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しおりを挟む昨晩、布団の中で女神エンジンを閲覧していた。
それは寺子屋に関してだった。
学問はどのようなものだろうかと。
夜通し徹夜ってわけにもいかない。
夜更かしは早死にの元だ。
だからほんのすこし、おさらい程度に見て置いたのだ。
くりかえし読み上げて、いくつか暗唱できるぐらいに。
それが当日来てみて流れで口にすることになってしまった。
俺は盤次郎の顔を見に来ただけだった。
お里との約束の手前、早々に帰るつもりでいた。
あいにく盤次郎がそこに居合わせなかった。
居合わせたのは通学の他の生徒だった。
出会った小夜子の厚意で教室に顔を出すことになって。
本来文字を読めることが困難な町民の子である。
しかも7歳なんて現代でも、平仮名程度なら親が居れば不思議ではないが。
小夜子に指摘され、ハッとする。
ただ、いい気になろうと思っていたわけではないのだ。
貧乏人がこんな場所に通うことは、どういう状況を生むかを案じて。
そう、盤次郎がうまく溶け込めているのかが心配で。
来てみたのだが。
案の定、庶民であっても格差はあったか。
為吉の差し向けた卑下の言葉につい、カッとなって。
覚えたばかりの孟子の言葉を得意げにそらんじてしまった。
結果的に。
為吉と居合わせた十人の生徒が「えっ」と声を上げた。
意表をつかれたように口を吐いたのだ。
小夜子も驚いて、俺を見ながら賞賛?した。
為吉の表情を見るに、どうせ「馬鹿の一つ覚え」なのだろうと否定の色がうかがえた。生徒たちも同様にまぐれ呼ばわりをした。
だがこのままでは恥をかかせたであろうこの者たちからテストされてしまう。
瞬間そう思い、手に取った教科書を返して回れ右を決めたのだ。
そうそうに退室をしようと走り出したその時、入ってきた誰かとぶつかった。
「みんな、大変だ!」
「どうしたの、血相かえて」
どうやらここの生徒のようだ。
慌てた様子で飛びこんできたのだ。
「藤吉郎先生が大名行列に巻き込まれて、お縄になったんだ」
「何ですって? 先生に限って。どういうことなの?」
「それが勉強会にいく道中に行列があったのだが、子供を庇おうと盤次郎が余計な進言をして籠を止めたらしいのだ」
やばい。やばい状況のやつだ。
大名行列に巻き込まれた子供を庇った盤次郎はどうしたんだ?
為吉と同様に身を乗り出して状況を問いだす生徒。
「あの身の程知らずが、余計な真似を! 盤次郎はどうした?」
「勉強会には参加するように先生に言われて会場の宿場へ行ったよ」
盤次郎が向かったのは宿場。
なにか特別な催し物があるようだな。
「先生がてめえのせいで大変なのに恒例の知恵比べに出て、いい気なもんだな」
盤次郎はそんなにも認められているのか。
宿場っていえば、どのあたりだ。
「ねえ、おねえちゃん。バンさんはどこいったの?」
「勉強会といってね、他の寺子屋の生徒との交流に出かけたのよ」
「場所はどこですか?」
「カミセの宿場町にあるお座敷よ」
カミセ?
「…ツナセじゃなくて?」
「えっとね、ツナセ界隈はずっと西の方よ。ツナセまでは行かないわね」
そうなんだ。
どうやら東のエリアはカミセと言うらしい。
「それじゃあ、神社はカミノセだったりしますか?」
「え、カミノセ…神社? そんなの聞いたことないけど。いま大変なことが起きてるから構ってあげられないの、ごめんね」
「お嬢さん、先生のもとに急ぎましょう!」
俺とぶつかった生徒が小夜子に向けて言った。
この子は先生のお嬢さんのようだ。
小夜子も慌ただしく教室を出て行くようだ。
「とりあえず番所へ急ごう、為吉さんたちは自習をお願いします」
「仕方ねぇな。小夜ちゃん、藤吉郎先生のこと、しっかり頼んだぜ」
小夜子は神社の存在を知らないと言った。
こちらの方にはないのかもしれない。
確かに出て来た祠は寺のお堂だったし。
向こうがツナセでこちらがカミセなら。
神社があるとして、カミノセかと思ったものだから。
それにしてもここの先生は大変なことになったな。
いくらかの生徒が番所へ急いで行った。
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