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本編
32.小憎らしいバディ
しおりを挟む宰相であるハニエルが復帰して、レーシュたち補佐官も一旦通常業務に戻っていた。
ハニエルが働きすぎないよう見張ることも、こっそりと毎日のルーティンに加えている。定期的にお茶に誘ったり、隈ができていないかジッと近くから見つめたり。
ちなみにレーシュがそれをやると、ハニエルはぽっと頬を赤らめて「ラツィエルに怒られちゃうよぉ」とすぐに両手で顔を隠してしまうので難易度は高めだ。
そんな折、先日の極秘調査に進展があったから報告したいと、補佐官たちは宰相執務室に呼ばれた。個々が通りがかりに仕事を言いつけられることは多々あれど、四人が揃って呼ばれることはそうそうない。
テットやビナーは「なにかしら」「な、なんだろ」とわかりやすく緊張して、ミンテとレーシュは「出どころ突き止めたのかな!」とわくわくしている。
しかしまぁ悪い奴らというのは、そう簡単に見つかるところにはいないらしい。
「みんなのお陰で、調査は大いに進んだ。イェツィラーからはティックン辺境伯領とフツパー男爵領を経由して輸入品が入ってきているが、辺境伯は慎重な人物だ。内容物の検査には植物に詳しい人も配置しているというから、麻薬があれば気づいてくれるだろう。怪しいのはフツパー男爵だな。昨日ようやく手紙の返信があったが、『よく分からない薬草などうちの領地を通すわけがない。きちんと目録は確認している』とのことだ」
「現物まで確認していないということですね」
ミンテが眉根に皺を寄せて相槌を打ち、ハニエルは深く頷く。
「君たちの調査結果からも、ここ数ヶ月で男爵領を経由する物量に対し、不自然に輸入品の金額が増加していることがわかっている。あとは現地で対象物を見つけるよう、国境警備を担当する第三騎士団に指示した。次に流通先だが……、王都の貴族が通うサロンで手に入るらしいと裏情報が入った」
「王都で!?」
「どうやら盤上遊戯をしながら酒を飲む場所と見せかけて、麻薬を提供しながら賭博をやってるらしいな。どこかの貴族の子弟が金を使い果たして家宝を売ったとか女を売ったとか……噂がある。下町にも密売人の情報はあるが、サロンの方が動く金額は遥かに大きい。元締めとなっている貴族に近いだろう」
「…………」
四人とも青褪め、執務室内はしんと静まり返っている。
なんということだろう。レーシュは立って話を聞きながら、足元から迫り上がってくるような恐怖を感じていた。
麻薬といえば、路地裏で小汚い売人が抜けた歯の隙間から「へへ、楽しくなれる薬はいらないかい」とか言いながら疲れた目をした路上生活者に売りつけるイメージだった。
貧しい人々から平民のあいだで蔓延し、そこから貴族階級にも、いつのまにか王侯貴族にまで広がり国が崩壊したというのが、過去同じ大陸であった話だ。
しかし魔の手は路地裏を飛び越し、もうそこまで迫ってきている。
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