8 / 24
チュートリアル的生活が終わったところで
しおりを挟む
舞が勤めている酒場は、酒だけではなく食事も美味しいとのことで地元民もだが冒険者、更に外国から来た商人などもやってくる。
そして人間、酒が入ると口が軽い。更に気も声も大きくなるので、その話は聞き放題だ。正直、聖女や魔王についてこちらから聞いて藪蛇になったら困るので、客達の話を聞くことが出来たのは助かった。
そんな訳で、舞がこの店で働き出してからおよそ二か月。
無事、店長の妻も出産し床上げまであと一か月という頃には、舞もこの世界についてある程度、把握することが出来た。
この世界ではおよそ百年に一度魔王が現れ、それに合わせて瘴気が満ちて魔物や疫病が増えるのだという。
ちょうど今がその時期だが、瘴気を浄化する聖女を招く為にこの国では異世界召喚が行われているそうだ。そのことについて、客は酒を飲みながら天気の話でもするように話していた。
「今年は魔物が多いよなー。仕事にはなるけど、そろそろ聖女様が来てくれないかね?」
「あー、確かに……いや? 物売りが少し減ってきたって言ってたから、召喚されてはいるのかも」
「そうなのか? じゃあ、そろそろお披露目があるかもなー」
「美味い酒が飲めるな!」
……そんなやり取りを聞いて、舞は「聖女の扱い、軽!」と声に出さずにツッコミを入れていた。
彼らにとって、魔物や疫病に対して聖女が連れて来られるのは当然のことらしく、気づけば他の客達からも似たような話を聞いた。正直、当事者なのでモヤモヤしたが、下手に口を出して不審に思われては大変なので黙っていた。
もっとも、部屋に入って一人になれば別である。
それでも万が一を考えて、パジャマ代わりのワンピースに着替えてベッドに横たわり、枕を抱いて舞はおもむろに口を開いた。
「いや、拉致やん? 聖女召喚って、つまりは拉致やん?」
枕を抱き締める力を込めながらつい、似非関西弁でツッコミを入れてしまった。
少し考えれば解ることなのに、この異世界に住む者にとっては当たり前で――攫われてきた聖女、つまり異世界人の気持ちについてはまるで考えていない。そして、当然のことでしかないので、異世界人が召喚されることに対してまるで罪悪感がない。
「気持ち悪いなぁ……」
一方、舞にはこの国の住人に対してそう感じるようになった。申し訳ないが、お世話になっている店長や妻も内心、どう考えているか解らないので警戒――まではいかないにしても、心の中で距離を置くようになっていた。
そんな訳でお金もある程度貯まったし、舞は次の行動に出ようと思った。
そして人間、酒が入ると口が軽い。更に気も声も大きくなるので、その話は聞き放題だ。正直、聖女や魔王についてこちらから聞いて藪蛇になったら困るので、客達の話を聞くことが出来たのは助かった。
そんな訳で、舞がこの店で働き出してからおよそ二か月。
無事、店長の妻も出産し床上げまであと一か月という頃には、舞もこの世界についてある程度、把握することが出来た。
この世界ではおよそ百年に一度魔王が現れ、それに合わせて瘴気が満ちて魔物や疫病が増えるのだという。
ちょうど今がその時期だが、瘴気を浄化する聖女を招く為にこの国では異世界召喚が行われているそうだ。そのことについて、客は酒を飲みながら天気の話でもするように話していた。
「今年は魔物が多いよなー。仕事にはなるけど、そろそろ聖女様が来てくれないかね?」
「あー、確かに……いや? 物売りが少し減ってきたって言ってたから、召喚されてはいるのかも」
「そうなのか? じゃあ、そろそろお披露目があるかもなー」
「美味い酒が飲めるな!」
……そんなやり取りを聞いて、舞は「聖女の扱い、軽!」と声に出さずにツッコミを入れていた。
彼らにとって、魔物や疫病に対して聖女が連れて来られるのは当然のことらしく、気づけば他の客達からも似たような話を聞いた。正直、当事者なのでモヤモヤしたが、下手に口を出して不審に思われては大変なので黙っていた。
もっとも、部屋に入って一人になれば別である。
それでも万が一を考えて、パジャマ代わりのワンピースに着替えてベッドに横たわり、枕を抱いて舞はおもむろに口を開いた。
「いや、拉致やん? 聖女召喚って、つまりは拉致やん?」
枕を抱き締める力を込めながらつい、似非関西弁でツッコミを入れてしまった。
少し考えれば解ることなのに、この異世界に住む者にとっては当たり前で――攫われてきた聖女、つまり異世界人の気持ちについてはまるで考えていない。そして、当然のことでしかないので、異世界人が召喚されることに対してまるで罪悪感がない。
「気持ち悪いなぁ……」
一方、舞にはこの国の住人に対してそう感じるようになった。申し訳ないが、お世話になっている店長や妻も内心、どう考えているか解らないので警戒――まではいかないにしても、心の中で距離を置くようになっていた。
そんな訳でお金もある程度貯まったし、舞は次の行動に出ようと思った。
128
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」
ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。
■あらすじ
聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。
実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。
そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。
だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。
儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。
そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。
「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」
追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。
しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。
「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」
「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」
刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。
果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。
※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
【 完 結 】言祝ぎの聖女
しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。
『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。
だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。
誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。
恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる