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めぐる恋模様、回る洗濯機
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ピンポーンと音がしたので誰かが家に来たのだと思った。だが僕は眠いと思ったので寝ようと思いそして寝た。―
家主が起きてこないのでは仕方がないので、こうして僕、松田悠里は勝手に家主の印鑑を使い、勝手に家主の荷物を受け取り、勝手に家主の冷蔵庫から飲むヨーグルトを飲みました。美味しかったです。
意識が覚醒したので杏理さんを起こしに行こう。
僕が杏理さんの弟子になってから早1年ほどが経った。さすがにここまで長い時間一緒にいると、相手がどんな人間かわかってくる。
杏理さんは寝起き自体はさほど悪くない。けれど
「おはよう、悠里君」
「おはようございます」
「では僕はソファーで寝るから」
とまあ、こんな風に素直に起きるくせにすぐに二度寝を始めるのである。ちなみに香蓮さんが杏理さんを起こしに行くと余計時間がかかるので起こすのはいつも僕です。
杏理さんは魔法使いなだけあってか、住んでいる家もそこそこ立派だ。「ずれてる
当然のようにソファーやベットをあちこちに配置するので放っておくと部屋のどこかで勝手に二度寝を始める。起こす側としては非常に厄介です。
だから、たいていごはんで釣る。
今日の朝食はウインナーと目玉焼きだ。昨日残りのおでんもある。正直これで起きるか厳しいけれどここが腕の見せ所だ。僕は屋敷のスピーカーをかけて杏理さんにお知らせを流す。
「えー、今日の朝ごはんはウインナー、目玉焼き、おでんです。おでんの卵があと一つだけ残っています。あと3分で卵が消滅します。ご清聴ありがとうございました。」
放送を終えて振り返るとすでに杏理さんがいた。ついでに卵もなかった。
「卵が余ってるのに目玉焼きというのはどうかと思うよ」
杏理さんが言うけど、一個だけ余ってたから迷ったんです。でも目玉焼きが楽だったから作っちゃったんです。
「あれ、香蓮さんは?」
杏理さんが聞きます。今日は友達と出かけると昨日言っていたのに。人の話を聞いているのか、聞いてもすぐ忘れるのかよく分からない人だ。
昨日の説明をもう一度すると杏理さんはコーヒーを飲み干してから
「じゃあ今日は何して遊ぼっか?」
とのたまった。
おかしいな。今日は魔法の修行をするっていってなかったかな。そう思った矢先のことだった。
ガチャリとドアが開き、誰かが部屋に入ってきたのは。
この屋敷は杏理さんのものだけど僕や香蓮さんが家事とかを手伝う代わりに住み着いています。それを踏まえても広さに対して人が少ないとは思うけれどさておき、部屋に入ってきたのは香蓮さんではない、一人の女性でした。香蓮さんよりも年下だろうか、僕と同い年くらいかな。とはいえこの状況を放っておくわけにもいきません。声をかけてみよう。
「あのー泥棒じゃないですよね。多分。」
と、そこまで言ってふと思った。
この屋敷は杏理さん曰く主人に認めらないと基本入れないどころか、認識もできない代物であるらしい。泥棒なんてできやしないのだ。それなのに、彼女が部屋に入ってきているところを見ると、泥棒どころか、お客様である可能性が高い。
そんなお客様は少しテンパってしまわれたようで、
「いやいや、違いますよ!違いますって!そりゃあ、勝手に入ったのは悪かったですけど、チャイムが壊れてて、この部屋防音もしっかりしてるから直接入った方が早いかなーって!」
と、矢継ぎ早に口を動かす。元気な人だ。
「実は外に一人待たせているんですけどそっちの方はなんだか屋敷に入れないとか言ってて、見えはするみたいなんですけど。」
と、彼女は続けます。
チャイムが壊れているだとか、見えるけど入れないだとか、いろいろ気になることがあるけれど、とりあえず落ち着いてもらおう。
「落ち着いてください、とっさに泥棒とか言ってすいませんでした。お客様ですよね。お連れの方もお呼びしますのでどうぞお待ちください。あとでお茶も入れますね。」
と言って僕は玄関へと向かった。
玄関の外には僕と同年代くらいの青年が困った顔をしておろおろしていました。この人がさっきの女性の連れなのでしょう。
「お待たせしました、お客様。どうぞお入りください。」
一応ここに住んでいる僕がお入りくださいとまでいったからか、彼はすんなりと部屋に入ることができたようだった。
お茶を飲んだ二人は自己紹介を始めます。
「はじめまして、七瀬あかりですっ。本日はお呼びいただきありがとうございます。よろしくどうぞ。」
