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【リーンハルト:11歳】
第526話 宰相たちの内緒話
リーンハルト君たちが退出した後、宰相である私が皆に話しかける。
「リーンハルト君に逃げられましたね。まぁ、セシリア殿に聞きたいことは色々とありますが、機嫌を損ねてしまわれるより、今のタイミングで退出するのはいい判断でしょう」
「空間収納・・・さすがドラゴン殿です。本当は空間収納についてお聞きしたかったです」
魔法師団長はすごく残念そうな口調で、リーンハルト君たちが出ていったドアを見ていた。
魔法師団長の話だと、空間収納の理論はわかっているらしい。
そして収納量は魔力量がおおければ多いほど増えるが、魔法陣の展開だけで魔力量をたくさん持っていかれる可能性が高く、魔力量の多い人間でも無理そうだという結論になっているとのことだった。
「リーンハルト君は、人外のしかも大物に気に入られるようで、羨ましい限りだ」
「副団長、感想は後にして、この料理に使う黒ソースですか、早速試食をしませんかな?」
魔塔の最長老の意見にみなが賛成した。
部屋の外で待機している侍従を呼び、ナイフとフォークと皿を至急用意させ、試食を始める。
「トンカツ・・・カレー以外にも合うソースがあるとはな」
クロンデール公爵がうなっている。
「展覧会のお題である、オーク肉料理をたくさん試食しましたが、これが一番になりますな」
しかも最長老は、どこの国のダンジョンドロップ品か調べないとと、最後は独り言を言っていた。
「魚介類のフライも美味しいです。この料理が、もう食べられないとは残念です」
魔法師団長の感想に、クロンデール公爵が意見を述べる。
「リーンハルト君も作れないか検討したはずだ。だが今のところは難しいのだろう」
クロンデール公爵が、今のところと言う。
いずれリーンハルト君が、このソースを再現するだろうと確信している言い方だ。
でも私もリーンハルト君が再現する、できないのどちらだと思うかと問われれば、クロンデール公爵と同じ意見になるな。
「リーンハルト君は、展覧会を見に来てくれたのかと思いましたが、どうやら違うようですな」
最長老はリーンハルト君が、展覧会と聞いた時の顔を見ての判断だろう。
最長老は王都展覧会では、色々と関わっているから彼に見て欲しかったのかもしれない。
リーンハルト君は大人並み、いやそれ以上のことをしでかすのに、時々表情を崩して子供に戻る。
実際まだ11歳だが、彼と話すと大人と会話している感じになるから、つい忘れてしまう。
まぁ、完全に我らを手玉に取るような人物なら警戒必要になるが、今のところはこちらにも配慮してくれているため、彼を自由にさせるのが1番だ。
私が考え事をしていると、クロンデール公爵はリーンハルト君が王都に来た理由を話し出す。
「ソレイユ帝国のグランデ公爵が来るのだ。リーンハルト君は挨拶するために王都に来たのだよ」
「婚約者の実父殿ですか。それでは正式にクロンデール公爵の養女になる手続きが完了するということですかな?」
「最長老、そうだ。グランデ公爵もフローリアが帝国の思惑に巻き込まれないようにするために、手続きを完了させたいと手紙に書いてあった」
表向きはソレイユ帝国の展覧会視察団代表だが、裏では養女の件を完了させるということらしい。
「帝国の思惑・・・・もしかしてフローリア嬢に懐いている、従魔ではない魔獣のことですか?」
私も話に加わると、クロンデール公爵がうなずく。
「しかもあの魔獣は、高位魔獣なのが確実だ。あと子供ではなく成体、そして体の大きさを変えているのではないかという意見もある」
魔塔で議論されたのだろう。
魔塔の長老たちは驚かずにお茶を飲んでいるため、私は質問する。
「公爵、予測はついたのですか?」
「フローリアの魔力属性と高位魔獣で絞ると、ウルススの可能性が高い!」
ウルススとはまた大物ですね。
しかもウルススについては、氷属性ということは知られていますが、見た者が実際少なく、謎に包まれている魔獣です。
「しかしウルススなら毛並みは白とか、白銀とかいわれていませんか?」
魔法師団長が公爵の見解に疑問をぶつけた。
「そうだ、例えば子供時代は茶色で、成体になるにつれて白または白銀へとも考えられる。もし成体で毛の色と体の大きさを変化させているとなると、相当力がある魔獣になる」
クロンデール公爵が、このことを帝国側が調べていないはずがないと断言した。
フローリア嬢もウエストランド家も、途中からミニョン殿をまったく隠さずにいたから、公爵の考えは正しいだろう。
もし成体で毛並みや体を自由に変化できる魔獣がいるとなると、帝国側が欲しいと思うのはわかる。
我が国にドラゴン、フェンリル、フィアンマ、ベンダバールなど……ウエストランド家限定だが、高位魔獣の従魔がたくさんいる。
特に隣接しているソレイユ帝国が、ウルスス……相当力がある個体だとしたら、ギルバート皇太子が諫めても周囲や高位貴族が動く可能性は高い。
今各国は我が国に対して強気には出てこられない。
展覧会も見学に託けての偵察、またウエストランド家との接点を作りたいかのどちらかだ。
「この時期に、新たな厄介ごとはやめて欲しいのですがね」
「宰相、気持ちはわかるが、ウエストランドは巻き込まれているだけで、彼らが動いたわけではないぞ」
最長老が言えば、クロンデール公爵も頷く。
「フローリアのことは、我が家も守れるように全力を尽くす。セシリア殿は冒険者をしているドラゴンだ。騒ぎを起こすことはしないだろう」
公爵の言い分はわかりますが、こちらが仕掛けなくても相手側がね・・・・心配は尽きません。
「リーンハルト君に逃げられましたね。まぁ、セシリア殿に聞きたいことは色々とありますが、機嫌を損ねてしまわれるより、今のタイミングで退出するのはいい判断でしょう」
「空間収納・・・さすがドラゴン殿です。本当は空間収納についてお聞きしたかったです」
魔法師団長はすごく残念そうな口調で、リーンハルト君たちが出ていったドアを見ていた。
魔法師団長の話だと、空間収納の理論はわかっているらしい。
そして収納量は魔力量がおおければ多いほど増えるが、魔法陣の展開だけで魔力量をたくさん持っていかれる可能性が高く、魔力量の多い人間でも無理そうだという結論になっているとのことだった。
「リーンハルト君は、人外のしかも大物に気に入られるようで、羨ましい限りだ」
「副団長、感想は後にして、この料理に使う黒ソースですか、早速試食をしませんかな?」
魔塔の最長老の意見にみなが賛成した。
部屋の外で待機している侍従を呼び、ナイフとフォークと皿を至急用意させ、試食を始める。
「トンカツ・・・カレー以外にも合うソースがあるとはな」
クロンデール公爵がうなっている。
「展覧会のお題である、オーク肉料理をたくさん試食しましたが、これが一番になりますな」
しかも最長老は、どこの国のダンジョンドロップ品か調べないとと、最後は独り言を言っていた。
「魚介類のフライも美味しいです。この料理が、もう食べられないとは残念です」
魔法師団長の感想に、クロンデール公爵が意見を述べる。
「リーンハルト君も作れないか検討したはずだ。だが今のところは難しいのだろう」
クロンデール公爵が、今のところと言う。
いずれリーンハルト君が、このソースを再現するだろうと確信している言い方だ。
でも私もリーンハルト君が再現する、できないのどちらだと思うかと問われれば、クロンデール公爵と同じ意見になるな。
「リーンハルト君は、展覧会を見に来てくれたのかと思いましたが、どうやら違うようですな」
最長老はリーンハルト君が、展覧会と聞いた時の顔を見ての判断だろう。
最長老は王都展覧会では、色々と関わっているから彼に見て欲しかったのかもしれない。
リーンハルト君は大人並み、いやそれ以上のことをしでかすのに、時々表情を崩して子供に戻る。
実際まだ11歳だが、彼と話すと大人と会話している感じになるから、つい忘れてしまう。
まぁ、完全に我らを手玉に取るような人物なら警戒必要になるが、今のところはこちらにも配慮してくれているため、彼を自由にさせるのが1番だ。
私が考え事をしていると、クロンデール公爵はリーンハルト君が王都に来た理由を話し出す。
「ソレイユ帝国のグランデ公爵が来るのだ。リーンハルト君は挨拶するために王都に来たのだよ」
「婚約者の実父殿ですか。それでは正式にクロンデール公爵の養女になる手続きが完了するということですかな?」
「最長老、そうだ。グランデ公爵もフローリアが帝国の思惑に巻き込まれないようにするために、手続きを完了させたいと手紙に書いてあった」
表向きはソレイユ帝国の展覧会視察団代表だが、裏では養女の件を完了させるということらしい。
「帝国の思惑・・・・もしかしてフローリア嬢に懐いている、従魔ではない魔獣のことですか?」
私も話に加わると、クロンデール公爵がうなずく。
「しかもあの魔獣は、高位魔獣なのが確実だ。あと子供ではなく成体、そして体の大きさを変えているのではないかという意見もある」
魔塔で議論されたのだろう。
魔塔の長老たちは驚かずにお茶を飲んでいるため、私は質問する。
「公爵、予測はついたのですか?」
「フローリアの魔力属性と高位魔獣で絞ると、ウルススの可能性が高い!」
ウルススとはまた大物ですね。
しかもウルススについては、氷属性ということは知られていますが、見た者が実際少なく、謎に包まれている魔獣です。
「しかしウルススなら毛並みは白とか、白銀とかいわれていませんか?」
魔法師団長が公爵の見解に疑問をぶつけた。
「そうだ、例えば子供時代は茶色で、成体になるにつれて白または白銀へとも考えられる。もし成体で毛の色と体の大きさを変化させているとなると、相当力がある魔獣になる」
クロンデール公爵が、このことを帝国側が調べていないはずがないと断言した。
フローリア嬢もウエストランド家も、途中からミニョン殿をまったく隠さずにいたから、公爵の考えは正しいだろう。
もし成体で毛並みや体を自由に変化できる魔獣がいるとなると、帝国側が欲しいと思うのはわかる。
我が国にドラゴン、フェンリル、フィアンマ、ベンダバールなど……ウエストランド家限定だが、高位魔獣の従魔がたくさんいる。
特に隣接しているソレイユ帝国が、ウルスス……相当力がある個体だとしたら、ギルバート皇太子が諫めても周囲や高位貴族が動く可能性は高い。
今各国は我が国に対して強気には出てこられない。
展覧会も見学に託けての偵察、またウエストランド家との接点を作りたいかのどちらかだ。
「この時期に、新たな厄介ごとはやめて欲しいのですがね」
「宰相、気持ちはわかるが、ウエストランドは巻き込まれているだけで、彼らが動いたわけではないぞ」
最長老が言えば、クロンデール公爵も頷く。
「フローリアのことは、我が家も守れるように全力を尽くす。セシリア殿は冒険者をしているドラゴンだ。騒ぎを起こすことはしないだろう」
公爵の言い分はわかりますが、こちらが仕掛けなくても相手側がね・・・・心配は尽きません。
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