セフレのはずの宰相が国家規模で僕を追いかけてくる

おもちDX

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 奴隷の扱いは粗悪というほどでもなかった。商人らしく珍しい物や人を手当たり次第集めていて、貴重なものは大切に扱っているつもりのようだ。
 まぁ、いい商品になると思えば他国から人を攫ってきたり、戦争中の他国からどさくさに紛れて国宝級の聖遺物を盗んできたりと善性にはかなり欠けるが。

 闇オークションが開催される日まで暇を持て余して商人やその部下と会話していると、ひとつ分かったことがある。どうやらメルギトゥルは今、インサニア王国ともう一つの隣国トリスティス王国から進軍されている最中のようだ。

 え!? と大きな声を上げてしまったが、商人たちは「まあ、国が潰れれば俺たちは別の国で商売するだけだ」と気にしていない。
 そんな危機感がなくていいのだろうか。外には出られないため、王都の雰囲気などはわからない。

 僕が一番びっくりしてしまって、しばらく考え込んでいた。なぜなら数週間前まで政治の中枢ともいえる場所にいたのに、他国へ攻め込むなんて話は聞いていなかったからだ。

 インサニア王国は比較的豊かな国で、好戦的でもない。メルギトゥル王国に攻め込んでも、あまりメリットがあるとは思えない。
 しかし理由もなく戦争を起こすなんてもっとあり得ないから、はっきりとした要因があるのだろう。メルギトゥルが宣戦布告をしたとか、インサニアにとってを奪ったとか。

(なんだろ……主要な辺境の砦とか、王族の誘拐とか? トリスティスはインサニアの友好国だから、協力しているだけの線もあるな)

 こうなってしまったら、王族に買われるのはまずい。二国から進軍されてメルギトゥルが無事だとは到底思えないからだ。国の動向が気になるのはただの職業病だと自分に言い訳をして、僕は当たり障りのない貴族に買われることを切に願った。


 ◇


 国の中心にある王都の一市民には、戦争なんて実感がない。けれど徐々に軍が王都へ近づいてきているとあって、噂を聞くことはあった。
 本当にこの国は大丈夫なのか。僕は闇オークションの開催さえ危ぶんでいたが、中止の知らせは来ずついに当日を迎えてしまった。

「……すげえ」
「どうだ! この見えそうで見えない透け感! 高級娼館に金を払ってまで職人を紹介してもらったんだ」

 目の前には透けるほど薄い生地を何枚にも重ねた服(?)があった。
 南国の踊り子のような衣装で、上は胸元だけを隠す布地を巻きへそは丸出し、下はゆったりとしたパンツスタイルだ。パンツ部分は脚の線が見えるほど薄いが、その下に小さな下履きを履く。

 よ~く見れば大事な部分も少し透けて見えそうなのだけれど、会場の薄暗さと舞台上だけを照らす照明の下でならぎりぎり見えないと太鼓判を押された。
 自慢げな商人に対し、僕は血の気が引いて倒れそうだった。
 
(こんなの、まんま性奴隷じゃん!?)

 まずい。そういう役目もあると考えていたとはいえ、いいとこの使用人みたいな衣装を期待していた。完全に見解の不一致が起きていたと、今さら知っても遅い。
 商人のおじさんは鼻の下を伸ばして「さあ、着てみてくれ!」と促してくる。

 もう会場の裏に来ていて、自分の順番が回ってくるのを待つだけだ。ここで抵抗して、どうなる?
 ……どうにもならないな。着るか。

 諦めの早さは僕の長所だと言えよう。さっと諦めて、そこから出来ることを探すしかない。
 僕はパパッと着替えて、隅に置かれていた鏡で自分の姿を確認した。

「うわあ……」

(冴えない男がこれを着て、本当に魅力的に見えると思ったのか? あの商人、絶対に儲かってないだろ)

 髪は下ろしたほうがいいと言われていたため肩下までふわふわと覆っている。この纏まりの悪い髪をカルディア様はよく「可愛い」と言ってくれていたから、自分で思っているよりいい髪なのかもしれない。

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