「稲葉レンです。よろしくお願いします。」
いろいろ引っかかることはあるが仕方がない。一つずつ片付けていこう。と僕は杏理さんに向き直る。
「あれ、どうしたのみんなで僕の方を見て」
当の本人はポカーンとしてますが十中八九この二人を呼んだのは杏理さんだと思う。
「一つお聞きしたいのですがお二人はどなたに招かれましたか?」
「ああいえ、招かれたのは私一人でこっちの人はつきそいですよ。杏理さんからの依頼を受けてきました。」
ほら、少し予想と違ったけどやっぱり杏理さんでした。香蓮さんが人を呼んで放っておくわけがありません。というか人を呼んでおいてすっかり忘れてしまうのは杏理さんくらいなものだろう。
「ああ、実験に使うから人をよこしてって頼んだっけ、確か。」
杏理さん曰く昔からの友人に人員募集を頼んだところ、今日なら暇な子を向かわせてくれるという話だったらしい。実験というのは新しい魔道具が使えるかどうかの確認、それも今朝僕が受けとった例の荷物とのことだった。どうしてこの人は香蓮さんが出かけている日にこんな人手が必要なことをやろうとするのだろうか。
そんなことを考えている僕を放っておいて杏理さんたち3人の話はどんどん進んでいきます。
「じゃあ君らはあいつの弟子にあたるのかな?」
「弟子、とは違いますね。別に魔法使いになりたいわけではないですし」
「あの、でも魔道具は使えます。」
「なるほど、今時はそっち派多いもんなー」
・・・意外と打ち解けられている。不思議だ。
せっかく話が盛り上がっているのだから今のうちに受け取った荷物を用意してしまいましょう。僕は段ボールの荷物を持ってくることにしました。一応この部屋でやるか部屋を変えるかを彼らにきいてみたところ、
「せっかくだし、この部屋でいいよ。あったかいし。」
と、何がせっかくなのかわからないけれど、この部屋でやることが決まった。
僕が荷物を持ってくると、二人の作業員さんはてきぱきと中身の荷物を並べていきます。
中の荷物は魔道具とは聞いていましたが、一見すると趣味のいい芸術作品のようなものからはさみのような100均のようなものまであります。それにしても、組み立てるようなものもないのになぜ杏理さんはわざわざ人員を集めたのでしょうか。
あかりさんが元気な声で宣言します。
「さあ、それでは始めましょう。一見したところ使い方が分かるものが半分くらい。多分こうかなーって思うのが3割、さっぱり分からないのが2割くらいです。今日だけで何品できるか分かりませんが、まあがんばっていきましょう!」
レン君も続きます。
「ええと、あの、がんばります。」
杏理さんもうんうんうなずいている。 なるほど、使い方をしらべようというわけか。
「報酬も出すし、いらない魔道具があったらあげるね。」
本当に珍しいくらい機嫌がいいですね杏理さん、よほど彼らが気に入ったようです。
「では!はりきっていきましょう!」
あかりさんの声で、この日の作業が始まった。
最初の一品目は万華鏡のようなものでした。ちょっと距離をあけて見るとなんかキラキラしたものが見えます。
「ただの万華鏡と違って、見るところが二つあります。こういったものはだいたい入れ替え系のものである可能性が高いです。」
レン君が解説します。なるほど、そうやって考察していくのか。さっきまでのおどおどした態度が嘘のようだ。とても頼りになる。
「もしくは一方から見ると吸い込まれて反対から別のものになって出るのかもね。ただ悠里君が遠くから見ても変化がなかったからちゃんと目を付けて実験しないと。」
杏理さんも意見を述べる。弟子のピンチを放っておいたことはともかく、観察眼は本物であると言わざるを得ない。
「私も多分どっちかだと思います。別世界に飛ばされるとか、即死系とかそんな感じのとんでもないギミックはみえませんし、安全面から見ると杏理さんの説から実験した方がいいかもですね。」
あかりさんがさらりと怖いことをいった。なんで安全面を考えてそうなるの?吸い込まれて別のものに変わるってそれいくら何でも怖いでしょう。僕も嫌だし、彼らも嫌がるに決まって・・・
「とりあえず、ここにあったリンゴでためしてみましょう。」
「そうだね。香蓮さんがアップルパイを作ると言ってたことが気になるけど、また買えばいいし。」
心配は杞憂だったようです。確かにいきなり人はないか。杏理さんじゃあるまいし。
リンゴを万華鏡の片方に当てます。するとリンゴが吸い込まれて反対側から帽子が出てきました。一応杏理さんの説が正しかったことになります。とはいえ、なぜリンゴが帽子に?
