メテオライト

渡里あずま

文字の大きさ
26 / 43

連携

しおりを挟む
 朝は少し早めに起きて、朝食を済ませた。そして集めた丸太を適当にバラし(人がいたという痕跡を少しでも隠す為)焚き火の残りの薪は、フェルスの火魔法で全部燃やして灰にした。

「炭は土に戻りにくいですが、灰は肥料になりますからね」

 無人島とは言え、ゴミや炭を残すべきではない。
 そう説明しながら、移動を開始したのはアルバ――ではなく、フェルスの読みがあったからだ。

「昨日は結局、他の生徒とは一組としかぶつからなかったよね? あれは拠点を決めて、様子を見てたからだと思うんだけど……一晩、野宿して体バキバキになって。早く終わらせたかったら、積極的に戦闘することを選ぶんじゃないかなって」
「実感がこもってますね」
「まあ、バキバキまではいかないけど……パキパキくらい?」

 アルバの突っ込みに、フェルスが苦笑する。
 そして戦闘の相手として、わざわざ皇女達には喧嘩を売らないだろうと言った。だから、負けて強制転移で戻りたい場合はアルバ達を選ぶだろうと。

「いたぞ!」

 そんなフェルスの読みが当たり、声を上げて追いかけてきた生徒達にアルバは足を止めた。そして、やれやれと言うようにため息をつく。

「昨日もですけど、声を出す前に攻撃すればいいのに」
「……えーと、まあ、訓練だから?」

 アルバの言葉に、遊星が生徒達をフォローするように言いながら彼と一緒に後ろに下がる。
 昨日は遊星が突進したがフェルスの読み通り、負けて戻りたい生徒達との戦闘が複数になった場合を考えて、二人を温存させることにしたのだ。

聖光防壁シャインガーディアン聖防御光陣シャインバリア

 それでも防御魔法は『攻撃』ではないので、今日もアルバは前に立ったフェルス達に光魔法を纏わせ、自分と遊星は光の壁で守る。
 ちなみに、本当なら全属性を持つ遊星も使えるのだが、表向きの属性は火だけなのでこの場では使えない。いや、むしろ使わせるつもりはない。

「……あのさ。今度、ギルドでの依頼受けるの付き合ってくれるか? 魔法の練習するのに」
「いいですよ」

 遊星としては希少な光属性の魔法を練習する為、同じ光属性のあるアルバを頼ったんだろう。
 そうは解っていても『今度』の約束が出来たのに、アルバは笑顔で頷いた。

「怒りを放て、砂射サンドショット!」
「我が手に集いて力になれ、火球ファイアーボール!」

 そんな彼らの前では、地属性を持つイグレットと火属性を持つフェルスが、それぞれ魔武器である弓を、そして剣を奮いながら簡略化した詠唱で魔法を放っている。昨日のグレル同様、初級魔法であるがそれでも昨日の今日で出来るとは大したものだ。

「ぐっ……!」
「熱……っ!?」

 砂の塊で視界を遮ったところで、フェルスの火球が生徒達を襲う。
 流石に顔は狙わないが、逆に遊星のようにペンダントを狙って放った為、ダメージを受けて生徒達は強制転移でその姿を消した。

「すごい連携だな」
「確かに」
「そっか。属性一つだと、他の属性の魔法を使う時は使い魔に助けて貰うか、ああやって誰かと協力してになるのか」
「ええ。『全帝』は全属性がありますから、一人で混合魔法を使うそうですけど」
「……それも、今度教えて?」
「はい」

 表向きは、遊星は火属性のみなので後半は声を潜めてアルバに言う。
 それにつられて短く答えていると、フェルス達の戦闘を見ていたミーネが、横にいるグレルへと目をやった。

「次、私達、も」
「うん、頑張ろうね!」

 気合いを入れるように拳を握るミーネに、グレルが笑顔で頷く。
 そして移動を再開してしばらく後、別の生徒達に襲撃された時、宣言していた通りにミーネとグレルが前に出た。

「…………」
「我が手に集え、流水ウォーター……やったっ」

 ミーネが鉤爪を構えて突進するのを援護するように、簡略化した詠唱をグレルが唱えた。すると腕を振った刹那、無詠唱でミーネの風属性の魔法が放たれたらしく、グレルの水魔法の威力が増したのだ。
 ただの水の流れが、風を纏うことで渦になり威力を増す。そのことに気づいたグレルが声を上げたところで、水流が直撃した生徒達の姿が消えた。
 念願の無詠唱に成功したことを喜ぶグレルに対して、振り向いたミーネがガッツポーズで応える。
 無表情なのと、鉤爪のせいで迫力が増していたが、彼女の喜びは伝わってきて――アルバですら突っ込みを入れることなく、一同はミーネとグレルを温かく見守った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

第2王子は断罪役を放棄します!

木月月
BL
ある日前世の記憶が蘇った主人公。 前世で読んだ、悪役令嬢が主人公の、冤罪断罪からの巻き返し痛快ライフ漫画(アニメ化もされた)。 それの冒頭で主人公の悪役令嬢を断罪する第2王子、それが俺。内容はよくある設定で貴族の子供が通う学園の卒業式後のパーティーにて悪役令嬢を断罪して追放した第2王子と男爵令嬢は身勝手な行いで身分剥奪ののち追放、そのあとは物語に一切現れない、と言うキャラ。 記憶が蘇った今は、物語の主人公の令嬢をはじめ、自分の臣下や婚約者を選定するためのお茶会が始まる前日!5歳児万歳!まだ何も起こらない!フラグはバキバキに折りまくって折りまくって!なんなら5つ上の兄王子の臣下とかも!面倒いから!王弟として大公になるのはいい!だがしかし自由になる! ここは剣と魔法となんならダンジョンもあって冒険者にもなれる! スローライフもいい!なんでも選べる!だから俺は!物語の第2王子の役割を放棄します! この話は小説家になろうにも投稿しています。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

きっと、君は知らない

mahiro
BL
前世、というのだろうか。 俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。 大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。 皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。 あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。 次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。 次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。 それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

処理中です...