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4.起きたら奴隷!?
僕はごろん……と冷たい床に転がり、石造りの味気ない天井を見上げていた。ここは隣国メルギトゥルの王都らしい。
酒場で酔い潰れて、目覚めたときには移動する馬車の中だった。ひどい二日酔いで死にかけたのは言うまでもない。
馬車を何度も止めてげろげろと吐き、頭痛で頭がぱっかりと割れたかと思った。
なんとか二日酔いを乗り越えげっそりした状態でたどり着いたのは、別の国。僕を運んだ髭面の商人は悪びれず、ウッキウキで説明してくれた。
どうやらメルギトゥルでは王都での闇オークションが流行中で、彼は僕を商品として出すために攫ってきたらしい。
インサニア王国では奴隷制度が禁止されている。メルギトゥル王国でも禁止されていると知識としては知っていたけれど、規律が守られるかどうかは国の威信によるのだ。
「フェレスは平民なんだろ? 喜びな。王侯貴族に買ってもらえれば、今までよりいい暮らしができることは間違いないぜ! 仲介料で、俺もがっぽり……ひひ」
「え……鉱山で死ぬまで肉体労働とかじゃないの?」
「そんな勿体ねぇ使い方誰がするかよ! お前の容姿ならたくさん可愛がってもらえるさ」
商人の話しぶりでは、メルギトゥルの王族までもが闇オークションに参加しているようだ。インサニアとは友好国でもないし腐敗している予感しかない。
けれど環境の悪い場所で強制労働につかされると思っていたから、違うと聞いてホッとした。どう頑張っても華奢な体型から逃れられないので、腕力には全く自信がないのだ。
金のある貴族に買ってもらえれば、従僕くらいにはしてもらえるかもしれない。もしかしたら下の世話もさせられるかもしれないけど……経験が役に立ちそうだ。
ちなみに金のない貴族は経験上駄目だ。使用人だって使い潰すのだから。どうにかして価格を吊り上げないと。
それにしても、商人は僕の容姿をずいぶんと買っているみたいだった。モテた試しがないため聞き間違えかと思ったが、「これは売れるぞ」と固く信じている。
商人の目が曇っているのか、もしかすると国境を越えると好かれる容姿というのも変わるのかもしれない。
僕はもう、生まれ育った国へ戻るのを諦めていた。
こんなに遠くまで来てしまえば逃げるなんてできそうにもないし、助けに来てくれそうな人もいない。天涯孤独の身、職もない人を、誰が気にかける?
きっといなくなったことに気づくのは借りているアパルトメントの家主、コルヌおばさんだけだろう。申し訳ないが、家に置いてあるお金で強制退去でもなんでもやっちゃってほしい。
帰るのは諦めた。奴隷になるのもまあ、嫌だけど致し方ない。でもせめてお金をたくさん持っている人に買ってもらって、大勢いる使用人のうちの一人になれたら楽じゃないか?
(そうだ。ここでくよくよしてたって仕方ない。よりよい奴隷生活を送るために、僕はできることをする!)
生まれ育ちが良くなかったから、不幸耐性はけっこうついている方だと思う。
僕はグッと天井に拳を突き上げ、決意を燃え上がらせた。そうと決まれば準備が必要だ。商人の目は信用できないから、この冴えない容姿をなんとかしなければ!
「おーい! おじさーん!」
「奴隷が呼び出すなよ……。なんだ?」
「僕さ、すっごい高値で買ってもらえるよう努力するから! そしたらおじさんも儲かるでしょ? だからいい衣装用意してよ」
「よし来たぁ! お前がやる気なら、俺だって考えがある。へへ……最っ高の衣装を用意してやるぜ! 史上最高値で王様に買ってもらおうな!」
攫ってくれた恨みはあるが、扱いやすい人でよかったな……と内心ほくそ笑む。
あと国王も来るの? この国終わってない?
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