主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま

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やっぱり、揚げ物は強い

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 この異世界の貨幣は銅貨は一枚百円くらいで、銀貨は一枚千円。そして金貨は、一万円くらいだ。
いきなり何を、と思われるかもしれないが、舞は天ぷらを銅貨四枚、つまり四百円で売った。一応、手に取りやすい値段なのと、材料費や宿泊代を考えて赤字にならない値段である。
 ……そして今日の売り上げは銅貨三百枚、日本円にしておよそ三万円だった。おかげで今までのように持ち出しではなく、本日の宿代と材料費は無事捻出することが出来た。

(七十人以上に売れたってことなのよね)

 初日にしては、なかなかの人数である。しかも最後、材料が無くなったから強制終了となったのだ。幸か不幸か、買えなかったのはセバエのように仕事などでやって来た他国民ではなく、地元民のみ。明日も来られるとのことだったので、即席の予約券を渡して事なきを得た。

(一応、食材は多めに買ったけど……二日目だから、どう出るかしら?)

 初日は物珍しさで売れただろうが、二日目はやってみないと解らない。とりあえず、予約券分は売れるし、野菜は二日くらいは持つ。鶏肉については、売れ残ったら揚げまくってセバエ達への差し入れにしよう。
 そう思っていた舞だったが、翌日の売り上げは昨日よりも多い四万円だった。予約券を持った者達以外にも、初日に見た顔ぶれがいたのでリピートしてくれたらしい。ありがたい限りである。

(やっぱり、揚げ物は強い)

 とは言え、レシピ提供はやぶさかではないが異世界で天ぷら屋を生業にする気はないので、魔王側の動きを切に望んでいたところ――。
 三日目の昼下がりに並んでいた者達が一斉に譲ったことで、二人の人物が舞の前へと現れた。

「いらっしゃい、ま……せ?」
「テンプラふたつ、ください!」
「ちゃんと注文出来ましたね、坊ちゃま……そんな訳で、二つお願いします。あとお店が終わったら、お話したいことがございますので、お時間頂けますでしょうか? 後ほど、馬車を手配致します」
「は、はい。かしこまりました……それでは、後ほど」

 一人は、息子の工と同じくらいの男の子だった。大きな緑の瞳。幼いながらも人形のように整った顔立ちだったが、屈託のない笑顔と黒髪は息子を連想させて、ちょっと鼻がつんとした。
 そんな男の子を抱っこし、舞に話しかけてきたのは執事姿の老人だった。もしや、と言うよりまさか、と思ったが二人が立ち去るのを見送った客達の呟きで、疑問は確信へと変わった。

「魔王様だ」
「まだお小さいのに、何て凄まじい魔力だ」

 ……魔力云々は、舞には解らないのだが。
 どうやら今来た男の子が、舞が会いたかった『魔王様』らしい。
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