封鎖茶会

時谷 創

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第2話 プレゼント

「とりあえずこれで皆さんの自己紹介は終わりましたね。
 次は…そうね。箱に入ったアクセサリーを配っておきましょうか」

名草がカーテン傍の机に置かれた半透明の箱を手に取る。

「あ、名草さん。その役割は私がやりますよ」

白ウサギの目的はまだ分からないけど、これには何か意味があるはず。

「あら、瑠香さん。やってくれるの?」

「はい。パーティでは何の役も立てないし、これくらいさせてください」

「分かったわ。それじゃよろしく頼むわよ」

名草から箱を受け取り、中から1つアクセサリーを取り出す。

「てっきり玩具のアクセサリーでもくれるのかと思ったけど、それ本物じゃない?」

警戒感を消してはいないが、アクセサリーを目にして早雪が興味をもったようだ。

「デザインは古いですが、本物みたいですね。
 添えられた手紙にお名前と渡すアクセサリーが書いてあるので、
 それを見ながらお渡ししますね」

そう言って取り出したアクセサリーを箱の中に戻し、
とりあえず手紙の指示に従う事にした。

「それじゃ、早雪さんから。早雪さんはヘアピンみたいですね」

「ありがとう。結構可愛いし、さっそく身につけておくわ」

「小鳥さんは、ブレスレット」

ブレスレットを箱から取り出して小鳥に手渡す。

「凄い、こんな高価なブレスレットって初めてかも」

そう言って小鳥は笑顔で左腕に身につける。

「ヘアピンとブレスレットって差がありすぎない?
 小鳥、交換しなさいよ!」

「嫌よ。これは私の物だもん!」

さきほどの警戒感が少し薄れたのか小鳥が早雪に必死にアピールする。

「えっと綾瀬さんはアンクレットね」

「アンクレットってあたしした事ないんだけど…」

あまり装飾品はつける方ではなさそうな綾瀬が
アンクレットを手にそう口にする。

「それなら私のヘアピンと交換しましょうよ?」

「それは無理な相談。それより付け方教えて」
「綾瀬も口にはあまり出さないけど、結構しっかりしてるわよね…」

早雪はそう言ってため息をつく。

「私はイヤリングみたいですね。
 これは自分の席に置いておくとして、次は胡桃ちゃんね。
 胡桃ちゃんは指輪ね」

「わー、ありがとうございます! 凄く綺麗ですー」

胡桃は指輪を眼前に掲げて、左手中指にはめた。

「最後に、名草さんはネックレスを」

「瑠香さん、ありがとう。
 瑠香さんからのプレゼント、大事にするわ」

「あはは……」

ちょっとやそっとでは動揺しない方だが、名草の言葉にはふいを打たれた。

本心なのかそうでないのか。

プレゼントが行き渡り、私以外の参加者が身につけたのを確認すると、
自分はイヤリングをポケットにしまう。

アクセサリーに毒を仕込むとかはさすがにないだろうけど、
私まで動けなくなるのはまずい。念のためだ。

アクセサリーを配り終わった所で透明の箱を持ち、
元置いてあった机の上に置こうとすると、まだ箱の中に何か入っているのが見えた。

これは何かの鍵だろうか?

なぜこんなところに鍵が入ってるんだろうか?

思考を巡らせていると、

「それじゃ前段階はこれくらいにして、
 お茶会の方を始めましょう」

早雪がお茶会の開始を提案したため、鍵の事は後にして自分の席に戻った。

「部屋に入った時から気になってましたけど、紅茶の良い匂いがしますね」

満面の笑顔を浮かべてティーポットをまじまじと見る胡桃。

「これはディンブラね。
 花のような甘い香りで味も渋みが少ないから日本人には飲みやすい紅茶よ」

「名草さん、詳しいですね。
 でも、この匂いどこかで嗅いだ事があるような…」

小鳥は思い出そうとするがすぐに出てこないようで自分の席に戻る。

「そうですか? あ、これはなんですかね?」

私はハムスターのイラストが入れられた白い陶器を指差した。

「これはたぶんシュガーポットじゃないですか?」

胡桃がにこやかにそう言うと、名草がシュガーポットを開けて中身を確認。

「あら、ほんと。よく分かったわね」

「えへへー、うちに同じのが置いたあったので覚えています」

自信満々に答える胡桃に名草が微笑みかける。

「言われてみればあたしもどこかで見た事ある気がする」

今度は早雪が見覚えがあるような事を言うが、やはり思い出せないようだ。

「おしゃれな喫茶店とかにありそうな感じですね」

「それにしてもこのラウンジ、あまり温かくないわね…。
 エアコン壊れてるのかしら」

「この暖炉、暖かいですよ。早雪さんと小鳥さんも寒かったら
 こっち側の席に来てあたるといいですよ」

「私はいい遠慮しとく」

「私も寒くないし、ここで良いわ」

早雪も小鳥はそう言って遠慮するが少し震えているようだ。

「それなら紅茶はどうですかね?
 体が温かくなりますし、スコーンにタルト、お菓子もいっぱいありますよ!」

「胡桃ちゃんに気を使ってもらうようじゃだめね。
 代りに紅茶は私が淹れますね」

小鳥がみんなの分の紅茶を入れる。

「それじゃ、みんな揃ったわね。
 作法は気にせず好きに口にしていきましょう」

そう言って早雪が紅茶を口にする。

「んー、バラの花のような香りと共に、
 爽やかな渋みが口に広がって凄く美味しい」

「ほんと紅茶って結構渋みがあったりして、
 好き嫌いが分かれるけど、これなら飲みやすいね」

小鳥は機嫌を取り戻したようで笑顔で紅茶の評価を口にする。

「私はいつも通りだと…あ、あったわ。これを入れてっと」

早雪は大机の中央に置いてあったハチミツのチューブを手に取り、
ティーカップに注ぎ込む。

「これでよしっと。それじゃ私も頂くとしますかね」

早雪は満面の笑顔を浮かべながら紅茶を口に入れる。

「紅茶にはやっぱハチミツを入れなくては…うぐっ…」

早雪が苦しそうな表情をしたと思うと何かを吐き出し、床に倒れこんだ。
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