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馬で街道を駆ける。乾いた空気で喉がひりつく。
乗馬は生家にいたころ習ったきりだったから、何日も続けての旅程はかなりこたえた。馬も自分も魔法でだましだまし進んで、ようやくディルフィーとの国境付近までやってきた。国境に設置された簡素な建物が見える。
乗合馬車で向かったウェスタよりは速いだろうが、準備にかかった時間のせいで追いつけなかったのが口惜しい。
アステリア王女が言うには、ディルフィーでは最近魔力のない者の拉致が密かな問題となっているらしい。
国境に無許可で設置された魔導具によって、入国する者の魔力量が測定される。そこで発見される魔力の全くない人が、首謀者に雇われた暴漢の手によって拐かされてしまうのだ。
この問題が公になっていないのには理由がある。ひとつめは、ディルフィーでも魔力のない者は軽んじられているということ。もうひとつは……拉致された者の行き先が、ディルフィー王宮に所属する魔法師の元であることだ。
彼らは首謀者が獲物を献上することを良しとし、魔導具を下げ渡しているという。決して少なくない金も動いている……最低だな。
魔法師の権力はどの国でも一定以上あるため、大きな問題として取り上げ調査に乗り出すことが難しいのだ。
俺は馬を降りて建物へと入り、国境を守る兵士に通行証を見せた。ディルフィーとアクロッポリは友好国のため、必要以上に誰何されることはない。そのまま歩いて国境を抜けようとしたときだった。
パリン! と近くから音がして、なにかが壊れた気配がする。やはり、魔導具は近くにあったみたいだ。建物の向こう側から何人かの男たちが出てきたが、それに構わず壊れた測定器を見つけ出す。中身の魔力と仕掛けをさっと分析した。
ふん、大したことないな。分かるのは魔力があるかないか、最低限の情報ってことか。俺の魔力には耐えきれなかったみたいだが……奴らの目的を遂行するための道具としては、十分だ。
俺はそのまま建物をでて馬に騎乗しようとしたが、肩に手を掛けられた。三人いる男たちに囲まれているものの、魔法で引き倒し拘束するまではあっという間だった。
「おい。ここ数日で男をひとり拉致したな」
「は! なんのことだか……ッうぐぅ」
「茶髪の美人だ。お前たちの目的に合う人物なんて、そう頻繁に見つかるものじゃないだろう。絶対にお前は知っている。……白状するなら、命だけは助けてやる」
「ヒィィッ! や、やめてくれ……!」
腰元から取り出した短剣を首に当て容赦なく力を込めると、ツーっと血が伝う。その血を見せつけるようにしてやれば、青褪めた男は怯えてべらべらと喋りだした。
ウェスタは二日前にここを通過しようとして、こいつらに拉致され首謀者の元へ送り届けられたらしい。……聞いてよかった。魔導具の魔力を辿って王宮へ向かおうとしていたところだったのだ。
首謀者の名前は聞いたことがなかったが、貴族の女らしかった。まずは献上品を検分してから魔法師へ引き渡すらしい。売る、という方が正しいか。どいつもこいつも腐っている。
現時点でウェスタに傷をつけられることはないだろう。だが、それ以外はなにをされるのか。想像するだけで耐え難い。
とにかく、魔法師の元へ送り届けられる前に追いつかなければ。
あまり派手なことはするなと国王から伝言があったが、ウェスタを前にして自分がどんな行動をとるかはわからない。相手次第だ。
せめて免罪符が間に合えばいいが――
――――――――――
いつもお読みいただきありがとうございます。
今週は月水木のみ夕方1回の更新です。それ以外は1日2回更新します。
乗馬は生家にいたころ習ったきりだったから、何日も続けての旅程はかなりこたえた。馬も自分も魔法でだましだまし進んで、ようやくディルフィーとの国境付近までやってきた。国境に設置された簡素な建物が見える。
乗合馬車で向かったウェスタよりは速いだろうが、準備にかかった時間のせいで追いつけなかったのが口惜しい。
アステリア王女が言うには、ディルフィーでは最近魔力のない者の拉致が密かな問題となっているらしい。
国境に無許可で設置された魔導具によって、入国する者の魔力量が測定される。そこで発見される魔力の全くない人が、首謀者に雇われた暴漢の手によって拐かされてしまうのだ。
この問題が公になっていないのには理由がある。ひとつめは、ディルフィーでも魔力のない者は軽んじられているということ。もうひとつは……拉致された者の行き先が、ディルフィー王宮に所属する魔法師の元であることだ。
彼らは首謀者が獲物を献上することを良しとし、魔導具を下げ渡しているという。決して少なくない金も動いている……最低だな。
魔法師の権力はどの国でも一定以上あるため、大きな問題として取り上げ調査に乗り出すことが難しいのだ。
俺は馬を降りて建物へと入り、国境を守る兵士に通行証を見せた。ディルフィーとアクロッポリは友好国のため、必要以上に誰何されることはない。そのまま歩いて国境を抜けようとしたときだった。
パリン! と近くから音がして、なにかが壊れた気配がする。やはり、魔導具は近くにあったみたいだ。建物の向こう側から何人かの男たちが出てきたが、それに構わず壊れた測定器を見つけ出す。中身の魔力と仕掛けをさっと分析した。
ふん、大したことないな。分かるのは魔力があるかないか、最低限の情報ってことか。俺の魔力には耐えきれなかったみたいだが……奴らの目的を遂行するための道具としては、十分だ。
俺はそのまま建物をでて馬に騎乗しようとしたが、肩に手を掛けられた。三人いる男たちに囲まれているものの、魔法で引き倒し拘束するまではあっという間だった。
「おい。ここ数日で男をひとり拉致したな」
「は! なんのことだか……ッうぐぅ」
「茶髪の美人だ。お前たちの目的に合う人物なんて、そう頻繁に見つかるものじゃないだろう。絶対にお前は知っている。……白状するなら、命だけは助けてやる」
「ヒィィッ! や、やめてくれ……!」
腰元から取り出した短剣を首に当て容赦なく力を込めると、ツーっと血が伝う。その血を見せつけるようにしてやれば、青褪めた男は怯えてべらべらと喋りだした。
ウェスタは二日前にここを通過しようとして、こいつらに拉致され首謀者の元へ送り届けられたらしい。……聞いてよかった。魔導具の魔力を辿って王宮へ向かおうとしていたところだったのだ。
首謀者の名前は聞いたことがなかったが、貴族の女らしかった。まずは献上品を検分してから魔法師へ引き渡すらしい。売る、という方が正しいか。どいつもこいつも腐っている。
現時点でウェスタに傷をつけられることはないだろう。だが、それ以外はなにをされるのか。想像するだけで耐え難い。
とにかく、魔法師の元へ送り届けられる前に追いつかなければ。
あまり派手なことはするなと国王から伝言があったが、ウェスタを前にして自分がどんな行動をとるかはわからない。相手次第だ。
せめて免罪符が間に合えばいいが――
――――――――――
いつもお読みいただきありがとうございます。
今週は月水木のみ夕方1回の更新です。それ以外は1日2回更新します。
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