主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま

文字の大きさ
21 / 24

色々とバラす

しおりを挟む
「聖女様は、皇太子に「主婦が聖女になれる訳がない」と言われ、右も左も解らない異世界に放り出されたそうですが……元の職業は関係なく、異世界から召喚された方は皆、浄化能力を持つのです。魔族でも知っていることを何故、召喚技術を持つ皇国の方が知らないのでしょう?」

 老執事がそう言っている間も、池や周囲の浄化は進んでいく。けれど、半分くらいまで完了したところで老執事は小さな魔王を抱いた聖女を池から離れさせ、代わりに懐から水晶が連なるネックレスを取り出した。

「ですが……一方で、今回の聖女様は母親でもあるのです。魔王様と意気投合したのも、同じくらいのお子様がいるからで……そこで、我々魔族は考えました。瘴気をこうして『封印』し、取り除いていけば聖女様をお子様の元に『戻す』ことも出来ますし、今後も聖女を召喚する必要はないと」

 そんな老執事の言葉と共に、黒い影がいくつも泥池からダリスへと向かって渦巻き、そのネックレスに吸い込まれていった。そして、透明だった水晶の一部が黒く染まった代わりに、残り半分の泥池は綺麗に澄んだ池へと変わった。それだけではない。あれだけ暗かった森なのに、今は目に見えて明るくなっている。瘴気の影響恐るべしだ。

「魔王様が、瘴気の原因だという『謝った認識』を持つ方もいるでしょう。しかし皆様、こんなに小さく愛らしい魔王様に、そんなことが出来るとお思いですか? ……瘴気は『生きとし生ける者全て』の負の感情が淀んで凝って、瘴気になるのです。勿論、魔王様が現れることで不安が増すのかもしれませんが……その瘴気のせいで暴走した獣が魔物になったり、病人が増えたりするのはご存じですよね?」

 老執事が、映像を見ている者達の疑問に答えるように言った。『人間』を『生きとし生ける者全て』と変えたのは、人族からの反発を和らげる為である。
 そして一旦、言葉を切って水晶のペンダントを懐へとしまった。

「魔族は、人族の何倍もの魔力を持っています。それ故、幼子の暴走を防ぐ為にこうやって道具を使って吸い取り、封じるのです。聖女様と違って無料での奉仕という訳には参りませんが、逆にお金さえ払って頂ければ皇国以外からの依頼も引き受けます……聖女様? これで安心して、元の世界に戻れますでしょうか?」

 そう話を締め括り、老執事はそのまま敬意を示すように手を胸に当てて聖女達へと頭を下げた。そんな老執事に聖女が目を潤ませ、小さな魔王が気遣うようにぷくぷくの手をその頬に伸ばす。

「ありがとうございます……いきなり追い出され、途方にくれていた私を受け入れてくれただけでもありがたいのに我が子や、これからの聖女のことまで考えくれるなんて……魔王様や魔族の方々の、何と慈悲深いこと……」
「せいじょさま、なかないで! あとはジブンたちにまかせてね!」
「魔王様……」

 健気な魔王の言葉に、見ている者達の大部分はほっこりと癒され――召喚しておいて、聖女を追放したとバラされた皇国の面々は青ざめることになる。



元々、先にプロットを考えたのがこちらで。ただ、我ながら(ヒロインが主婦とか)趣味に走ったので、もうちょっと解りやすくしたのが別作品『ドアマットヒロインは魔王のお気に入りになる』でした。その為、ヒロインや展開など違うところもありますが、世界観などは同じです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【 完 結 】言祝ぎの聖女

しずもり
ファンタジー
聖女ミーシェは断罪された。 『言祝ぎの聖女』の座を聖女ラヴィーナから不当に奪ったとして、聖女の資格を剥奪され国外追放の罰を受けたのだ。 だが、隣国との国境へ向かう馬車は、同乗していた聖騎士ウィルと共に崖から落ちた。 誤字脱字があると思います。見つけ次第、修正を入れています。 恋愛要素は完結までほぼありませんが、ハッピーエンド予定です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...