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しおりを挟む女神の祠。
俺がそう呼んでいる。
跡形もなく粉みじんに吹き飛んでしまった。
なんてことをしてくれたんだは、俺の心の呟きだ。
その祠の中には小さな子供なら何とか隠れられたかもしれない。
祠としての内部を覗いて見てないから、何とも言えないけど。
駒次郎が戦った相手は比較的小柄な人物なのだろうな。
多分もう、この辺りには居ないだろう。
それはそうと、歩行時間が三分ほどになる。
俺が一度歩いた方向にまっすぐ進んで来た。
駒次郎はまるで俺の足跡を辿るかのように同じ場所へ行くのだ。
やはり、
一向に境内らしきものが見えて来ない。
それは知っている。
まあ駒次郎が迷子になるわけもないだろうが。
お前のいう神社の境内はかなり奥にあることにならないか。
たしか俺に奥に入り過ぎるなと忠告したよな。
なんの忠告だったんだ。
ああ、そうだった。
神社って、子供を隠す場所だという話だったな。
あの時はお前があまりに俺を笑うものだから、気にも止めなかったけど。
そんな場所だったっけ。
そういや現代でも、迷子が出ると「神隠し」という言葉は聞くけど。
長く消息が分からず、そのまま帰らない場合、その話題になるのは知っている。
だけど非現実的だろ。
神様なんてどこにもいないし。
だれも見たことがない。
居たとして子供を連れ去る神様なんか、だれが崇めたいんだ。
神隠しっていったい何なの?
神隠し──【女神エンジン】!!
ピピ…。
神隠しは喪中に神棚を白い紙や布で覆う慣わし、…か。
「神棚っちゅうのは何処にあるんだ?」。
人間がある日忽然と消え失せる現象。
ふむふむ。
神域である山などで人が行方不明になったり、町から前触れも無く失踪することを神の仕業としてとらえた…ふむふむ。
あ、そうだ!
境内も検索するか。
境内はどの辺ですか──【女神エンジン】。
うん?
外の土地と聖域を分ける境界の……え!?
「神社の敷地」を境内という。
じゃあ、ここも含んでいるじゃん。
あいつは何処へいくんだよ。
そして俺の苦労は何だったんだよ。
てっきり何らかの建物も含んだ場所だと思い違いをしていたよ。
それは忘れてやるとして。
子供をさらう神様が居るとして、どこへ連れて行くんだ?
帰って来ることもあるのだとしたら、その子供は神様に会った記憶の持ち主だ。
普通に「すげぇ」。
と、こんなことを今までまじまじと考えたことはない。
警察や消防の大人がそのうち見つけ出すからな。俺は気にした記憶もない。
まあ、考えさせられたお陰で良い勉強になった。
そろそろだな。
俺が面を喰らった場所に入るはずだけど。
入るわけないか。
ウダウダと考え事をしていたからな俺は。
あ、
駒次郎がおもむろに立ち止まった。
なぜ……。
歩行速度を落とした。
キョロキョロと周囲の様子をうかがっている。
いたって山の裏手という感じで、とくに何もないんだけど。
その辺に地下の入り口でも隠されているのか?
俺は彼の真後ろにとても立てない。
そんな至近距離に居たら流石にバレるからな。
姿が見えないわけじゃないしな。
すこし離れた木々の陰に気配を消し、潜んでいる。
あいつが忽然と姿を消したら、どうしよう。
あああ、それならいっそのこと。
いま飛び出していって、「こんなとこに居たのかよ」と合流すればいいかな。
よし、そうと決まれば……。
「……おい、これはどういうことだ!?」
うわ、びっくりさせんなや。
思わず、身を隠してしまった。
条件反射で、元の木の陰に飛びこんだ。
もう少しで、駒次郎に話しかける所だったぞ。
彼が完全に立ち止まって、突然、声を発するものだから。
地下の入り口が開かなかったとか……。
いや、そうではないようだ。
木々が割とあって彼の見つめる先がよく見えないのだが。
何かに驚いたようだ。
いったい何を見ているのだ。
俺は思い切って木の上に登って観察をしてみた。
「マジかよ!?」
「まさかよ!?」
俺の声がちょい先なんだが、ほぼ同時に口をついて出てしまった。
これは、そこに見えるのは祠じゃないか。
周囲を木材で補強されたやつだ。
俺が屋根の上に乗っかってたやつだ。まったく同じだ。
彼も一度近づいて見るが、やはり背後を向いた。
祠に手を当てて、あちこち見回した後、自分の背後を気にしたのだ。
あ、
やっぱり、確認に行くみたいだ。
その先にツナセ街道があるのかを。
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