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【リーンハルト:11歳】
第513話 諦めるわけにはいかない
ベイルさんが家族全員の仕事の希望について屋敷まで出向いてくれた。
ご両親と弟さんは畑とココットの雛育成を継続希望。
本来は今の場所を買取して事業拡大が希望だったが、無理そうなので新街で続けたいそうだ。
ただココットが新街の外で卵を産まない場合は、相談したいとのことだった。
妹さんは新街で就職希望。
そしてベイルさんは新街で店を開きたいそうだ。
ご両親と弟さんの心配はわかる。
新街の外壁の外といえど、ココットが来るかわからないし、行き帰りで観光客への被害もあるかもしれない。
そうなると今の場所が理想だ、温泉を引いているが新街でするなら同じこと。
私の両親にベイルさん一家に全部買取可能か相談しようか。
「もし砦を買取となると高額だし、今後は砦の修理は自分たちでになるよ」
「それも話合った上での希望です」
ベイルさんの話だと、ココットの育成については毎日記録をつけて、自分たちより詳しい人はいないはずだから、今後も続けたいと、ベイルさんの両親と弟さんの気持ちだそうだ。
それに野生のココットとの付き合い方のコツも掴んだらしく、砦周辺で卵をたくさん産んでくれるようになったとか。
一日200個前後らしい。
「なんだって!それはすごい。だったら新街へ移動なんて、できないじゃないか!!」
私は思わず大きな声を出してしまった。
「はい、卵は新街でたくさん使いますから、無精卵を新街で売りたいです。それに俺が店を出せば、卵をたくさん使いますから・・・・」
ベイルさんが私に試食してくださいとパンが入った籠と何か入っている瓶を取りだした。
私が食べようとパンに手を伸ばす。
「リーンハルト様、お待ちください。毒見をいたします」
部屋のドア付近に控えていた侍女から待ったがかかった。
ベイルさんの方を向いて侍女が説明を始める。
「申し訳ございません。外部からの持ち込みは、こちらで確認してからになります。一度お預かりしてもよろしいでしょうか?」
ベイルさんが侍女にパンと瓶に入った物を渡す。
侍女はお預かりいたしますと言って部屋を出た。
「ベイルさん、悪かったね」
「とんでもないです。お立場的にもっともなことです。私が来た時に侍女さんに確認していればよかったのに申し訳ありません」
ベイルに頭を下げられた。
待っている間、ベイルさんに詳細を聞く。
ヴァーシュのミルクやココットの卵で何か新しいものは作れないかと、考えて完成させたものらしい。
「一人で?」
私の問いに、ベイルは照れながら「実は婚約者にアドバイスをもらって・・・・」
お店も所帯を持って2人で切り盛りしたいと考えているそうだ。
しかもベイルの相手は我が家の料理人。
どこで接点が?
ベイルさんの話だと、新街の屋敷にいる料理人らしい。
なるほど、ベイルがヴァーシュのミルクを新街の屋敷に運んで来ていたのがきっかけとなったようだ。
ドアのノックがあり返事をすると、料理長はベイルが持ってきたパンと瓶が入った籠を手に持っている。
「料理長、どうかした?」
「リーンハルト様、このお菓子を作った人物に会いたくて、押しかけてきました」
料理長はテーブルに籠を置き、瓶から取り出したのは薄い黄色でクリーム状のものだった。
それを小皿に移し、スプーンと一緒に私に渡してくれる。
私はスプーンですくって口に入れる。
私はベイルさんを見る。
マジかー、カスタードクリームだよ、これ。
・・・・・ということは、籠のパンはクリームパンか?!
小皿のクリームを全部食べ終わると、籠の中のパン一つを取り、半分に割る。
やっぱりクリームパンだ。
私は半分に割ったパンのひとつを口に入れる。
クリームはなめらかで、甘さもちょうどいい。
カスタードクリームと言えば、シュークリームだな。リクエストしちゃう?
「このクリームの名前は、決めているかな?」
私が食べた感想ではなく、名前の話をし出したので、料理長とベイルさんがあっけにとられた顔を見せる。
「いいえ、決まっていません」
「なら、カスタードクリーム、パンはクリームパンで!!」
調理方法は同じか知らないが、味は似ているからいいだろう。
あと、我が家が経営する新街の高級ホテルへカスタードクリームを卸してもらうこと、同じくフルーツタルトを売っているサラさんとのコラボを提案する。
「あとさ、パンとは別に、新街のホテル料理長が作った新しい触感の生地の中間の固さの生地を開発をしない?このクリームに合うと思うんだよ」
ベイルに、新街のホテル料理長であるオリバーとサラさんへの紹介状を書くことを伝える。
「ちょっと、お待ちください。お店を出していいということですか?」
「リーンハルト様、気に入ったのはわかりますが、せめて感想をおっしゃってから提案された方がよかったのではないでしょうか?」
私の勢いにベイルは困惑しながらも、重要なことをしっかりと聞いてきた。
そして料理長もベイルの立場を気遣っている。
「もちろんだよ。また新街に名物が出来た。よろしく頼むよ」
「ありがとうございます」
ベイルはほっとした表情を浮かべたので、緊張していたみたい。
このクリームなら新街でなくても売れると思うため、新街以外で店を構えなくていいのか確認すると、家族が近くにいることと、温泉があるため、新街がいいそうだ。
私はベイルに大量のカスタードクリームとクリームパンの納入を依頼するが、業務用オーブンがないためクリームパンは難しいらしい。
だけど私は諦めるわけにはいかないんだ!!
