4 / 14
4.起きたら奴隷!?
しおりを挟む僕はごろん……と冷たい床に転がり、石造りの味気ない天井を見上げていた。ここは隣国メルギトゥルの王都らしい。
酒場で酔い潰れて、目覚めたときには移動する馬車の中だった。ひどい二日酔いで死にかけたのは言うまでもない。
馬車を何度も止めてげろげろと吐き、頭痛で頭がぱっかりと割れたかと思った。
なんとか二日酔いを乗り越えげっそりした状態でたどり着いたのは、別の国。僕を運んだ髭面の商人は悪びれず、ウッキウキで説明してくれた。
どうやらメルギトゥルでは王都での闇オークションが流行中で、彼は僕を商品として出すために攫ってきたらしい。
インサニア王国では奴隷制度が禁止されている。メルギトゥル王国でも禁止されていると知識としては知っていたけれど、規律が守られるかどうかは国の威信によるのだ。
「フェレスは平民なんだろ? 喜びな。王侯貴族に買ってもらえれば、今までよりいい暮らしができることは間違いないぜ! 仲介料で、俺もがっぽり……ひひ」
「え……鉱山で死ぬまで肉体労働とかじゃないの?」
「そんな勿体ねぇ使い方誰がするかよ! お前の容姿ならたくさん可愛がってもらえるさ」
商人の話しぶりでは、メルギトゥルの王族までもが闇オークションに参加しているようだ。インサニアとは友好国でもないし腐敗している予感しかない。
けれど環境の悪い場所で強制労働につかされると思っていたから、違うと聞いてホッとした。どう頑張っても華奢な体型から逃れられないので、腕力には全く自信がないのだ。
金のある貴族に買ってもらえれば、従僕くらいにはしてもらえるかもしれない。もしかしたら下の世話もさせられるかもしれないけど……身売りの経験が役に立ちそうだ。
ちなみに金のない貴族は経験上駄目だ。使用人だって使い潰すのだから。どうにかして価格を吊り上げないと。
それにしても、商人は僕の容姿をずいぶんと買っているみたいだった。モテた試しがないため聞き間違えかと思ったが、「これは売れるぞ」と固く信じている。
商人の目が曇っているのか、もしかすると国境を越えると好かれる容姿というのも変わるのかもしれない。
僕はもう、生まれ育った国へ戻るのを諦めていた。
こんなに遠くまで来てしまえば逃げるなんてできそうにもないし、助けに来てくれそうな人もいない。天涯孤独の身、職もない人を、誰が気にかける?
きっといなくなったことに気づくのは借りているアパルトメントの家主、コルヌおばさんだけだろう。申し訳ないが、家に置いてあるお金で強制退去でもなんでもやっちゃってほしい。
帰るのは諦めた。奴隷になるのもまあ、嫌だけど致し方ない。でもせめてお金をたくさん持っている人に買ってもらって、大勢いる使用人のうちの一人になれたら楽じゃないか?
(そうだ。ここでくよくよしてたって仕方ない。よりよい奴隷生活を送るために、僕はできることをする!)
生まれ育ちが良くなかったから、不幸耐性はけっこうついている方だと思う。
僕はグッと天井に拳を突き上げ、決意を燃え上がらせた。そうと決まれば準備が必要だ。商人の目は信用できないから、この冴えない容姿をなんとかしなければ!
「おーい! おじさーん!」
「奴隷が呼び出すなよ……。なんだ?」
「僕さ、すっごい高値で買ってもらえるよう努力するから! そしたらおじさんも儲かるでしょ? だからいい衣装用意してよ」
「よし来たぁ! お前がやる気なら、俺だって考えがある。へへ……最っ高の衣装を用意してやるぜ! 史上最高値で王様に買ってもらおうな!」
攫ってくれた恨みはあるが、扱いやすい人でよかったな……と内心ほくそ笑む。
あと国王も来るの? この国終わってない?
259
あなたにおすすめの小説
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」
星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。
ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。
番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。
あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、
平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。
そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。
――何でいまさら。オメガだった、なんて。
オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。
2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。
どうして、いまさら。
すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。
ハピエン確定です。(全10話)
2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
「君と番になるつもりはない」と言われたのに記憶喪失の夫から愛情フェロモンが溢れてきます
grotta
BL
【フェロモン過多の記憶喪失アルファ×自己肯定感低め深窓の令息オメガ】
オスカー・ブラントは皇太子との縁談が立ち消えになり別の相手――帝国陸軍近衛騎兵隊長ヘルムート・クラッセン侯爵へ嫁ぐことになる。
以前一度助けてもらった彼にオスカーは好感を持っており、新婚生活に期待を抱く。
しかし結婚早々夫から「つがいにはならない」と宣言されてしまった。
予想外の冷遇に落ち込むオスカーだったが、ある日夫が頭に怪我をして記憶喪失に。
すると今まで抑えられていたαのフェロモンが溢れ、夫に触れると「愛しい」という感情まで漏れ聞こえるように…。
彼の突然の変化に戸惑うが、徐々にヘルムートに惹かれて心を開いていくオスカー。しかし彼の記憶が戻ってまた冷たくされるのが怖くなる。
ある日寝ぼけた夫の口から知らぬ女性の名前が出る。彼には心に秘めた相手がいるのだと悟り、記憶喪失の彼から与えられていたのが偽りの愛だと悟る。
夫とすれ違う中、皇太子がオスカーに強引に復縁を迫ってきて…?
夫ヘルムートが隠している秘密とはなんなのか。傷ついたオスカーは皇太子と夫どちらを選ぶのか?
※以前ショートで書いた話を改変しオメガバースにして公募に出したものになります。(結末や設定は全然違います)
※3万8千字程度の短編です
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる