異世界でゆるゆる生活を満喫す

葉月ゆな

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【リーンハルト:11歳】

第527話 王城の廊下で

「青い髪のお嬢さん、少年の相手などせずに、私と王城の庭園を見て回りませんか?」

王城の廊下で堂々とナンパをしてくる奴がいた。

「あぁ、横顔を見て、美しいと思いましたが、真正面から見るとさらにお美しい」


さらにナンパ男は、脇の廊下から我々の前に進み出て、セシリアを頭からつま先まで見て、うっとりとした表情をしている。

私もナンパ男をじっくり見ると、長い髪を右サイド一つにまとめて前に垂らしている。

チャラい感じはするけれど、美男子だしOKする女性は多そうだ。

服装は我が国の服ではなく、豪華というか派手目の衣装だった。


以前王城のパーティーで見た、アトレかルーカスを譲れと言ったバカ王子の服に似ている・・・・・スーベリア王国だったっけ?

バカ王子は大きな宝石のついた指輪だったが、この人はルビーのピアスと宝石を埋め込んだ金のイヤーカフ、髪をまとめている留め金も宝飾品くらい。

バカ王子より趣味はよさそうだが、やはりスーベリア王国の王族ではないだろうか?


私がナンパ男をじっくり見ている間も、セシリアへのナンパは続いている。

「近くであなた様をみると、つややかな青い髪、アクアマリンのような瞳、きめ細かな肌、あなたはどこの部分も完璧で、この世の者とは思えない美しさだ。ぜひ庭の散策のエスコートの権利を私に・・・・」

セシリアにナンパ男は手を差し出している。


私は体がゾワゾワっとして、セシリアを見るがまんざらでもない顔をしている。

しかしセシリアはナンパ男が差し出した手を取ってはいない。

「あぁ、つれないあなたも素敵だ」

ナンパ男はさらにセシリアに近づく。


「ではせめてお名前だけでもお教えいただけませんか?」

「なぜ名乗らねばいけない?」

「私にあなた様を探せと言われるのですね。もちろん、私の名誉にかけてあなた様を探しだしましょう。その際は、私と一緒に食事を・・・・」


私はナンパ男に最後まで言わせずに話に割って入る。

「申し訳ありません。勝手に決められても困ります。我々は予定がありまして失礼させていただきます」

会釈をして、セシリアをつれて強引に離れようとしたら、セシリアの左手をナンパ男が掴む。


「何をする!!」

セシリアはナンパ男が掴んだ手を跳ね除け、逆にナンパ男の腕を取り、彼を庭に投げ飛ばす。

ただ手加減はしているようで、ナンパ男は空中で態勢を整え、我々に近い庭に着地した。


「へぇー、あんたやるね。とっさにできるなんて結構鍛えているね」

この人、ただのナンパ男ってわけではないんだ。

下手すると国際問題だから、彼が名前を名乗る前に謝ってここを去りたいが、ナンパ男はセシリアへわざと近づいた可能性がある。

だとしたら私に近づくためか?


「美人だけでなく、腕も立つとは!!あなたは私が理想とする女性そのものだ。私の妃になりませんか?」

ナンパ男は私たちの側にすぐに戻って来て、警戒が緩んだセシリアの両手を握って口説きを再開した。

前言撤回、やっぱりただのナンパ男だった。

でもいい加減終わらせて帰りたい。


「ちなみに何番目の妃ですか?」

私は横から口を出す。

「5番目だ」

セシリアの手を放さずに、あっさりと答えたナンパ男は、セシリアの顔が凄い形相になったことに失敗したと気づいたようで、セシリアの両手をパッと離した。

そしてセシリアが一歩前に出ると、後ろに下がる。


「残念だ。あなたは相当の手練れのようだから、完全に怒らす前に退散するよ」

ナンパ男は両手を肩のあたりまであげて、降参のポーズをしたあと、最初に来た脇の廊下へ戻るが、こちらに振り向いて話し出した。

「また、会おうね。青い髪の美女」


ナンパ君はウインクして去っていった。

ウインクってこの世界でもするんだ。

私が感心というか、あっけにとられながら、ナンパ男を見送っていた。


「あいつは誰なんだ! 報復していいか?」

セシリアはナンパ男の後ろ姿の方を指差して怒っていた。

「駄目だよ。おそらく他国の王族だ。国同士の争いになるからやめてよね!!」

「この怒りをどうしたらいい」

私に聞かれても……しかも最初はまんざらでもないって顔していたよね。


「屋敷に帰って美味しい物を食べよう。今日はセシリア希望のカレーライス、いやカツカレーだ」

「本当か!なら早く帰らねば。ハルト、急ぐぞ」

セシリアはナンパ男のことはどうでもよくなったようで、さっさと歩きだしたため、私も急いで後を追いかけた。


ただそのあとも、セシリアをナンパしようとする男性が現れ、私の顔を見ると、セシリアに声をかける前に退散していった。

私はまだ取り扱い注意人物継続中のようだ。
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