エンド・オブ・フォーマルハウト

まきえ

文字の大きさ
10 / 26
<CHAPTER 02/既望家族/LUNATIC FAMILIA>

Paragraph 4/紫桃家の食卓/Familia

しおりを挟む

「ようこそ我が家へ。夏喜さん、ジューダスさん、ゆっくりしていってください」

 藍那の無茶振りを二つ返事で快諾した紫桃宗谷の運転で到着した紫桃家は、住宅街から少し離れた場所にあり、3人暮らしとしては大きめな3階建てのログハウスだった。宗谷の仕事が不動産関係ということもあり、格安な別荘物件を手に入れたそうだが、やはり格安には十分な理由があった。

「平たく言えば事故物件ですが、僕達にとってはあまり瑕疵にならないので。そこは美味しく頂きました」

 心理的瑕疵が伴う事故物件だが、『私達にとって』が意味する通り、紫桃家は夏喜の倉山家と同じように魔法に深い関わりのある一族であり、藍那の父はユーラシア大陸の中国を含む東側と東南アジアと日本を統括する第五魔法協会の大幹部の一人である。宗谷は婿養子ではあるが、彼の一族も第五魔法協会の管轄内にいるため、夏喜のことも昔から知っており、友人のような関係が続いている。

「君たちね、娘のために魔法から遠ざかるといっていたのに、そこは気にしないってどうなの?」
「え~。見えないものは別に怖くないし、見えても被害ないし、おばけってただのカマチョだもん」
「私もおばけみえないから怖くない。友達になりたいのに出てきてくれないから寂しい」
「オゥフ。肝が据わってやがる」
「オレまでお邪魔してよかったのか。オレの存在こそ忌避したいものだろう」
「ジューダスさんは夏喜さんの家族のようなものなので。僕達が離れたいのは魔法社会の仕来りのほうが強いので、そこは都合よく頂きます」
「絵に書いたようなクリスマスもハロウィンも正月も七夕も美味しい処取りの日本人だよ、君たちは」

 急に人口が3人も増えても、さすがは元別荘のログハウスだけあって広々としていた。ソウジロウは葵に連れられて子供部屋へ遊びに行き、大人たちはリビングのソファーに座る。

「2階の部屋は余ってますのでご自由に使ってください。キッチン以外の水回りはありますので。3階はアイナの荷物が積み木状態なので、下手に触って崩れると怪我をされますので立ち入りはご遠慮ください」
「藍那、片付けくらいいい加減覚えろ。この家がきれいなのも全部宗谷君に任せているだろう」
「台所だけは私が片付けてます~。パパはお料理できないもの」
「いやはや、お恥ずかしい限りで」
「君も人が良すぎるぞ、宗谷君。まあいい。せっかく招いてくれたからゆっくりさせてもらおう。それに藍那。帰国の手引きをしてくれてありがとう。おかげで助かったよ」
「キャー! ナッちゃんのありがとうだけで身長伸びそう!」
「これ以上伸びるな。すでにジューダスよりでかいだろう」

 ちなみにジューダスと宗谷の身長はだいたい175cm前後であるが、藍那は180cmくらいであった。

「子供たちは子供たちの時間がありますから、大人は大人たちの時間を過ごしましょうか」

 宗谷はそう言うと鍵付きの棚を開け、ぎっしりと並べられた物を取り出す。ゴン、と重い音を立ててリビングのテーブルに並べられたのは、年季の入った酒瓶の数々だった。

「いい趣味だな、宗谷君」
「僕の趣味は酒集めこれくらいしかありませんから。冷蔵庫に各種ビールとシャンパン、ワインセラー内も充実してますので、お二人とも好きなものを開けてください」
「ほう、葡萄酒もあるのか。おすすめがあるのなら遠慮なく頂こう」
「おい、ジューダス。遠慮はしろよ。わたし達は一応客だぞ」

 そう言う夏喜もちゃっかり冷蔵庫の扉を開けて高そうなシャンパンとビールを物色していた。藍那は人数分のグラスを用意し、宗谷は選んだワインをジューダスに手渡す。三者三様の銘柄を揃え、ログハウスに景気のいい音が響いた。

///

「アイナママ~、ナッちゃんさ~ん。ソウジロウ眠いみたいだから寝か・・・・・・」

 眠そうに目をこするソウジロウの手を引いた葵がリビングに顔を出すが、酒盛りが始まっていることに気付き、返事も聞くこと無く部屋に戻った。

「お部屋、決まらなさそうだから私の部屋で眠ろうか」
「ウン、・・・・・・眠い」



_go to "Spark".
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※AIイラスト使用 ※「なろう」にも重複投稿しています。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...