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感謝の番外編
2.
子どもを産んでからしばらく夫婦の営みができなくて、身体が回復しても今度は育児に追われてそれどころじゃなかった。男のオメガでも母乳が出る人はいるみたいだけど、おれは出なかったから乳母に任せていたのにこの体たらく。
アヴェンティーノ伯爵家ほどの家なら、育児よりもどんどん子どもを産むことが普通は求められるだろう。しかしマウォルス様はおれの、なるべく自分の手で育てたいという願いを優先してくれた。
騎士の仕事も忙しいはずなのに、隙間を縫って育児休暇を何度も取ってくれた。こんなにもできた旦那さま、そういないでしょ?
おかげでおれたち夫夫は、子どもの成長を間近で見るという幸せを享受できた。おかげで毎日へろへろだったけど。
歩き出すのも早かったティティを追いかけ回し、気づけば狭いところに隠れているトゥーノを探し出し……おれは小柄なせいか、なかなか体力がつかないのだ。いつも寝かしつけるのが早いかおれが寝落ちするのが早いか。
しかも育児中は何度か体調を崩してしまったりした。ただ疲れが溜まっていただけなのに、おれの両親は病気で早逝しているからマウォルス様は過剰に心配した。あのときは屋敷中がお大騒ぎだったなぁ……ごめんなさい。
そんなこんなで、寝台での夫婦らしい触れ合いは長らくなかったのだ。だんだん育児のペースに慣れてきて、おれも自分の身体が限界を迎える前に人へ任せられるようになった。
元気になったけど、もう、マウォルス様はおれに触れてくれないかもしれない。なかなかそんな雰囲気にならなかったし、母としてのおれを毎日見ていたらもう抱きたいなんて思わなくなったかも。そんな不安を抱えてしばらく過ごしていた。
それで――急に発情期が再開して、胸に抱えていた不安が吹き飛ぶくらい激しく、ときに甘く、マウォルス様に抱かれたのだ。
番のくせにじれじれしてしまったことは情けないが、それ以来おれたちはまた、夜の時間も仲良しになったのである。
でも……マウォルス様に寝室へと運ばれながら考える。まだ、夜の時間には早いよね!?
「ちょ、ちょっとマルス様。これから家族でご飯でしょ?あっ、まだ騎士服だし……着替えて!」
「む……」
「ぁんっ。服の中に手を入れないでってば!まだ、だめ~~!!」
「まぁす、だめ!ごはん!」
「ママ……だっこ」
マウォルス様との攻防は、ティティの突撃とトゥーノの愛嬌によって援護され、おれが勝利した。トゥーノを抱っこしてティティと手を繋ぎながら食堂へと向かう。
マウォルス様が遅くならない日は家族そろってご飯を食べるのが習慣だ。
おれはママ、マウォルス様はマースと子どもたちから呼ばれている。それはおれが彼をマルス様、と呼ぶのを舌っ足らずなトゥーノが真似したからに他ならない。
マウォルス様自身は何度かパパと呼ばせようとしていたけど、なぜかそっちが二人の間で定着してしまったのだ。おれは可愛いからいいと思うけどな~。
アヴェンティーノ伯爵家ほどの家なら、育児よりもどんどん子どもを産むことが普通は求められるだろう。しかしマウォルス様はおれの、なるべく自分の手で育てたいという願いを優先してくれた。
騎士の仕事も忙しいはずなのに、隙間を縫って育児休暇を何度も取ってくれた。こんなにもできた旦那さま、そういないでしょ?
おかげでおれたち夫夫は、子どもの成長を間近で見るという幸せを享受できた。おかげで毎日へろへろだったけど。
歩き出すのも早かったティティを追いかけ回し、気づけば狭いところに隠れているトゥーノを探し出し……おれは小柄なせいか、なかなか体力がつかないのだ。いつも寝かしつけるのが早いかおれが寝落ちするのが早いか。
しかも育児中は何度か体調を崩してしまったりした。ただ疲れが溜まっていただけなのに、おれの両親は病気で早逝しているからマウォルス様は過剰に心配した。あのときは屋敷中がお大騒ぎだったなぁ……ごめんなさい。
そんなこんなで、寝台での夫婦らしい触れ合いは長らくなかったのだ。だんだん育児のペースに慣れてきて、おれも自分の身体が限界を迎える前に人へ任せられるようになった。
元気になったけど、もう、マウォルス様はおれに触れてくれないかもしれない。なかなかそんな雰囲気にならなかったし、母としてのおれを毎日見ていたらもう抱きたいなんて思わなくなったかも。そんな不安を抱えてしばらく過ごしていた。
それで――急に発情期が再開して、胸に抱えていた不安が吹き飛ぶくらい激しく、ときに甘く、マウォルス様に抱かれたのだ。
番のくせにじれじれしてしまったことは情けないが、それ以来おれたちはまた、夜の時間も仲良しになったのである。
でも……マウォルス様に寝室へと運ばれながら考える。まだ、夜の時間には早いよね!?
「ちょ、ちょっとマルス様。これから家族でご飯でしょ?あっ、まだ騎士服だし……着替えて!」
「む……」
「ぁんっ。服の中に手を入れないでってば!まだ、だめ~~!!」
「まぁす、だめ!ごはん!」
「ママ……だっこ」
マウォルス様との攻防は、ティティの突撃とトゥーノの愛嬌によって援護され、おれが勝利した。トゥーノを抱っこしてティティと手を繋ぎながら食堂へと向かう。
マウォルス様が遅くならない日は家族そろってご飯を食べるのが習慣だ。
おれはママ、マウォルス様はマースと子どもたちから呼ばれている。それはおれが彼をマルス様、と呼ぶのを舌っ足らずなトゥーノが真似したからに他ならない。
マウォルス様自身は何度かパパと呼ばせようとしていたけど、なぜかそっちが二人の間で定着してしまったのだ。おれは可愛いからいいと思うけどな~。
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