と思っているとあかりさんが帽子を何のためらいもなくかぶっているではありませんか。杏理さんもレン君も代わる代わる帽子をかぶっていく。危なくないのだろうか。怖くないのだろうか。
「うん、やっぱり普通の帽子だね。」
「製作者の意図的にこれ以上の仕掛けは用意しないでしょう。ほら、逆から帽子を入れるとまたリンゴに戻りましたよ。」
杏理さんとレン君が勝手に納得している。
曰く、魔道具も道具である以上、使うことを前提に作られているから、そう二度三度厄介な仕掛けは用意しないのがほとんどなんだとか。例外もあるらしいけど。
そのあと、リンゴやミカンなどを入れてみたが帽子や消しゴムや傘になることもあった。やはり、別のものに変換する類の機械なのだろう。さて、これで一つ目の道具のシステムが分かったと、あんしんしていると、
「じゃあ、つぎ、私がやりますね!」
と、あかりさんが言ってきたのだった。
「大丈夫なんですか?何に変わるかまだ分かっていないんでしょう?」
いきなりの人体実験はさすがに心配なので声をかけてみた。
「さっき別のリンゴを入れてみたらリモコンが出てきました。けど、さっきのリンゴは何度やっても帽子になる。つまり何になるかはわかんないけどなるものは一度で固定されます。そもそもそういう理由で人手を求められたようだし、一応私が何になるか知っておきたいんですけど?」
と、返ってきた。勇敢なうえに好奇心おうせいだなぁ。けど、それはそれとしても人間が使うとどうなるかは大事な情報だ。誰かがやらないといけないことも事実だ。
「じゃあ、始めますね。みんな離れてください。」
といい、あかりさんは躊躇なく万華鏡に目をあてた。あかりさんはすいこまれ、出てきたのは大きな洗濯機だった。
「えーと、あかりちゃん、聞こえる?」
杏理さんが洗濯機の側面をポンポンとして問いかけます。
「ええと、心石、つかいますか?」
「うん、使う。サンキュー」
レン君が何やら石をとりだして軽く布で拭きました。すると
(は/はいっ//きこえてますっ!あうっ//)
と、若干上ずった声が聞こえてきた。なるほど、あの石にこんな効果があるのか。それはさておきあかりさんの様子がおかしい。無事に変身できたようだけど?
(杏理さんの手っ//むねに//あたってっ///)
なるほど、それで声が色っぽかったのか。ただ、杏理さんは
「ほう、意識があるだけでなく感じるのか、機能とかはどうなんだろう。ぽちぽちっと」
「ひぃっ!ど、どこさわって、ううっ//、や、やめ」
杏理さんはやはりというか暴走している。でもこのままじゃあかりさんがかわいそうだ。止めに入ろうとしたのだがなんとレン君が杏理さんの味方に入った。
(レン君っ、実験は成功っ。だからもう元にもどしてっ。ううっ//早くたすけてっ//)
「実験は成功ですけどあと機能性実験もついでにやってみようと思います。普通やるでしょう。常識的に考えて。」
(それはそうだけどっ、時間もかかるしッ)
「それは心配ない。一つずつ確実な方がいいしね。今日これだけで終わっても構わないよ。」
「依頼人からの許可をいただきました。」
(そんな、ちょっレン君っ!そんなとこさわらないでぇ!ああっ♡)
レン君が洗濯機のボタンを触り出した。はたから見ていると洗濯機をいじっている男性が一人いるだけの光景に見えるだろう。だがよく見ると洗濯機は小刻みに震えているし、彼の石から艶やかな声が聞こえてくる。
(んんっ//もうっ、もうやめてぇっ!やんっ!どうして激しくなるのよぉ//)
レン君はボタンをいじりつつ、僕たちの方を向いた。意外にこの子は怖いかもしれない。
「ではこれより実用性検査を始めます。とりあえずぼくが使っているタオルと、あとみなさんなにか洗濯したいものはありますか?」
(ちょっレン君!?それはさすがにやりすぎっ、ああっ、そこはぁ///おしちゃだめぇぇ//)
やっぱりあかりさんがかわいそうになってきたのでフォローを入れる。
「いや、電化製品が電気も水の供給もなしに動くとは思えませんし、移動させるのも一苦労ですよ。」
(悠里君っ///)
だが現実は非情だった。
「いえ、たぶん大丈夫です。さっきボタンを押した際反応がありました。多分一回分くらいなら水も出ます。ちょうど杏理さんが結構な量の洗濯物を持ってきてくれたのでやってみましょうか。」
なんでこういうときだけ仕事が早いんだろう。
そして今、ぼくは洗濯物を洗濯機に入れようとしている。
(悠里さん、悠里さんは優しいですもんね。女の子にそんな乱暴しないですもんね。)
こういうことを言われると心が痛む。でもそうもいっていられない。
「一応香蓮さんっていう女性の服もきれいなのがありますけど、そっちがいいですか?」
と、譲歩するのが精いっぱいだ。しかしその譲歩すら残りの二人は許さない。
「いやいや、洗濯機っていうのは使った服をきれいにするものだよ。」
杏理さんは絶対楽しんでる。そして、レン君は
「あかりさんが洗濯機である以上、使用済みの衣服を求めるはずです。多分いまも求めていますよ。」
と言ってきた。そういうものだろうか。聞いてみよう。
「あかりさん、どうですか?これ、主に僕の洗濯物だから正直僕も恥ずかしいんですけど、やってくれますか?」
(それ、悠里さんの洗濯物なんですよね。変な人の洗濯物とかないですよね)
「はい、そこは保証します。」
あかりさんは何も言わない。でもこのまま何もしないわけにはいかない。
「ごめんなさい」
僕は無心で洗濯物を入れ始めた。が、あかりさんもたまらず声を上げる
(ああっ!入ってくるぅぅ!悠里さんっ!//ダメですっもっとゆっくりっ!//アアンッ!)
いつものように淡々と、手際よく入れていく。
(もう入らないっ!はいらないからぁ!入れないでぇ!やめやめぇ//あううっ)
取り合えずいつものように詰め込めるだけ入れてしまったけど大丈夫だろうか。
(深いよぅ//あぐっ//重いよぅ//)
少し申し訳ないことをした。だがここで終わるわけにもいかない。
淡々とボタンを押す。
(そこは触っちゃダメだって//アアンッ!ダメっ悠里さんッ!押しちゃダメっ!そこは、そこだけはやめてっ!)
そして、スタートのボタンを押す。
(やめてっ!くる、きちゃう!ああっ、アアンッ!アアアアンッ!ヒャアアアアンッ!)
さて、僕の役目は終わった。洗濯機も問題なく動いている。腰掛けようとして洗濯機から離れようとすると
(あうっ悠里さんっ、一人にしないでぇ、寂しいよお、せつないよお、あんっ)
といわれたのでそばにいてあげることにした。
(わたしはにんげんだよってなぐさめてぇ、なんかほんとにせんたっきになっちゃううっ、あんっ)
「あかりさんはかわいくて元気な人間の女の子ですよ。ちゃーんと終わったら元に戻しますからね。頑張ってください。」
洗濯機、もといあかりさんは
(うんっ//、悠里君のためにぃあっ、んんっ//がんばるぅぅ//)
と言ってくれた。
(えへへ//悠里君っ)
だからこそ僕もあかりさんもすっかり二人を忘れていたし二人の接近にも気づかなかった。
「随分洗濯機が気に入ったようですね。このままこの家で使ってもらえばいいんじゃないですか?」
(れ、レン君、そんなこといわないでぇ// あんっ、ダメっそこは触っちゃダメだってぇ//,ああっそのボタンはぁぁっ!ほんと、戻れなくなっちゃうからぁッ!アアンッ!)
「それはそれでいいデータです。どうすれば戻れなくなるのかどうすれば完全な洗濯機になるのか。」
(いやぁぁ、アンッ、人間にもどるのぉアッ!そこぉ//そんなにしたららめぇ//ダメだってぇ//あんっあんっやめてえっアアンッ!)
レン君は何やら機嫌が悪そうだ。
そんな僕たちをニヤニヤと見つめているのが杏理さんだ。
「ああ、一つの洗濯機を二人で取り合う。青春だねえ。」
と、訳の分からないことを言っている。
「悠里さん、これで最後です。まだ触ってないような洗濯機の部分を触ってみてください。もう触った場所でもいいです。脱水が来るタイミングで。」
「いいですけど、それってどういう実験なんですk
聞くまえに脱水が来そうだった。仕方がないので言われたとおりにする。
(あっ、また来るっ!アアンッ!えっ、ちょっとレン君!どこいじって、アアッ!そこコスっちゃダメェ!っ悠里君ッ!はぁぁぁん♡そんなところに指をッ!だめぇ二人ともアアンッ!そんなにしたらぁ、クルッ!ワタシ、人間なのに、洗濯機としてイッちゃうぅぅ!洗濯機になっちゃうよぉぉ!ダメェェ!イッちゃうぅぅ!アアッ!アアアアアアンッ!)
ピーという音がした。洗濯終了。
(ハァ、ハァ、もうもどしてぇ//アンッ//あううっ)
「お疲れ様です。よく頑張りましたね。」
と、声をかける。レン君は何も言わずにとっとと部屋から出ていった。よくわからない子だ。それはそうと、いまはあかりさんを戻さないと。
プルルルル ガチャリ
「やあ、香蓮さん。どう?調子は、え、早く帰る?えーと、なるべくゆっくり帰ってきた方がいいかも。いや、新人の洗濯機で遊んでただけなんだけど、多分、僕の勘ではこれは長引くとおもうよ。いや、ひょっとしたら悠里君に桜が咲くかも、みたいな?いやだから長引くから早く帰らなくていいんだってば、興味あるのはわかるよ?うん、大丈夫。これは今日では終わらないよ。うん、わかった。それじゃあ。」
・・・さて、あかりちゃんは人間に戻ってから人が変わったようにおとなしくなっている。とはいえ常識的に考えると普通の反応だ。レン君の方は正直よくわからない。今日が初対面だったし大人しい系にしては行動力もあるしあえて黙っているのかへたれなのか僕の目で見てもさあっぱりわからない。
が、まあいい。問題はうちの悠里君だ。彼は今上機嫌でパスタを作っている。なんで!?彼が一番分からない。女の子いじって気分がいい?そんなサディスティックなキャラじゃないだろう。ただ僕が香蓮さんと遊ぶ時も顔を赤くしながらも興味はあったようだからムッツリなのかなと思っていたのだが、今の様子を見ると明らかに違う。まるで引きずった感じがない。何事もなかったかのようにベーコンを切っている。一年近く一緒にいるけど僕は時々彼の考えが見えなくなる。それでいて自分はさも常識人キャラを出すから余計たちが悪い。絶対僕より変人キャラ適正あるってば、あの子。
ヘタレるなら分かる。ていうかそうなると思ってた。男らしく何か仕掛けるなら歓迎する。それならレン君の気持ちも一緒に分かって考察が一気に進むし。そもそもレン君とあかりちゃんの関係って何?どう考えてもただの付き添いとかではないよね?あいつがコンビでよこしたんだから。でも恋人なら悠里君にあんなにあからさまになびくかな?あーもう珍しく頭を使うと混乱する。こりゃさっきの電話は失敗だったかな。
こうなったら香蓮さんが帰ってから一緒に考えよう。早く帰ってこないかなー名探偵の出番だぞー
家主が起きてこないのでは仕方がないので、こうして僕、松田悠里は勝手に家主の印鑑を使い、勝手に家主の荷物を受け取り、勝手に家主の冷蔵庫から飲むヨーグルトを飲みました。美味しかったです。
意識が覚醒したので杏理さんを起こしに行こう。
僕が杏理さんの弟子になってから早1年ほどが経った。さすがにここまで長い時間一緒にいると、相手がどんな人間かわかってくる。
杏理さんは寝起き自体はさほど悪くない。けれど
「おはよう、悠里君」
「おはようございます」
「では僕はソファーで寝るから」
