15 / 24
やっぱり、揚げ物は強い
しおりを挟む
この異世界の貨幣は銅貨は一枚百円くらいで、銀貨は一枚千円。そして金貨は、一万円くらいだ。
いきなり何を、と思われるかもしれないが、舞は天ぷらを銅貨四枚、つまり四百円で売った。一応、手に取りやすい値段なのと、材料費や宿泊代を考えて赤字にならない値段である。
……そして今日の売り上げは銅貨三百枚、日本円にしておよそ三万円だった。おかげで今までのように持ち出しではなく、本日の宿代と材料費は無事捻出することが出来た。
(七十人以上に売れたってことなのよね)
初日にしては、なかなかの人数である。しかも最後、材料が無くなったから強制終了となったのだ。幸か不幸か、買えなかったのはセバエのように仕事などでやって来た他国民ではなく、地元民のみ。明日も来られるとのことだったので、即席の予約券を渡して事なきを得た。
(一応、食材は多めに買ったけど……二日目だから、どう出るかしら?)
初日は物珍しさで売れただろうが、二日目はやってみないと解らない。とりあえず、予約券分は売れるし、野菜は二日くらいは持つ。鶏肉については、売れ残ったら揚げまくってセバエ達への差し入れにしよう。
そう思っていた舞だったが、翌日の売り上げは昨日よりも多い四万円だった。予約券を持った者達以外にも、初日に見た顔ぶれがいたのでリピートしてくれたらしい。ありがたい限りである。
(やっぱり、揚げ物は強い)
とは言え、レシピ提供はやぶさかではないが異世界で天ぷら屋を生業にする気はないので、魔王側の動きを切に望んでいたところ――。
三日目の昼下がりに並んでいた者達が一斉に譲ったことで、二人の人物が舞の前へと現れた。
「いらっしゃい、ま……せ?」
「テンプラふたつ、ください!」
「ちゃんと注文出来ましたね、坊ちゃま……そんな訳で、二つお願いします。あとお店が終わったら、お話したいことがございますので、お時間頂けますでしょうか? 後ほど、馬車を手配致します」
「は、はい。かしこまりました……それでは、後ほど」
一人は、息子の工と同じくらいの男の子だった。大きな緑の瞳。幼いながらも人形のように整った顔立ちだったが、屈託のない笑顔と黒髪は息子を連想させて、ちょっと鼻がつんとした。
そんな男の子を抱っこし、舞に話しかけてきたのは執事姿の老人だった。もしや、と言うよりまさか、と思ったが二人が立ち去るのを見送った客達の呟きで、疑問は確信へと変わった。
「魔王様だ」
「まだお小さいのに、何て凄まじい魔力だ」
……魔力云々は、舞には解らないのだが。
どうやら今来た男の子が、舞が会いたかった『魔王様』らしい。
いきなり何を、と思われるかもしれないが、舞は天ぷらを銅貨四枚、つまり四百円で売った。一応、手に取りやすい値段なのと、材料費や宿泊代を考えて赤字にならない値段である。
……そして今日の売り上げは銅貨三百枚、日本円にしておよそ三万円だった。おかげで今までのように持ち出しではなく、本日の宿代と材料費は無事捻出することが出来た。
(七十人以上に売れたってことなのよね)
初日にしては、なかなかの人数である。しかも最後、材料が無くなったから強制終了となったのだ。幸か不幸か、買えなかったのはセバエのように仕事などでやって来た他国民ではなく、地元民のみ。明日も来られるとのことだったので、即席の予約券を渡して事なきを得た。
(一応、食材は多めに買ったけど……二日目だから、どう出るかしら?)
初日は物珍しさで売れただろうが、二日目はやってみないと解らない。とりあえず、予約券分は売れるし、野菜は二日くらいは持つ。鶏肉については、売れ残ったら揚げまくってセバエ達への差し入れにしよう。
そう思っていた舞だったが、翌日の売り上げは昨日よりも多い四万円だった。予約券を持った者達以外にも、初日に見た顔ぶれがいたのでリピートしてくれたらしい。ありがたい限りである。
(やっぱり、揚げ物は強い)
とは言え、レシピ提供はやぶさかではないが異世界で天ぷら屋を生業にする気はないので、魔王側の動きを切に望んでいたところ――。
三日目の昼下がりに並んでいた者達が一斉に譲ったことで、二人の人物が舞の前へと現れた。
「いらっしゃい、ま……せ?」
「テンプラふたつ、ください!」
「ちゃんと注文出来ましたね、坊ちゃま……そんな訳で、二つお願いします。あとお店が終わったら、お話したいことがございますので、お時間頂けますでしょうか? 後ほど、馬車を手配致します」
「は、はい。かしこまりました……それでは、後ほど」
一人は、息子の工と同じくらいの男の子だった。大きな緑の瞳。幼いながらも人形のように整った顔立ちだったが、屈託のない笑顔と黒髪は息子を連想させて、ちょっと鼻がつんとした。
そんな男の子を抱っこし、舞に話しかけてきたのは執事姿の老人だった。もしや、と言うよりまさか、と思ったが二人が立ち去るのを見送った客達の呟きで、疑問は確信へと変わった。
「魔王様だ」
「まだお小さいのに、何て凄まじい魔力だ」
……魔力云々は、舞には解らないのだが。
どうやら今来た男の子が、舞が会いたかった『魔王様』らしい。
139
あなたにおすすめの小説
召喚された聖女はこの世界の平民ですが?家に帰らせていただきます!
碧井 汐桜香
ファンタジー
召喚された聖女は、この世界の平民でした。
バレないように異世界から召喚された聖女のふりをしながら、家に帰る機会を見計らって……。
【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する
ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」
ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。
■あらすじ
聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。
実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。
そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。
だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。
儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。
そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。
「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」
追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。
しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。
「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」
「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」
刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。
果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。
※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。
※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる