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『日常の延長』
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歩道橋 自販機 お堀
『日常の延長』
通い慣れた道。
いつもと変わらない景色を見て、いつもの日常を送る。そんな日、いつもとは違うちょっとした変化が訪れた。
「おまたせ、待った?」
友達と一緒に学校へ行く。夢にも思っていなかったことだ。いつもと同じ道のはずなのに、なんだか新鮮で違った色で見える。
僕はカバンを肩に掛け、彼女は両手を身体の前で重ねている。私服を見るのが久しぶりでなんだか緊張してしまう。なんだかんだ言って彼女と会うのも話すのも中学生以来かも知れない。
「こうして歩いてると小学生の頃を思い出すね」
あの頃はよく一緒に遊んだものだ。学校から帰ってきては遊びに出掛けて、泥だらけになって帰ってくると母さんに怒られたっけ。
「あ、ねぇねぇ。喉渇いたからちょっと買っていい?」
そう言いながら自販機を指す友達。タタッと小走りで駆け寄るとスマホを翳してお茶を買う。
「? あんたにはあげないよ~」
欲しそうに見ていたわけではないけどそんなことを言われた。そのまま蓋を開けると、クイッと喉を鳴らしながら唇を潤す。
友達が歩き始めると、僕も後を追って歩きだす。横断歩道を渡り、信号を待ち、なんとなく歩道橋を通ってみる。
「わっ! 見てみてあれ!」
指差す方向にはクマのゆるキャラが子供達に風船を配っている姿があった。と、いつの間にか隣に居たはずの友達はすでにおらず、そのクマの所に居た。子供に交じり風船を貰うと満面の笑みでこちらに向かってきていた。
「もらっちゃったぁ~」
何がそんなに嬉しいのかわからないけど、楽しそうで何よりだ。
「――っと、もうこんな時間だ。早く逝くよ」
友達はとても気分が良さそうだ。このまま留まらせていても良いかも知れない。でも、時間は時間だ。
僕は堀の上に立っている彼女の背を、そっと押す。彼女は満足そうな顔でこの世を去った。
その顔を10年経った今でも鮮明に思い出してしまう。
――僕は今日もまた、優しくヒトをあの世へ送る。
『日常の延長』
通い慣れた道。
いつもと変わらない景色を見て、いつもの日常を送る。そんな日、いつもとは違うちょっとした変化が訪れた。
「おまたせ、待った?」
友達と一緒に学校へ行く。夢にも思っていなかったことだ。いつもと同じ道のはずなのに、なんだか新鮮で違った色で見える。
僕はカバンを肩に掛け、彼女は両手を身体の前で重ねている。私服を見るのが久しぶりでなんだか緊張してしまう。なんだかんだ言って彼女と会うのも話すのも中学生以来かも知れない。
「こうして歩いてると小学生の頃を思い出すね」
あの頃はよく一緒に遊んだものだ。学校から帰ってきては遊びに出掛けて、泥だらけになって帰ってくると母さんに怒られたっけ。
「あ、ねぇねぇ。喉渇いたからちょっと買っていい?」
そう言いながら自販機を指す友達。タタッと小走りで駆け寄るとスマホを翳してお茶を買う。
「? あんたにはあげないよ~」
欲しそうに見ていたわけではないけどそんなことを言われた。そのまま蓋を開けると、クイッと喉を鳴らしながら唇を潤す。
友達が歩き始めると、僕も後を追って歩きだす。横断歩道を渡り、信号を待ち、なんとなく歩道橋を通ってみる。
「わっ! 見てみてあれ!」
指差す方向にはクマのゆるキャラが子供達に風船を配っている姿があった。と、いつの間にか隣に居たはずの友達はすでにおらず、そのクマの所に居た。子供に交じり風船を貰うと満面の笑みでこちらに向かってきていた。
「もらっちゃったぁ~」
何がそんなに嬉しいのかわからないけど、楽しそうで何よりだ。
「――っと、もうこんな時間だ。早く逝くよ」
友達はとても気分が良さそうだ。このまま留まらせていても良いかも知れない。でも、時間は時間だ。
僕は堀の上に立っている彼女の背を、そっと押す。彼女は満足そうな顔でこの世を去った。
その顔を10年経った今でも鮮明に思い出してしまう。
――僕は今日もまた、優しくヒトをあの世へ送る。
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