とまあ、こんな風に素直に起きるくせにすぐに二度寝を始めるのである。ちなみに香蓮さんが杏理さんを起こしに行くと余計時間がかかるので起こすのはいつも僕です。
杏理さんは魔法使いなだけあってか、住んでいる家もそこそこ立派だ。「ずれてる
当然のようにソファーやベットをあちこちに配置するので放っておくと部屋のどこかで勝手に二度寝を始める。起こす側としては非常に厄介です。
だから、たいていごはんで釣る。
今日の朝食はウインナーと目玉焼きだ。昨日残りのおでんもある。正直これで起きるか厳しいけれどここが腕の見せ所だ。僕は屋敷のスピーカーをかけて杏理さんにお知らせを流す。
「えー、今日の朝ごはんはウインナー、目玉焼き、おでんです。おでんの卵があと一つだけ残っています。あと3分で卵が消滅します。ご清聴ありがとうございました。」
放送を終えて振り返るとすでに杏理さんがいた。ついでに卵もなかった。
「卵が余ってるのに目玉焼きというのはどうかと思うよ」
杏理さんが言うけど、一個だけ余ってたから迷ったんです。でも目玉焼きが楽だったから作っちゃったんです。
「あれ、香蓮さんは?」
杏理さんが聞きます。今日は友達と出かけると昨日言っていたのに。人の話を聞いているのか、聞いてもすぐ忘れるのかよく分からない人だ。
昨日の説明をもう一度すると杏理さんはコーヒーを飲み干してから
「じゃあ今日は何して遊ぼっか?」
とのたまった。
おかしいな。今日は魔法の修行をするっていってなかったかな。そう思った矢先のことだった。
ガチャリとドアが開き、誰かが部屋に入ってきたのは。
この屋敷は杏理さんのものだけど僕や香蓮さんが家事とかを手伝う代わりに住み着いています。それを踏まえても広さに対して人が少ないとは思うけれどさておき、部屋に入ってきたのは香蓮さんではない、一人の女性でした。香蓮さんよりも年下だろうか、僕と同い年くらいかな。とはいえこの状況を放っておくわけにもいきません。声をかけてみよう。
「あのー泥棒じゃないですよね。多分。」
と、そこまで言ってふと思った。
この屋敷は杏理さん曰く主人に認めらないと基本入れないどころか、認識もできない代物であるらしい。泥棒なんてできやしないのだ。それなのに、彼女が部屋に入ってきているところを見ると、泥棒どころか、お客様である可能性が高い。
そんなお客様は少しテンパってしまわれたようで、
「いやいや、違いますよ!違いますって!そりゃあ、勝手に入ったのは悪かったですけど、チャイムが壊れてて、この部屋防音もしっかりしてるから直接入った方が早いかなーって!」
と、矢継ぎ早に口を動かす。元気な人だ。
「実は外に一人待たせているんですけどそっちの方はなんだか屋敷に入れないとか言ってて、見えはするみたいなんですけど。」
と、彼女は続けます。
チャイムが壊れているだとか、見えるけど入れないだとか、いろいろ気になることがあるけれど、とりあえず落ち着いてもらおう。
「落ち着いてください、とっさに泥棒とか言ってすいませんでした。お客様ですよね。お連れの方もお呼びしますのでどうぞお待ちください。あとでお茶も入れますね。」
と言って僕は玄関へと向かった。
玄関の外には僕と同年代くらいの青年が困った顔をしておろおろしていました。この人がさっきの女性の連れなのでしょう。
「お待たせしました、お客様。どうぞお入りください。」
一応ここに住んでいる僕がお入りくださいとまでいったからか、彼はすんなりと部屋に入ることができたようだった。
お茶を飲んだ二人は自己紹介を始めます。
「はじめまして、七瀬あかりですっ。本日はお呼びいただきありがとうございます。よろしくどうぞ。」
「稲葉レンです。よろしくお願いします。」
いろいろ引っかかることはあるが仕方がない。一つずつ片付けていこう。と僕は杏理さんに向き直る。
「あれ、どうしたのみんなで僕の方を見て」
当の本人はポカーンとしてますが十中八九この二人を呼んだのは杏理さんだと思う。
「一つお聞きしたいのですがお二人はどなたに招かれましたか?」
「ああいえ、招かれたのは私一人でこっちの人はつきそいですよ。杏理さんからの依頼を受けてきました。」
ほら、少し予想と違ったけどやっぱり杏理さんでした。香蓮さんが人を呼んで放っておくわけがありません。というか人を呼んでおいてすっかり忘れてしまうのは杏理さんくらいなものだろう。
「ああ、実験に使うから人をよこしてって頼んだっけ、確か。」
杏理さん曰く昔からの友人に人員募集を頼んだところ、今日なら暇な子を向かわせてくれるという話だったらしい。実験というのは新しい魔道具が使えるかどうかの確認、それも今朝僕が受けとった例の荷物とのことだった。どうしてこの人は香蓮さんが出かけている日にこんな人手が必要なことをやろうとするのだろうか。
そんなことを考えている僕を放っておいて杏理さんたち3人の話はどんどん進んでいきます。
「じゃあ君らはあいつの弟子にあたるのかな?」
「弟子、とは違いますね。別に魔法使いになりたいわけではないですし」
「あの、でも魔道具は使えます。」
「なるほど、今時はそっち派多いもんなー」
・・・意外と打ち解けられている。不思議だ。
