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【リーンハルト:11歳】
第514話 警戒
ベイルさんはカスタードクリームが入った瓶を、数瓶持参していたので購入した。
ベイルさんから受け取った瓶は料理長に渡す。
「夜に作れるだけ作って家族とアトレたち用にお願い。従業員分は次回ということで」
「かしこまりました。急いで作ります」
料理長は部屋から出て行った。
ベイルさんには、政務官のレイラとオリバーとサラさん宛ての手紙を託して別れ、父上に報告に行く。
父上の書斎に向かっている途中、この件について父上から何か言われたら、クリームパンを持参したベイルさんのせいで、私はアドバイスをしただけだと強く訴えよう。
「まさか、クリームパンとカスタードクリームができるとは驚きよね」
クリームパンを一口食べたリアがしみじみと言った。
「だからさ、思わずシュークリームを作ろうよって提案しちゃったよ。カスタードクリームといえばシュークリームが頭に浮かんだからさ」
食後のデザート代わりにクリームパンを居間で、リア、両親、アトレたちとで食べている。
前世の話をするから、身内だけになる居間での試食会だ。
「シュークリームの皮は難しいと聞くわ、しかも例えがパンとパイの中間って、おかしくない?」
「リア、仕方ないだろう。どう表現していいかわからなかったんだから!」
あとは私も試食に参加して、シュークリームの皮に近づけてもらおう。
完成すればベイルさんのお店の利益に貢献するはずだから、頑張ってもらいたい。
私とリアが言い合っていると、父上が「コホン」とわざとせきをする。
「クリームパンは美味しかった。シュークリームだったか。新街に新しいお菓子ができるのはいいことだ」
ベイル一家の希望する砦の土地買い取りについては、土地が市場価格、建物にかかった費用の半分負担、それとは別に温泉使用料を毎月徴収で納得すれば、事業を任せてもいいというのが父上の案だった。
金額はベイルさん一家には高額だと思うが、塀に囲まれて比較的安全な生活環境だし、建物を自分たちで建てるよりは安い。
温泉使用料は他の者への説明として必要だろう。
ベイルさんのご両親と弟さんが、ココットの雛の育成事業の拡大と新街に卸す卵が増えれば、返済できるだろうから頑張ってもらいたい。
父上の話は続く。
「話は変わるが、あまりいい知らせではない」
なんと領都の教会のおじいちゃん司教様が、新街の教会に異動されて、新たな司教が王都からくるそうだ。
「なんで急に異動なんて……ランデル司教様が言い出されたことではないですよね」
新街は領都にいる司祭の誰かが異動するだろうと思っていた。
「ハルトもわかっているだろう。とうとう教会が動いたということだ」
父上の言葉に私は眉をひそめる。私がウエストランドの次期領主となることで、教会からの横やりはないと思っていた。
それじゃあ、クリス兄上がウエストランドを私に譲った意味がないではないか!!
私はクリス兄様の元でゆるゆる生活をする予定だったのに、それを壊された原因のひとつだぞ。
「ハルト、まだ確定ではない。ただ新しい司教の人となりが、はっきりとわかるまで警戒はした方がいいということだ」
父上は私の怒りを悟ったのか、トーンダウンした言い方をした。
「司教様はお年だと言いながらも、毎月のミサや魔力鑑定など精力的に活動をされてお元気です」
「教会も王家のような恩恵が欲しいと欲が出てきたのではないかしら?」
母上が教会の思惑を予想した。
王都で行われる展覧会のことか?
でも私を怒らせて報復されたとかの噂が流れて、貴族間では取扱注意人物認定されている私が?
自分で言うのもなんだけれど・・・・。
「用心した方がよい。ランデル司教様の忠告もあるからな」
父上が私たちにはっきりと先方の思惑が確認できるまでは、対応に気を付けようとのことだった。
新街も目処が立ち、これから観光客を迎え入れるための準備で忙しくなる。
あとクリス兄上の所へも行かないといけないのに厄介な話だ。
「わたくしからもご報告があります」
リアの話は実の父親であるグランデ公爵が、6月にクロンデール公爵家に来訪することが決まったそうだ。
正式にリアがクロンデール公爵の養女になるということだ。
「我々も挨拶した方がいいだろう」
父上の言葉に母上も同意する。
「そうね。グランデ公爵様もご安心なさるでしょう」
私は気になることをリアに問う。
「正式に養女となったリアは、クロンデール公爵家に引っ越すことになる?」
「できたら今のままでいたいわ。でも学園に通う時はクロンデール公爵家からと言われそう。でもミニョンがいるから・・・・」
リアがアトレたちと一緒にいるミニョンを見た。
リアは私が関わっている事業を手伝っているし、自ら工房と協力して作っている物もあるから、引き続きウエストランドにいてほしいが、今の状態が常識的にはおかしいからな。
今みたいにずっとウエストランドに滞在ということは難しいような気がする。
あとミニョンは従魔ではないが、会話ができないだけで従魔同然だから大丈夫だと思いたい。
我が家にいるときは問題なくても、従魔ではないミニョンが王都にずっと滞在となると、難癖をつける貴族がいるかもしれないし、こっちも難しい。
アトレとミニョンは私たちの所へやって来て、ソファーに飛び乗る。
『ミニョンが、ちょっかい出されても、あしらうか、逃げるかするから安心してってさ』
さらにアトレからは、学園にはリアと一緒に通うから、今のうちに根回しをして欲しいらしいと教えてくれた。
リアがミニョンを抱き上げる。
「ミニョン、一緒に学園に行ってくれるのね。そうだわ、伯父様と伯母様におねだりしましょう」
