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第3章『また、君と生きていく』
第6話「名前のない日々に、名前をつけよう」
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「ねえ、これかわいくない?」
主人公が指差したのは、
ロサンゼルスのベビーブティックに並んだ、
小さなオーバーオール。
湊は、そのサイズに目を丸くした。
「……こんなに小さいの?」
「うん。新生児サイズ。」
「ってことは、このくらいの……」
湊は自分の手を広げて、
その服のサイズと比べた。
「……俺の片手で包めるかも。」
「そうだね。最初は本当に、“ちいさい命”だもん。」
「やばい、想像つかない。」
「ふふ、私も。」
ふたりで顔を見合わせて笑った。
この街に来たばかりの頃は、
こんな日が来るなんて、想像すらできなかった。
⸻
ベビーベッド、哺乳瓶、オムツ入れ。
少しずつ揃えていくたびに、
ふたりの部屋が“家族の家”になっていく感覚があった。
「ここに、あの子が眠るんだね。」
「うん。」
「……まだ信じられない。」
「でも、楽しみだね。」
それは、ふたりにとって初めて“未来の部屋”を想像する時間だった。
⸻
夜。
湊と一緒に、家族へのビデオ通話をした。
「……ええ!?ほんとに!?」
湊の母の第一声に、ふたりして吹き出した。
「まさか海外で初孫の話聞くとは思わなかったよ~!」
主人公の両親も、日本で涙ぐみながら喜んでくれた。
「そっちにはすぐ行けないけど……いつか絶対会いに行くからね。」
「うん、待ってる。」
通話を終えたあと、湊がぽつりと言った。
「俺さ、家族って言葉にずっと自信なかった。」
「……なんで?」
「子どもの頃、両親がいつも喧嘩しててさ。
“家族”って窮屈なものだって思ってた。」
「……うん。」
「でも、君と一緒にいて思った。
家族って、“選び続けること”なんだって。」
「選び続ける……?」
「一緒にいることを、支え合うことを、
毎日ちゃんと“選ぶ”ことが、家族を作るってことなんだなって。」
私は、じんわり胸が熱くなった。
「……湊となら、それができる気がするよ。」
湊が、そっと私の手を取った。
「一緒に、家族をつくっていこう。」
「うん。」
⸻
その夜、ふたりで名前の話になった。
「男の子だったら?」
「響きの強い名前がいいな。……“悠真”とか?」
「いいかも。“悠々と、真っ直ぐに”か。」
「うん、かっこいいじゃん。」
「女の子だったら?」
「……“結”とかどう?」
「“結ぶ”?“ゆい”?」
「うん。人との縁も、ふたりの想いも、全部結んでくれるような。」
湊はしばらく黙って、それからふわっと笑った。
「君の名前センス、最高かも。」
「でしょ?」
「どっちが来ても、嬉しいな。」
「うん。」
名前のない日々に、
ふたりで少しずつ“意味”をつけていく。
それは、かけがえのない時間だった。
⸻
出産予定日まで、あと1ヶ月。
主人公のお腹はふっくらと大きくなり、
動くたびに赤ちゃんが足を伸ばすような感覚がある。
「……動いた?」
「うん、さっきからポコポコって。」
湊が、そっと耳を寄せた。
「もしもし、パパですよ~。」
「ふふ……」
「元気そうでよかった。」
湊の声が、なんだか優しくて、
私は思わず泣きそうになった。
「ねえ、湊。」
「ん?」
「“生まれる”ってさ、ゴールじゃないんだよね。」
「うん。」
「スタートなんだよね。」
湊は頷いた。
「そう。俺たちの“生きていく”が、また始まる。」
「うん。……楽しみだね。」
湊は、私の額にそっとキスをした。
「どんな人生が待ってても、
きっと俺たちなら、乗り越えていける。」
「うん、きっと。」
今までもそうだったように、
これからも、手を取り合って歩いていける。
この子のためにも、
ふたりがまず、“ちゃんと笑って”生きていこう。