せっかく話が盛り上がっているのだから今のうちに受け取った荷物を用意してしまいましょう。僕は段ボールの荷物を持ってくることにしました。一応この部屋でやるか部屋を変えるかを彼らにきいてみたところ、
「せっかくだし、この部屋でいいよ。あったかいし。」
と、何がせっかくなのかわからないけれど、この部屋でやることが決まった。
僕が荷物を持ってくると、二人の作業員さんはてきぱきと中身の荷物を並べていきます。
中の荷物は魔道具とは聞いていましたが、一見すると趣味のいい芸術作品のようなものからはさみのような100均のようなものまであります。それにしても、組み立てるようなものもないのになぜ杏理さんはわざわざ人員を集めたのでしょうか。
あかりさんが元気な声で宣言します。
「さあ、それでは始めましょう。一見したところ使い方が分かるものが半分くらい。多分こうかなーって思うのが3割、さっぱり分からないのが2割くらいです。今日だけで何品できるか分かりませんが、まあがんばっていきましょう!」
レン君も続きます。
「ええと、あの、がんばります。」
杏理さんもうんうんうなずいている。 なるほど、使い方をしらべようというわけか。
「報酬も出すし、いらない魔道具があったらあげるね。」
本当に珍しいくらい機嫌がいいですね杏理さん、よほど彼らが気に入ったようです。
「では!はりきっていきましょう!」
あかりさんの声で、この日の作業が始まった。
最初の一品目は万華鏡のようなものでした。ちょっと距離をあけて見るとなんかキラキラしたものが見えます。
「ただの万華鏡と違って、見るところが二つあります。こういったものはだいたい入れ替え系のものである可能性が高いです。」
レン君が解説します。なるほど、そうやって考察していくのか。さっきまでのおどおどした態度が嘘のようだ。とても頼りになる。
「もしくは一方から見ると吸い込まれて反対から別のものになって出るのかもね。ただ悠里君が遠くから見ても変化がなかったからちゃんと目を付けて実験しないと。」
杏理さんも意見を述べる。弟子のピンチを放っておいたことはともかく、観察眼は本物であると言わざるを得ない。
「私も多分どっちかだと思います。別世界に飛ばされるとか、即死系とかそんな感じのとんでもないギミックはみえませんし、安全面から見ると杏理さんの説から実験した方がいいかもですね。」
あかりさんがさらりと怖いことをいった。なんで安全面を考えてそうなるの?吸い込まれて別のものに変わるってそれいくら何でも怖いでしょう。僕も嫌だし、彼らも嫌がるに決まって・・・
「とりあえず、ここにあったリンゴでためしてみましょう。」
「そうだね。香蓮さんがアップルパイを作ると言ってたことが気になるけど、また買えばいいし。」
心配は杞憂だったようです。確かにいきなり人はないか。杏理さんじゃあるまいし。
リンゴを万華鏡の片方に当てます。するとリンゴが吸い込まれて反対側から帽子が出てきました。一応杏理さんの説が正しかったことになります。とはいえ、なぜリンゴが帽子に?
と思っているとあかりさんが帽子を何のためらいもなくかぶっているではありませんか。杏理さんもレン君も代わる代わる帽子をかぶっていく。危なくないのだろうか。怖くないのだろうか。
「うん、やっぱり普通の帽子だね。」
「製作者の意図的にこれ以上の仕掛けは用意しないでしょう。ほら、逆から帽子を入れるとまたリンゴに戻りましたよ。」
杏理さんとレン君が勝手に納得している。
曰く、魔道具も道具である以上、使うことを前提に作られているから、そう二度三度厄介な仕掛けは用意しないのがほとんどなんだとか。例外もあるらしいけど。
そのあと、リンゴやミカンなどを入れてみたが帽子や消しゴムや傘になることもあった。やはり、別のものに変換する類の機械なのだろう。さて、これで一つ目の道具のシステムが分かったと、あんしんしていると、
「じゃあ、つぎ、私がやりますね!」
と、あかりさんが言ってきたのだった。
「大丈夫なんですか?何に変わるかまだ分かっていないんでしょう?」
いきなりの人体実験はさすがに心配なので声をかけてみた。
「さっき別のリンゴを入れてみたらリモコンが出てきました。けど、さっきのリンゴは何度やっても帽子になる。つまり何になるかはわかんないけどなるものは一度で固定されます。そもそもそういう理由で人手を求められたようだし、一応私が何になるか知っておきたいんですけど?」
と、返ってきた。勇敢なうえに好奇心おうせいだなぁ。けど、それはそれとしても人間が使うとどうなるかは大事な情報だ。誰かがやらないといけないことも事実だ。
「じゃあ、始めますね。みんな離れてください。」
といい、あかりさんは躊躇なく万華鏡に目をあてた。あかりさんはすいこまれ、出てきたのは大きな洗濯機だった。
「えーと、あかりちゃん、聞こえる?」
杏理さんが洗濯機の側面をポンポンとして問いかけます。
「ええと、心石、つかいますか?」
「うん、使う。サンキュー」
レン君が何やら石をとりだして軽く布で拭きました。すると
(は/はいっ//きこえてますっ!あうっ//)
と、若干上ずった声が聞こえてきた。なるほど、あの石にこんな効果があるのか。それはさておきあかりさんの様子がおかしい。無事に変身できたようだけど?
