、魔法として使いこなすのは別の話だ。
アルバはこのギルドで、義母に魔法を教わったので『全帝』と呼ばれるまでになったのだが。
「はぁ……神様が、生まれ変わってもまたすぐ死なれたら困るって」
「……随分と、恵まれているんですね」
「アルバ」
遊星の言葉に引っかかり、つい嫌味のようなことを言ってしまったアルバをカリィがたしなめる。
けれど善行ゆえの加護なのかもしれないが、簡単に手に入れたと聞くとやはり不愉快だ。異世界から来たのに、言葉が通じるのも同様の理由なのだろう。しかもそれを口に出す辺り、馬鹿だと思う。
物語の勇者に対しては感じなかったが、実際、こうして目の当たりにすると苛立ちしか感じない。本人に悪気はないんだろうが、今までの自分の努力は何だったのかと思ってしまうからだ。
「ただ、いくら恵まれていても使いこなせないと意味がない。実際、僕が助けなければ地面に激突してあなた、死んでましたよね?」
「……はい」
「アルバ。『魔法学園』に行けば、魔法を勉強出来るでしょう?」
「マスターが決めたなら、そうすればいい。ただこれ以上、僕を巻き込むのはやめて下さい」
これ以上、と言ったのは今回の『魔法学園』入学もまた、カリィから命じられたことだからである。
今年十六歳になるアルバだが、すでに『全帝』になっている。けれど、義母から「大人ばかりではなく、同年代の者と接することも必要だ」と言われて渋々了承したのだ。その上、魔力だけはあるが世間知らずの異世界人の面倒を見るなんて冗談じゃない。
「依頼を完了したと、受付に伝えて来ます」
そう言うとアルバはフードを被り、カリィの返事を待たずにカリィの部屋を後にした。
『魔法学園』は、その名の通り魔法を学ぶ学校だ。とは言え、誰でも入れる訳ではない。試験を受け、一定以上の実力がなければそもそも受からないのだ。
(あの調子だと、入学自体も怪しいな)
入学までは十日ほどある。
元風帝・現ギルドマスターのカリィの伝手で入学試験は受けられるとしても、合格するかどうかまで便宜は図れない。
……そんなアルバの予想は、けれど覆されてしまった。
試験の為に、魔法の基本的なことは教えたらしいが――遊星はあっさりと全属性の魔法を、しかも無詠唱で使いこなせるようになり、首席で合格したのである。
かつての勇者は、全属性の魔法が使えたと伝わっており――それ故、同様に全属性の魔法を使えるアルバを、勇者の再来と呼ぶ者もいる。
「もしや、と思ったけど……遊星も、全属性なのね」
召還された訳ではないが、遊星も伝説の勇者と同じ異世界人だ。
そんな訳で、カリィは属性を調べられる水晶を遊星に持たせた。すると、それぞれの属性を示す色が水晶の中で幾つも煌いた――カリィに拾われたばかりの、アルバのように。
(属性を調べるのは本来、六歳になってからだしな)
知っていれば村を、両親を助けられただろうか――そう思ってしまうこともあるが、過去は誰にも変えられない。それに属性があっても放出させ、魔法として使いこなすのは別の話だ。
アルバはこのギルドで、義母に魔法を教わったので『全帝』と呼ばれるまでになったのだが。
「はぁ……神様が、生まれ変わってもまたすぐ死なれたら困るって」
「……随分と、恵まれているんですね」
「アルバ」
遊星の言葉に引っかかり、つい嫌味のようなことを言ってしまったアルバをカリィがたしなめる。
けれど善行ゆえの加護なのかもしれないが、簡単に手に入れたと聞くとやはり不愉快だ。異世界から来たのに、言葉が通じるのも同様の理由なのだろう。しかもそれを口に出す辺り、馬鹿だと思う。
物語の勇者に対しては感じなかったが、実際、こうして目の当たりにすると苛立ちしか感じない。本人に悪気はないんだろうが、今までの自分の努力は何だったのかと思ってしまうからだ。
「ただ、いくら恵まれていても使いこなせないと意味がない。実際、僕が助けなければ地面に激突してあなた、死んでましたよね?」
「……はい」
「アルバ。『魔法学園』に行けば、魔法を勉強出来るでしょう?」
「マスターが決めたなら、そうすればいい。ただこれ以上、僕を巻き込むのはやめて下さい」
これ以上、と言ったのは今回の『魔法学園』入学もまた、カリィから命じられたことだからである。
今年十六歳になるアルバだが、すでに『全帝』になっている。けれど、義母から「大人ばかりではなく、同年代の者と接することも必要だ」と言われて渋々了承したのだ。その上、魔力だけはあるが世間知らずの異世界人の面倒を見るなんて冗談じゃない。
「依頼を完了したと、受付に伝えて来ます」
そう言うとアルバはフードを被り、カリィの返事を待たずにカリィの部屋を後にした。
『魔法学園』は、その名の通り魔法を学ぶ学校だ。とは言え、誰でも入れる訳ではない。試験を受け、一定以上の実力がなければそもそも受からないのだ。
(あの調子だと、入学自体も怪しいな)
入学までは十日ほどある。
元風帝・現ギルドマスターのカリィの伝手で入学試験は受けられるとしても、合格するかどうかまで便宜は図れない。
……そんなアルバの予想は、けれど覆されてしまった。
試験の為に、魔法の基本的なことは教えたらしいが――遊星はあっさりと全属性の魔法を、しかも無詠唱で使いこなせるようになり、首席で合格したのである。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
第2王子は断罪役を放棄します!
木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。
前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。
それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。
記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる!
ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる!
スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します!
この話は小説家になろうにも投稿しています。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
おしまいのそのあとは
makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる