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短編です。現代もの×サラリーマン同士のすれ違いラブです。
全13話となりますのでよろしくお願いいたします。
――――――――――
金曜日の繁華街はスーツを着た酔っぱらいのサラリーマンで賑わっていた。地下の居酒屋から階段を上って細い通りに出ると、冷たいはずの空気は心地よく身体を包む。俺も大概酔っぱらっているらしい。
(ラストオーダーで余った酒をもったいないって飲ませるなよ。誰があんな頼んだんだ……)
気に入っているからといって自分を犠牲にした上司に、内心恨み言をこぼす。
全員が出てくるのをぼんやり待っていると、喫煙所から戻ってきた後輩の純希と目が合った。
スタイルのいい長身に、涼しげな切れ長の目が印象的な甘いマスク。いつ見ても嫌味なほど美形な男だ。
すかさず女性の同僚たちが群がり、「二次会行きますよね?」と声を掛けている。
「は~い、みなさ~ん! 二次会行く人はこっちについてきてくださ~い!」
最後に出てきた幹事が、手配してあった二次会の店にみんなを誘導している。ほとんどのメンバーがそれについて行こうと足の方向を変えた矢先、「え~!」と一部から非難の声が上がった。
純希が帰ると聞いて、女性たちはがっかりしたらしい。二十代後半、独身のイケメンと二次会や三次会でお近づきになりたいと考えていた人は少なくないのだろう。
「え、笹原も帰るん?」
「うん。ちょっと予定があって」
「あ~~っ、彼女さんと会うんやろ! くそ~羨ましいなぁ。おれにもいい子紹介してって言っといてな!」
「……おー。じゃ、行くわ」
俺も近くの人にだけ挨拶をして輪から離れようとすると、同期の中本が絡んできた。彼女と会う予定はないが、否定もしないでおく。
こんなことを繰り返しているせいでいつも紹介しろとせがまれるが、その日は一生来ないだろう。ごめん中本。
駅の方へ向かうと見せかけて、すぐにタクシーを捕まえた。告げた先はいつものホテルだ。
スマホを見ればSNSのメッセージが入っている。向こうもタクシーに乗ったらしいから、ほぼ同時に到着するだろう。
ひとつのタクシーで向かえば節約になるけど、あの辺りには同じ会社の人間が他にもいたと思う。下手にバレるリスクは避けたい。
「お疲れさまです、笹原先輩。……顔、赤いですね。大丈夫ですか? 最後結構飲まされてませんでした?」
「……大丈夫だ」
俺がタクシーを降りると、先に着いていたらしい純希がホテルの影から出てくる。後輩の顔で俺のことを心配してくるから、嫌味だなと思いつつ足を止めずに入口へと向かった。
大丈夫だと言ったのは『これからセックスできるくらいには泥酔していない』という意味だ。
時間をかけずに部屋を選んで狭いエレベーターに乗り込むと、純希がいきなり深いキスを仕掛けてきた。待ちきれないと伝わってくる性急さに、俺の身体も一気に温度を上げた。狭いエレベーター内の湿度が増す。
「んっ……おい、がっつくなよ。あと煙草臭い」
「すみません。でも久しぶりだから……楽しみにしてました」
「セフレ相手によく言うよ。純希の顔ならいくらでも相手が見つかるだろ?」
「…………」
興奮に眦を赤く染めて、女性がキャーキャー言いそうな顔で純希は濡れた俺の唇を指で拭う。何か言いたげな目をしているが、俺たちがセフレという関係なのは紛れもない事実だ。
ゲイ向けのマッチングアプリで出会った俺たちは、ありがちなセフレという関係に落ち着いた。その後しばらくして、俺の勤めている会社に純希が中途入社してきたのだ。
恐るべき偶然にお互い驚いたものの、セフレ解消に至るほどの理由にはならなかった。というか主に俺が、純希を離したくないと思っていたのは秘密。
甘い前戯もない、性急に繋がるだけの関係を続けてもうすぐ一年。激しいけれど絶対に俺の身体を傷つけず、言葉の端々に優しさを忍ばせてくる好みど真ん中の男に、惚れるなという方が無理な話だと思う。
(セフレなのに惚れるなんて馬鹿だよな? でも惚れた時点でヤれる関係って、最高……)
全13話となりますのでよろしくお願いいたします。
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金曜日の繁華街はスーツを着た酔っぱらいのサラリーマンで賑わっていた。地下の居酒屋から階段を上って細い通りに出ると、冷たいはずの空気は心地よく身体を包む。俺も大概酔っぱらっているらしい。
(ラストオーダーで余った酒をもったいないって飲ませるなよ。誰があんな頼んだんだ……)
気に入っているからといって自分を犠牲にした上司に、内心恨み言をこぼす。
全員が出てくるのをぼんやり待っていると、喫煙所から戻ってきた後輩の純希と目が合った。
スタイルのいい長身に、涼しげな切れ長の目が印象的な甘いマスク。いつ見ても嫌味なほど美形な男だ。
すかさず女性の同僚たちが群がり、「二次会行きますよね?」と声を掛けている。
「は~い、みなさ~ん! 二次会行く人はこっちについてきてくださ~い!」
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「え、笹原も帰るん?」
「うん。ちょっと予定があって」
「あ~~っ、彼女さんと会うんやろ! くそ~羨ましいなぁ。おれにもいい子紹介してって言っといてな!」
「……おー。じゃ、行くわ」
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こんなことを繰り返しているせいでいつも紹介しろとせがまれるが、その日は一生来ないだろう。ごめん中本。
駅の方へ向かうと見せかけて、すぐにタクシーを捕まえた。告げた先はいつものホテルだ。
スマホを見ればSNSのメッセージが入っている。向こうもタクシーに乗ったらしいから、ほぼ同時に到着するだろう。
ひとつのタクシーで向かえば節約になるけど、あの辺りには同じ会社の人間が他にもいたと思う。下手にバレるリスクは避けたい。
「お疲れさまです、笹原先輩。……顔、赤いですね。大丈夫ですか? 最後結構飲まされてませんでした?」
「……大丈夫だ」
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大丈夫だと言ったのは『これからセックスできるくらいには泥酔していない』という意味だ。
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恐るべき偶然にお互い驚いたものの、セフレ解消に至るほどの理由にはならなかった。というか主に俺が、純希を離したくないと思っていたのは秘密。
甘い前戯もない、性急に繋がるだけの関係を続けてもうすぐ一年。激しいけれど絶対に俺の身体を傷つけず、言葉の端々に優しさを忍ばせてくる好みど真ん中の男に、惚れるなという方が無理な話だと思う。
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