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 突然すぎることの連続で少々戸惑っている俺だが。

 死を告知する女神が現れて、俺は自分が死んでいたことを知った。
 じわじわと実感が湧いて来たのか。

 いや違う。

 最初は生活の中での出来事と感じていた。
 それが死の宣告へと変わり、無理やりな自覚に至ったのだ。
 怖いくらいの自覚にな。

 これから異世界に向けて、転生を受けるのだが、その前に修行があるようだ。

 死んでしまったけど、俺は14歳の中学二年だ。
 どっかの地球の日本人。
 昭和の時代に生まれ、死んだ。

 名は、抜汐バツシオ グン。クラス内でのあだ名はショーグンだった。
 それだけはとても気に入っていた。


 まだ、はっきりと覚えているが、それも次第に消えていくのかな。


 ショーグンで生きてきた俺は、江戸時代に興味を持っていた。
 いま女神が、俺に行きたい時代はないのかと訊ねている。

 女神が付いて来て、強くなるための簡単なゲームをしに行く舞台なら、即答で江戸時代がいいと答えた所だった。




 ◇



『江戸時代とな。──して、どれぐらい過去になるのだ?』


 江戸時代を知らないようだ、この女神。
 う~ん。どれぐらい過去の話だったかな。
 行きたいのは、中期かな。時代劇を見てただけの知識しかねぇよ。

 それで、思わず口が開いてしまって。


「俺が知るかよそんなもん!」

『なんだ、知らぬのか。それは前途多難だな』


 え、以外と怒らないんだな、そこ。
 というか、2人とも知らないんじゃ行けなさそうだな。


「女神さんも知らないんじゃ、行くことは叶いませんよね」

『お前は、そうとう頭がわるいのだな。気の毒になる』


 はあ? 

 俺は、頭にカチンと来るものがあった。
 いま、ちょっぴり薄笑みを浮かべてみせたぞ、こいつ。


「だって、いつなのか分からないと行けないんでしょ? 


 とても作り笑顔で答える気分ではなく、女神とも呼ばなかった。
『空耳でも聞いたのか? それとも木の精霊が囁いたか?』


 さっき自分が聞いたんじゃないか、俺に。
 なのになんで、そこまで言われにゃならんのだ。
 頭が悪いのはお互い様だろ。江戸時代を知らないくせに。

 だけど、こうして女神もキレて来ないのだから、その理由を聞いて見るか。


「江戸時代しらないんでしょ。んで、時代もわかんないんでしょ。俺も良く知らんからお手上げじゃないのって思っただけですが」

『まあ知らぬから聞いたが、頭の悪さのことだな。私はお前の知識の話はしていない。行きたい場所なら知っておるかもと思っただけだ。知らぬならそれで構わぬ。まずお前は死んだから確実に未来を知れぬな? となれば、過去の話をしておるのだということになる。そこに行きたいのはお前で、私ではない。江戸時代の詳細は知らぬが、それならば調べれば良いだけのことだ。ここまでは大丈夫か?』


 
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