未来がどう転んでも。
それでも、また、君と生きていく。
主人公が指差したのは、
ロサンゼルスのベビーブティックに並んだ、
小さなオーバーオール。
湊は、そのサイズに目を丸くした。
「……こんなに小さいの?」
「うん。新生児サイズ。」
「ってことは、このくらいの……」
湊は自分の手を広げて、
その服のサイズと比べた。
「……俺の片手で包めるかも。」
「そうだね。最初は本当に、“ちいさい命”だもん。」
「やばい、想像つかない。」
「ふふ、私も。」
ふたりで顔を見合わせて笑った。
この街に来たばかりの頃は、
こんな日が来るなんて、想像すらできなかった。
⸻
ベビーベッド、哺乳瓶、オムツ入れ。
少しずつ揃えていくたびに、
ふたりの部屋が“家族の家”になっていく感覚があった。
「ここに、あの子が眠るんだね。」
「うん。」
「……まだ信じられない。」
「でも、楽しみだね。」
それは、ふたりにとって初めて“未来の部屋”を想像する時間だった。
⸻
夜。
湊と一緒に、家族へのビデオ通話をした。
「……ええ!?ほんとに!?」
湊の母の第一声に、ふたりして吹き出した。
「まさか海外で初孫の話聞くとは思わなかったよ~!」
主人公の両親も、日本で涙ぐみながら喜んでくれた。
「そっちにはすぐ行けないけど……いつか絶対会いに行くからね。」
「うん、待ってる。」
通話を終えたあと、湊がぽつりと言った。
「俺さ、家族って言葉にずっと自信なかった。」
「……なんで?」
「子どもの頃、両親がいつも喧嘩しててさ。
“家族”って窮屈なものだって思ってた。」
「……うん。」
「でも、君と一緒にいて思った。
家族って、“選び続けること”なんだって。」
「選び続ける……?」
「一緒にいることを、支え合うことを、
毎日ちゃんと“選ぶ”ことが、家族を作るってことなんだなって。」
私は、じんわり胸が熱くなった。
「……湊となら、それができる気がするよ。」
湊が、そっと私の手を取った。
「一緒に、家族をつくっていこう。」
「うん。」
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その夜、ふたりで名前の話になった。
「男の子だったら?」
「響きの強い名前がいいな。……“悠真”とか?」
「いいかも。“悠々と、真っ直ぐに”か。」
「うん、かっこいいじゃん。」
「女の子だったら?」
「……“結”とかどう?」
「“結ぶ”?“ゆい”?」
「うん。人との縁も、ふたりの想いも、全部結んでくれるような。」
湊はしばらく黙って、それからふわっと笑った。
「君の名前センス、最高かも。」
「でしょ?」
「どっちが来ても、嬉しいな。」
「うん。」
名前のない日々に、
ふたりで少しずつ“意味”をつけていく。
それは、かけがえのない時間だった。
⸻
出産予定日まで、あと1ヶ月。
主人公のお腹はふっくらと大きくなり、
動くたびに赤ちゃんが足を伸ばすような感覚がある。
「……動いた?」
「うん、さっきからポコポコって。」
湊が、そっと耳を寄せた。
「もしもし、パパですよ~。」
「ふふ……」
「元気そうでよかった。」
湊の声が、なんだか優しくて、
私は思わず泣きそうになった。
「ねえ、湊。」
「ん?」
「“生まれる”ってさ、ゴールじゃないんだよね。」
「うん。」
「スタートなんだよね。」
湊は頷いた。
「そう。俺たちの“生きていく”が、また始まる。」
「うん。……楽しみだね。」
湊は、私の額にそっとキスをした。
「どんな人生が待ってても、
きっと俺たちなら、乗り越えていける。」
「うん、きっと。」
今までもそうだったように、
これからも、手を取り合って歩いていける。
この子のためにも、
ふたりがまず、“ちゃんと笑って”生きていこう。
未来がどう転んでも。
それでも、また、君と生きていく。
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