カスタードクリームはベイルから購入するから、クリームパンを我が屋敷内のみで作る、この条件で駄目だろうかと再提案するとベイルは了承してくれた。
私だけが食べたとなると周囲からの圧力が凄いからね、こればっかりは譲れないんだよ。
ご両親と弟さんは畑とココットの雛育成を継続希望。
本来は今の場所を買取して事業拡大が希望だったが、無理そうなので新街で続けたいそうだ。
ただココットが新街の外で卵を産まない場合は、相談したいとのことだった。
妹さんは新街で就職希望。
そしてベイルさんは新街で店を開きたいそうだ。
ご両親と弟さんの心配はわかる。
新街の外壁の外といえど、ココットが来るかわからないし、行き帰りで観光客への被害もあるかもしれない。
そうなると今の場所が理想だ、温泉を引いているが新街でするなら同じこと。
私の両親にベイルさん一家に全部買取可能か相談しようか。
「もし砦を買取となると高額だし、今後は砦の修理は自分たちでになるよ」
「それも話合った上での希望です」
ベイルさんの話だと、ココットの育成については毎日記録をつけて、自分たちより詳しい人はいないはずだから、今後も続けたいと、ベイルさんの両親と弟さんの気持ちだそうだ。
それに野生のココットとの付き合い方のコツも掴んだらしく、砦周辺で卵をたくさん産んでくれるようになったとか。
一日200個前後らしい。
「なんだって!それはすごい。だったら新街へ移動なんて、できないじゃないか!!」
私は思わず大きな声を出してしまった。
「はい、卵は新街でたくさん使いますから、無精卵を新街で売りたいです。それに俺が店を出せば、卵をたくさん使いますから・・・・」
ベイルさんが私に試食してくださいとパンが入った籠と何か入っている瓶を取りだした。
私が食べようとパンに手を伸ばす。
「リーンハルト様、お待ちください。毒見をいたします」
部屋のドア付近に控えていた侍女から待ったがかかった。
ベイルさんの方を向いて侍女が説明を始める。
「申し訳ございません。外部からの持ち込みは、こちらで確認してからになります。一度お預かりしてもよろしいでしょうか?」
ベイルさんが侍女にパンと瓶に入った物を渡す。
侍女はお預かりいたしますと言って部屋を出た。
「ベイルさん、悪かったね」
「とんでもないです。お立場的にもっともなことです。私が来た時に侍女さんに確認していればよかったのに申し訳ありません」
ベイルに頭を下げられた。
待っている間、ベイルさんに詳細を聞く。
ヴァーシュのミルクやココットの卵で何か新しいものは作れないかと、考えて完成させたものらしい。
「一人で?」
私の問いに、ベイルは照れながら「実は婚約者にアドバイスをもらって・・・・」
お店も所帯を持って2人で切り盛りしたいと考えているそうだ。
しかもベイルの相手は我が家の料理人。
どこで接点が?
ベイルさんの話だと、新街の屋敷にいる料理人らしい。
なるほど、ベイルがヴァーシュのミルクを新街の屋敷に運んで来ていたのがきっかけとなったようだ。
ドアのノックがあり返事をすると、料理長はベイルが持ってきたパンと瓶が入った籠を手に持っている。
「料理長、どうかした?」
「リーンハルト様、このお菓子を作った人物に会いたくて、押しかけてきました」
料理長はテーブルに籠を置き、瓶から取り出したのは薄い黄色でクリーム状のものだった。
それを小皿に移し、スプーンと一緒に私に渡してくれる。
私はスプーンですくって口に入れる。
私はベイルさんを見る。
マジかー、カスタードクリームだよ、これ。
・・・・・ということは、籠のパンはクリームパンか?!
小皿のクリームを全部食べ終わると、籠の中のパン一つを取り、半分に割る。
やっぱりクリームパンだ。
私は半分に割ったパンのひとつを口に入れる。
クリームはなめらかで、甘さもちょうどいい。
カスタードクリームと言えば、シュークリームだな。リクエストしちゃう?
「このクリームの名前は、決めているかな?」
私が食べた感想ではなく、名前の話をし出したので、料理長とベイルさんがあっけにとられた顔を見せる。
「いいえ、決まっていません」
「なら、カスタードクリーム、パンはクリームパンで!!」
調理方法は同じか知らないが、味は似ているからいいだろう。
あと、我が家が経営する新街の高級ホテルへカスタードクリームを卸してもらうこと、同じくフルーツタルトを売っているサラさんとのコラボを提案する。
「あとさ、パンとは別に、新街のホテル料理長が作った新しい触感の生地の中間の固さの生地を開発をしない?このクリームに合うと思うんだよ」
ベイルに、新街のホテル料理長であるオリバーとサラさんへの紹介状を書くことを伝える。
「ちょっと、お待ちください。お店を出していいということですか?」
「リーンハルト様、気に入ったのはわかりますが、せめて感想をおっしゃってから提案された方がよかったのではないでしょうか?」
私の勢いにベイルは困惑しながらも、重要なことをしっかりと聞いてきた。
そして料理長もベイルの立場を気遣っている。
「もちろんだよ。また新街に名物が出来た。よろしく頼むよ」
「ありがとうございます」
ベイルはほっとした表情を浮かべたので、緊張していたみたい。
このクリームなら新街でなくても売れると思うため、新街以外で店を構えなくていいのか確認すると、家族が近くにいることと、温泉があるため、新街がいいそうだ。
私はベイルに大量のカスタードクリームとクリームパンの納入を依頼するが、業務用オーブンがないためクリームパンは難しいらしい。
だけど私は諦めるわけにはいかないんだ!!
カスタードクリームはベイルから購入するから、クリームパンを我が屋敷内のみで作る、この条件で駄目だろうかと再提案するとベイルは了承してくれた。
私だけが食べたとなると周囲からの圧力が凄いからね、こればっかりは譲れないんだよ。
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