もっと甘えて欲しいと言われているから、ちょうどよかったわと、リアはミニョンの頭をなでた。
ベイルさんから受け取った瓶は料理長に渡す。
「夜に作れるだけ作って家族とアトレたち用にお願い。従業員分は次回ということで」
「かしこまりました。急いで作ります」
料理長は部屋から出て行った。
ベイルさんには、政務官のレイラとオリバーとサラさん宛ての手紙を託して別れ、父上に報告に行く。
父上の書斎に向かっている途中、この件について父上から何か言われたら、クリームパンを持参したベイルさんのせいで、私はアドバイスをしただけだと強く訴えよう。
「まさか、クリームパンとカスタードクリームができるとは驚きよね」
クリームパンを一口食べたリアがしみじみと言った。
「だからさ、思わずシュークリームを作ろうよって提案しちゃったよ。カスタードクリームといえばシュークリームが頭に浮かんだからさ」
食後のデザート代わりにクリームパンを居間で、リア、両親、アトレたちとで食べている。
前世の話をするから、身内だけになる居間での試食会だ。
「シュークリームの皮は難しいと聞くわ、しかも例えがパンとパイの中間って、おかしくない?」
「リア、仕方ないだろう。どう表現していいかわからなかったんだから!」
あとは私も試食に参加して、シュークリームの皮に近づけてもらおう。
完成すればベイルさんのお店の利益に貢献するはずだから、頑張ってもらいたい。
私とリアが言い合っていると、父上が「コホン」とわざとせきをする。
「クリームパンは美味しかった。シュークリームだったか。新街に新しいお菓子ができるのはいいことだ」
ベイル一家の希望する砦の土地買い取りについては、土地が市場価格、建物にかかった費用の半分負担、それとは別に温泉使用料を毎月徴収で納得すれば、事業を任せてもいいというのが父上の案だった。
金額はベイルさん一家には高額だと思うが、塀に囲まれて比較的安全な生活環境だし、建物を自分たちで建てるよりは安い。
温泉使用料は他の者への説明として必要だろう。
ベイルさんのご両親と弟さんが、ココットの雛の育成事業の拡大と新街に卸す卵が増えれば、返済できるだろうから頑張ってもらいたい。
父上の話は続く。
「話は変わるが、あまりいい知らせではない」
なんと領都の教会のおじいちゃん司教様が、新街の教会に異動されて、新たな司教が王都からくるそうだ。
「なんで急に異動なんて……ランデル司教様が言い出されたことではないですよね」
新街は領都にいる司祭の誰かが異動するだろうと思っていた。
「ハルトもわかっているだろう。とうとう教会が動いたということだ」
父上の言葉に私は眉をひそめる。私がウエストランドの次期領主となることで、教会からの横やりはないと思っていた。
それじゃあ、クリス兄上がウエストランドを私に譲った意味がないではないか!!
私はクリス兄様の元でゆるゆる生活をする予定だったのに、それを壊された原因のひとつだぞ。
「ハルト、まだ確定ではない。ただ新しい司教の人となりが、はっきりとわかるまで警戒はした方がいいということだ」
父上は私の怒りを悟ったのか、トーンダウンした言い方をした。
「司教様はお年だと言いながらも、毎月のミサや魔力鑑定など精力的に活動をされてお元気です」
「教会も王家のような恩恵が欲しいと欲が出てきたのではないかしら?」
母上が教会の思惑を予想した。
王都で行われる展覧会のことか?
でも私を怒らせて報復されたとかの噂が流れて、貴族間では取扱注意人物認定されている私が?
自分で言うのもなんだけれど・・・・。
「用心した方がよい。ランデル司教様の忠告もあるからな」
父上が私たちにはっきりと先方の思惑が確認できるまでは、対応に気を付けようとのことだった。
新街も目処が立ち、これから観光客を迎え入れるための準備で忙しくなる。
あとクリス兄上の所へも行かないといけないのに厄介な話だ。
「わたくしからもご報告があります」
リアの話は実の父親であるグランデ公爵が、6月にクロンデール公爵家に来訪することが決まったそうだ。
正式にリアがクロンデール公爵の養女になるということだ。
「我々も挨拶した方がいいだろう」
父上の言葉に母上も同意する。
「そうね。グランデ公爵様もご安心なさるでしょう」
私は気になることをリアに問う。
「正式に養女となったリアは、クロンデール公爵家に引っ越すことになる?」
「できたら今のままでいたいわ。でも学園に通う時はクロンデール公爵家からと言われそう。でもミニョンがいるから・・・・」
リアがアトレたちと一緒にいるミニョンを見た。
リアは私が関わっている事業を手伝っているし、自ら工房と協力して作っている物もあるから、引き続きウエストランドにいてほしいが、今の状態が常識的にはおかしいからな。
今みたいにずっとウエストランドに滞在ということは難しいような気がする。
あとミニョンは従魔ではないが、会話ができないだけで従魔同然だから大丈夫だと思いたい。
我が家にいるときは問題なくても、従魔ではないミニョンが王都にずっと滞在となると、難癖をつける貴族がいるかもしれないし、こっちも難しい。
アトレとミニョンは私たちの所へやって来て、ソファーに飛び乗る。
『ミニョンが、ちょっかい出されても、あしらうか、逃げるかするから安心してってさ』
さらにアトレからは、学園にはリアと一緒に通うから、今のうちに根回しをして欲しいらしいと教えてくれた。
リアがミニョンを抱き上げる。
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もっと甘えて欲しいと言われているから、ちょうどよかったわと、リアはミニョンの頭をなでた。
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