(杏理さんの手っ//むねに//あたってっ///)
なるほど、それで声が色っぽかったのか。ただ、杏理さんは
「ほう、意識があるだけでなく感じるのか、機能とかはどうなんだろう。ぽちぽちっと」
「ひぃっ!ど、どこさわって、ううっ//、や、やめ」
杏理さんはやはりというか暴走している。でもこのままじゃあかりさんがかわいそうだ。止めに入ろうとしたのだがなんとレン君が杏理さんの味方に入った。
(レン君っ、実験は成功っ。だからもう元にもどしてっ。ううっ//早くたすけてっ//)
「実験は成功ですけどあと機能性実験もついでにやってみようと思います。普通やるでしょう。常識的に考えて。」
(それはそうだけどっ、時間もかかるしッ)
「それは心配ない。一つずつ確実な方がいいしね。今日これだけで終わっても構わないよ。」
「依頼人からの許可をいただきました。」
(そんな、ちょっレン君っ!そんなとこさわらないでぇ!ああっ♡)
レン君が洗濯機のボタンを触り出した。はたから見ていると洗濯機をいじっている男性が一人いるだけの光景に見えるだろう。だがよく見ると洗濯機は小刻みに震えているし、彼の石から艶やかな声が聞こえてくる。
(んんっ//もうっ、もうやめてぇっ!やんっ!どうして激しくなるのよぉ//)
レン君はボタンをいじりつつ、僕たちの方を向いた。意外にこの子は怖いかもしれない。
「ではこれより実用性検査を始めます。とりあえずぼくが使っているタオルと、あとみなさんなにか洗濯したいものはありますか?」
(ちょっレン君!?それはさすがにやりすぎっ、ああっ、そこはぁ///おしちゃだめぇぇ//)
やっぱりあかりさんがかわいそうになってきたのでフォローを入れる。
「いや、電化製品が電気も水の供給もなしに動くとは思えませんし、移動させるのも一苦労ですよ。」
(悠里君っ///)
だが現実は非情だった。
「いえ、たぶん大丈夫です。さっきボタンを押した際反応がありました。多分一回分くらいなら水も出ます。ちょうど杏理さんが結構な量の洗濯物を持ってきてくれたのでやってみましょうか。」
なんでこういうときだけ仕事が早いんだろう。
そして今、ぼくは洗濯物を洗濯機に入れようとしている。
(悠里さん、悠里さんは優しいですもんね。女の子にそんな乱暴しないですもんね。)
こういうことを言われると心が痛む。でもそうもいっていられない。
「一応香蓮さんっていう女性の服もきれいなのがありますけど、そっちがいいですか?」
と、譲歩するのが精いっぱいだ。しかしその譲歩すら残りの二人は許さない。
「いやいや、洗濯機っていうのは使った服をきれいにするものだよ。」
杏理さんは絶対楽しんでる。そして、レン君は
「あかりさんが洗濯機である以上、使用済みの衣服を求めるはずです。多分いまも求めていますよ。」
と言ってきた。そういうものだろうか。聞いてみよう。
「あかりさん、どうですか?これ、主に僕の洗濯物だから正直僕も恥ずかしいんですけど、やってくれますか?」
(それ、悠里さんの洗濯物なんですよね。変な人の洗濯物とかないですよね)
「はい、そこは保証します。」
あかりさんは何も言わない。でもこのまま何もしないわけにはいかない。
「ごめんなさい」
僕は無心で洗濯物を入れ始めた。が、あかりさんもたまらず声を上げる
(ああっ!入ってくるぅぅ!悠里さんっ!//ダメですっもっとゆっくりっ!//アアンッ!)
いつものように淡々と、手際よく入れていく。
(もう入らないっ!はいらないからぁ!入れないでぇ!やめやめぇ//あううっ)
取り合えずいつものように詰め込めるだけ入れてしまったけど大丈夫だろうか。
(深いよぅ//あぐっ//重いよぅ//)
少し申し訳ないことをした。だがここで終わるわけにもいかない。
淡々とボタンを押す。
(そこは触っちゃダメだって//アアンッ!ダメっ悠里さんッ!押しちゃダメっ!そこは、そこだけはやめてっ!)
そして、スタートのボタンを押す。
(やめてっ!くる、きちゃう!ああっ、アアンッ!アアアアンッ!ヒャアアアアンッ!)
さて、僕の役目は終わった。洗濯機も問題なく動いている。腰掛けようとして洗濯機から離れようとすると
(あうっ悠里さんっ、一人にしないでぇ、寂しいよお、せつないよお、あんっ)
といわれたのでそばにいてあげることにした。
(わたしはにんげんだよってなぐさめてぇ、なんかほんとにせんたっきになっちゃううっ、あんっ)
「あかりさんはかわいくて元気な人間の女の子ですよ。ちゃーんと終わったら元に戻しますからね。頑張ってください。」
洗濯機、もといあかりさんは
(うんっ//、悠里君のためにぃあっ、んんっ//がんばるぅぅ//)
と言ってくれた。
(えへへ//悠里君っ)
だからこそ僕もあかりさんもすっかり二人を忘れていたし二人の接近にも気づかなかった。
「随分洗濯機が気に入ったようですね。このままこの家で使ってもらえばいいんじゃないですか?」
(れ、レン君、そんなこといわないでぇ// あんっ、ダメっそこは触っちゃダメだってぇ//,ああっそのボタンはぁぁっ!ほんと、戻れなくなっちゃうからぁッ!アアンッ!)
「それはそれでいいデータです。どうすれば戻れなくなるのかどうすれば完全な洗濯機になるのか。」
(いやぁぁ、アンッ、人間にもどるのぉアッ!そこぉ//そんなにしたららめぇ//ダメだってぇ//あんっあんっやめてえっアアンッ!)
レン君は何やら機嫌が悪そうだ。
そんな僕たちをニヤニヤと見つめているのが杏理さんだ。
「ああ、一つの洗濯機を二人で取り合う。青春だねえ。」
と、訳の分からないことを言っている。
「悠里さん、これで最後です。まだ触ってないような洗濯機の部分を触ってみてください。もう触った場所でもいいです。脱水が来るタイミングで。」
「いいですけど、それってどういう実験なんですk
聞くまえに脱水が来そうだった。仕方がないので言われたとおりにする。
(あっ、また来るっ!アアンッ!えっ、ちょっとレン君!どこいじって、アアッ!そこコスっちゃダメェ!っ悠里君ッ!はぁぁぁん♡そんなところに指をッ!だめぇ二人ともアアンッ!そんなにしたらぁ、クルッ!ワタシ、人間なのに、洗濯機としてイッちゃうぅぅ!洗濯機になっちゃうよぉぉ!ダメェェ!イッちゃうぅぅ!アアッ!アアアアアアンッ!)
ピーという音がした。洗濯終了。
(ハァ、ハァ、もうもどしてぇ//アンッ//あううっ)
「お疲れ様です。よく頑張りましたね。」
と、声をかける。レン君は何も言わずにとっとと部屋から出ていった。よくわからない子だ。それはそうと、いまはあかりさんを戻さないと。
プルルルル ガチャリ
「やあ、香蓮さん。どう?調子は、え、早く帰る?えーと、なるべくゆっくり帰ってきた方がいいかも。いや、新人の洗濯機で遊んでただけなんだけど、多分、僕の勘ではこれは長引くとおもうよ。いや、ひょっとしたら悠里君に桜が咲くかも、みたいな?いやだから長引くから早く帰らなくていいんだってば、興味あるのはわかるよ?うん、大丈夫。これは今日では終わらないよ。うん、わかった。それじゃあ。」
・・・さて、あかりちゃんは人間に戻ってから人が変わったようにおとなしくなっている。とはいえ常識的に考えると普通の反応だ。レン君の方は正直よくわからない。今日が初対面だったし大人しい系にしては行動力もあるしあえて黙っているのかへたれなのか僕の目で見てもさあっぱりわからない。
が、まあいい。問題はうちの悠里君だ。彼は今上機嫌でパスタを作っている。なんで!?彼が一番分からない。女の子いじって気分がいい?そんなサディスティックなキャラじゃないだろう。ただ僕が香蓮さんと遊ぶ時も顔を赤くしながらも興味はあったようだからムッツリなのかなと思っていたのだが、今の様子を見ると明らかに違う。まるで引きずった感じがない。何事もなかったかのようにベーコンを切っている。一年近く一緒にいるけど僕は時々彼の考えが見えなくなる。それでいて自分はさも常識人キャラを出すから余計たちが悪い。絶対僕より変人キャラ適正あるってば、あの子。
ヘタレるなら分かる。ていうかそうなると思ってた。男らしく何か仕掛けるなら歓迎する。それならレン君の気持ちも一緒に分かって考察が一気に進むし。そもそもレン君とあかりちゃんの関係って何?どう考えてもただの付き添いとかではないよね?あいつがコンビでよこしたんだから。でも恋人なら悠里君にあんなにあからさまになびくかな?あーもう珍しく頭を使うと混乱する。こりゃさっきの電話は失敗だったかな。
こうなったら香蓮さんが帰ってから一緒に考えよう。早く帰ってこないかなー名探偵の出番だぞー
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