【誰も知らない拳で、世界をひっくり返す――最底辺高校生、無双ランクアップ物語】

あめかわ しげる

文字の大きさ
5 / 68
第1章「目覚めの喧嘩」

第4話「校内ランク戦、勃発」

しおりを挟む
朝の校内は、
異様な熱気に包まれていた。

 

巨大なモニターに、
【第一回 校内ランク戦 開幕】
と、赤字で躍る文字。

 

スマホにも同時に通知が届く。

 

【ランク戦ルール】
・個人戦/素手のみ
・勝利でレートポイント増加
・敗北で減少
・連勝ボーナスあり
・敗者への過度な暴力行為は禁止(違反で強制失格)

 

「……まじで、やるんだな」

 

蓮は、
掲示板を見上げながら、
小さく呟いた。

 

校内全員が、
興奮と恐怖をないまぜにしながら、
息を潜めていた。

 

昨日まで、
ただの平凡な日常だった。
それが今、
“生き残りゲーム”へと姿を変えようとしている。

 

だが、
それでも人々は――

 

拳で順位を決める。
強い者が勝ち、
弱い者が消える。

 

その単純明快なルールに、
抗えない魅力を感じていた。

 

蓮の脳裏には、
昨日のバトルの感触が、
まだ生々しく残っている。

 

拳を突き出したときの空気の抵抗。
骨に伝わった衝撃。
相手の体が崩れる音。

 

(あれが、俺の……)

 

無意識に右拳を握る。

 

「――神崎蓮」

 

名前を呼ばれた。

 

振り向くと、
バトル進行管理をしている生徒会役員が立っていた。

 

「ランク戦初戦、対戦相手が決まった。指定エリアに集合しろ」

 

無機質な声。
まるで機械のようだ。

 

「相手は……」

 

「3年、成田翔。レート1350」

 

レート1350――
校内ランキング、堂々の第3位。

 

(いきなり、か)

 

心臓が、
重く跳ねた。

 

だが、
不思議と恐怖はなかった。

 

それよりも――
どこか、
高揚していた。

 

(……やれる)

 

拳を握り、
歩き出す。

 

背後で、
誰かの視線を感じた。

 

振り返ると、
そこには七瀬玲奈がいた。

 

グラウンドを囲む観戦スペース。
無表情のまま、
彼女は、
じっとこちらを見ていた。

 

その視線に、
蓮は背中を押された気がした。

 

(見てろよ)

 

心の中で、
誰にも聞こえない声を呟いた。

 

***

 

試合開始直前。

 

グラウンドの中央に、
成田翔が立っていた。

 

身長180センチを超える長身。
筋肉質な体格。
拳には白いテーピング。

 

目つきは鋭く、
獲物を睨む獣のようだった。

 

「未登録が、一丁前にランク戦かよ」

 

成田は、
鼻で笑った。

 

「一撃で沈めてやる。恥かくなよ」

 

挑発。
周囲からも、
笑い声が漏れる。

 

だが、
蓮は動じなかった。

 

静かに、
呼吸を整える。

 

(呼吸を乱すな)
(相手の動きを見ろ)
(無駄に力むな)

 

拳を握る感覚。
地面を踏みしめる感覚。

 

昨日とは違う。
身体が、明らかに覚醒していた。

 

「バトル、スタート!!」

 

電子音と共に、
試合が開始された。

 

成田が、
一直線に突進してくる。

 

ドッ――!!

 

砂煙を巻き上げながら、
低いタックル。

 

(速い――)

 

だが、
蓮は一歩、
わずかに後ろに跳ねた。

 

成田の肩が空を切る。

 

そのまま、
右の拳を振り上げ、
カウンター気味に成田の顔面を狙った――

 

が、
成田は即座に顔を引いた。

 

(……反応早い!!)

 

蓮の拳は空を切る。

 

間合いを取ろうとしたが、
成田の膝が、
すぐに迫ってきた。

 

ドガッ!!!

 

蓮の脇腹に、
鋭い衝撃が走る。

 

一瞬、
肺が潰れたかと思った。

 

(っぐ……!!)

 

体勢を崩し、
よろめく。

 

成田は、
間髪入れずに追い打ちをかけた。

 

左ストレート。
拳が、
真っ直ぐに蓮の顔を狙う。

 

(……無理だ!!)

 

思考が、
反射より遅い。

 

蓮は、
無意識に上体をひねった。

 

拳が、
耳をかすめて空を切る。

 

間合いが、
一瞬だけ、空いた。

 

(今だ!!!)

 

全身のバネを解き放つ。
蓮の右拳が、
下から成田の顎を突き上げた。

 

ガンッ!!!

 

鈍い音。
骨が震える。

 

成田の体が、
仰け反った。

 

その隙を、
逃さない。

 

左拳を、
成田の肋骨に叩き込む。

 

ゴフッ!!

 

成田が、
苦悶の声を漏らした。

 

そのまま、
倒れるかと思ったが――

 

成田は、
ふらつきながらも踏みとどまった。

 

「チィッ……!!」

 

怒りに顔を歪め、
再び飛びかかってくる。

 

正面から。
真正面から。

 

(……バカ正直な突進)

 

蓮は、
静かに、
低く構えた。

 

そして、
成田の胸元に、
両腕を差し込んだ。

 

そのまま、
腰を落とし――

 

(持ち上げろ!!!)

 

全身の筋力を爆発させた。

 

成田の巨体が、
軽々と宙を舞う。

 

周囲から、
歓声と悲鳴が入り混じった声が上がる。

 

(落とす!!!)

 

重力に任せて、
成田を地面に叩きつけた。

 

ドゴォォォォォ!!!

 

土煙。
振動。

 

成田は、
ぴくりとも動かない。

 

「――勝者、神崎蓮!!!」

 

審判役が叫ぶ。

 

蓮は、
ゆっくりと立ち上がった。

 

汗が、
首筋を伝って落ちる。

 

呼吸が荒い。
脈が速い。

 

だけど――

 

「……まだ、いける」

 

静かに、
呟いた。

 

スマホに、
通知が届く。

 

【勝利ポイント+300】
【現在レート:1300】
【Bクラス上位昇格】

 

そして、
もう一つ。

 

【観戦者注目率:78%】

 

ふと、
視線を感じた。

 

観戦スペースの端で、
玲奈が、
変わらぬ無表情で、
じっとこちらを見つめていた。

 

だけど――
その目の奥に、
かすかな熱が宿っていることに、
蓮は気づいた。

 

(ああ――)

 

蓮は、
思った。

 

(まだ、終わっちゃいけない)

 

(もっと上へ――)

 

(もっと、強く――)

 

砂煙が、
夕陽に照らされて、
赤く染まった。

 

神崎蓮。

 

その名が、
ゆっくりと校内に広がり始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...