異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:11歳】

第496話 楽しみだ

本の題名は無題になっていて、不思議に思いながら表紙を開くと、中央下に黒井恵梨香と書かれている。

この本は日本語か?

ページを開き数行読むと恵梨香さんの日記だった。

もしかして転移した人が、150年前の大聖女様以外にもいたということだろうか?


私の石板の図書館に収められている本は、王都図書館とクロンデール公爵家の図書室の本だ。

図書館のランクがあがったときに、王都図書館以外の図書館の本を石板に収められるようになった。

私が行ったところで該当するのは、クロンデール公爵家の図書室だけなので、迷わずに統合したのだ。


恵梨香という名前は、クロンデール公爵家の王都の屋敷で、秘蔵本を見せてもらった際に読んだ回復魔法の上級本を書いた人物が、エリカ・クロンデール嬢だった。

そう考えるとこの日記の作者、黒井恵梨香さんとエリカ・クロンデール嬢は同一人物か?

回復魔法の上級本の呪文は、前世の世界の言葉だったし…。

だけどなぜ個人の日記、しかも日本語で書かれたものがクロンデール公爵家の図書館に?

日本語で書かれている本だ、他の誰かに見られたらまずいはずだ。


あと人の日記を読むのはなあー。

さすがに私も躊躇して読むのをやめて本を閉じると、白紙本の一部分が光っているように見えたので、パラパラと捲ると光って見えるページを見つけた。

いったい何なのか、ちょっと怖いが読むと、トーロスについて書かれている個所のようだった。


恵梨香さんは鑑定が出来たらしく、討伐したトーロスの肉の味は美味との鑑定結果を見て食したところ、最高においしいお肉だったから、明日も倒すぞと書いてある。

ただ鑑定では魔獣の名前までは出ないようで、絵と特徴を書いていた。

色々疑問はあるが、それは暇な時に考えることにする。


特徴の皮は赤茶色と書いてあるから、トーロスの可能性が高い。

トーロスをすぐに食べてみたいが、反対されるだろうし、鑑定できる人がいないから屋敷に戻ってからかな?

楽しみが増えたよ。



「ハルト、トーロスについて何かわかったのか?」

私が白紙本を閉じたのを見たのか、ジェラ兄上が尋ねてきた。

「鑑定してからになりますが、すごく美味しいお肉かもしれないです」

「鑑定してからということは確証がないということか」

「えぇ、この本にはトーロスとは書かれていなくて、特徴や絵姿が似ているだけでした」


ジェラ兄上は美味しいお肉かもしれないと聞いて、食べる時間があるだろうかと心配していた。

ジェラ兄上は強行日程だからな。

難しかったら後で王都に持っていって食べるようにするのかな?

あとクリス兄上にも・・・・帰ったら忘れずに鑑定と解体を頼むとしよう。

それから恵梨香さんのことは、リアに相談だな。



翌朝、露天風呂?温水プール?みたいなものを確認すると、巨大岩で感じた温度よりは低く感じるが、お風呂といっていい温度だと思う。

「入ってみる?」

ヴァーシュに声を掛けたけれど、入らないとの返事だった。


今度はアトレたちに声を掛けると、こちらはみんな喜んで入った。

お風呂の中で、アトレ、カムイ親子は泳いだりしている。

リプカとシエル、ルアン親子は羽をバタバタさせて水しぶきをあげてお互いにかけて遊んでいるが、その水しぶきがかかるところにいたビアンカが、風魔法でリプカ達に跳ね返している。

ルーカス、ミニョン、チェリーは離れたところでゆったりと入っている。

なごむねぇー、うちの子たちは温泉好きだから、お風呂も迷わず入る。


野営の後片付けが終わるころに、帰るよーと声をかける。

「お風呂の感想は?」

私が戻ってきたアトレとルーカスに尋ねる。

『温泉と比べたら落ちるけれど、気持ちよかったよ』

「温泉がないところでは、いいのではないか?」


帰るため、ジェラ兄上と一緒にヴァーシュに声をかける。

「これから帰るよ」

アトレの通訳だと約束したから、子供の面倒は見る。

連れて来た時にまた岩の上を確認してくれとのことだった。


「もし私たちのところにいるヴァーシュがここに戻りたいといったら、子供たちと一緒に戻ってきてもいい?」

私の話にジェラ兄上が驚いた顔をするが、黙って聞いてくれていた。

『戻りたいなら戻ってくればいいだって』

アトレがヴァーシュに聞いてくれた返事だった。


ヴァーシュの所を離れたところで、ジェラ兄上から説明を求められた。

私たちと一緒にいるヴァーシュは子供を樹海へと言っているから、内心は戻りたいのではないかと思っていたこと。

魔力詰まりが再発することを恐れているため、温泉があるあの場所にとどまっている可能性があること。

だけどヴァーシュの縄張りにお風呂が出来たことで、この問題が解決する可能性があるから聞いてみたと話した。


「ハルトはいいのか・・・・新街の目玉でヴァーシュのアイスクリームを、売り出すつもりだったのだろう」

「最初はそうでした。でも今の新街ならヴァーシュのアイスクリームがなくても十分やっていけると思う」

「ヴァーシュの面倒を見ているベイル一家はどうするんだ」

「彼らには新街に移ってもらって、商会か商会関連の店で働いてもらえればと思います。もちろん要望は聞きます」


「ハルト、ココットの雛の育成忘れていないか?」

「あっ、そうだった」

ジェラ兄上の指摘に、私はココットのことを忘れていたよ。

そうなると今の場所で大規模なココットの育成場にするか、新街にココット育成場を作ってベイル一家に引き続きやってもらうかかな?


ただジェラ兄上に、ベイル一家はヴァーシュ優先だから、外部と接することが少ないことを申し訳ないと思っていたこと。

最初はよかったかもしれないが、さすがに数年経つと、きつくなっているかもしれないと話した。


「ベイル一家には最初から条件を提示しているから、そこまでではないと思う。ハルトがいいのなら、父上たちも反対はしないだろう」

「まずはヴァーシュに聞いてからですね」

この話はこれで一旦打ち切った。
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