彼の想いはちょっと重い

なかあたま

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 これが初恋だと、そのとき直感で思った。
 僕の手を引き、ベンチへ座らせてくれた男の子は、泣きじゃくる僕を迷惑がることなく面倒を見てくれた。
 涙で歪んだ視界の中、傷口をハンカチで抑えてくれた彼は、絆創膏をポケットから取り出した。
 少し歪んだそれを膝へ貼り付けて「泣くなよ、ほら。痛いの痛いの、飛んでいけー」と呪文を唱えた。
 そのあと、恥ずかしくなったのか人差し指で頬を掻いた。
 そんな彼がとても愛らしく思えた。きっと彼は僕より年上だ。
 けれど、どうしようもなく可愛く思えたのだ。
 そして、彼を離したくないと思った。
 咄嗟に僕の口から「大きくなったら結婚して」という言葉が溢れた。
 男の子はびっくりしているのか、目をまん丸とさせている。
 やがて僕の頭をくしゃりと撫でて「お前が高校生になっても好きな人がいなかったら、考えてやらなくもない」と微笑んだ。
 その言葉が、僕の胸に深く刻まれた。

「約束」

 指を差し出した僕に、呆れ気味に彼が小指を絡める。
 ゆびきりげんまんを歌う僕を見て、彼は穏やかな目をしていた。

「お兄ちゃん、名前は?」
「優希だよ」

 ゆうき。口の中で呟き、咀嚼する。
 なんだかとても甘いお菓子を食べているような、そんな感覚に陥った。

「ゆうくん」

 発した言葉に、僕の胸はドキドキと高鳴った。
 名を呼ばれたゆうくんは、照れくさそうに笑う。

「お前の名前は?」
「心矢」
「へぇ。よろしくな、心矢」

 名前を呼ばれると、さらに心臓が脈を打つ。
 膝の痛みなんて、とうの昔に忘れ去っていた。
 やがて、ゆうくんが手を握る。「もう痛くなくなったか? 遊びに行くか?」と言い、手を引いた。
 手を握りながら、ゆうくんの背中を見上げる。
 彼は時々振り返り、僕へ微笑みかけた。
 その時に思ったのだ。彼は運命の人だ、と。
 そして同時に思った。僕は彼を幸せにするために生まれてきたのだ、と。
 ゆうくんの手を、もう一度強く握った。
 暖かい体温が伝わる中、僕はその背中だけをいつまでも見つめ続けていた。
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