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さて、どうしようか。この格好で一気にハードルが上がってしまったが、当初の目標はまだ諦めていない。
王族以外の、金のありそうな貴族に買ってもらう。ここでプラスしたい条件は変態らしくない奴だ。色に溺れていそうな奴は却下!
たぶんだけど、見た目でだいたい分かるだろう。これでも多くの貴族を見てきたのだ。
それで、良さそうな人を見つけたら『買って』アピールをする。採用面接ばりに自分のできることをアピールすれば、使用人として役に立ちそうだと思ってもらえる……と思う。
闇オークションがどんなものか全く想像がつかず、やぶれかぶれの作戦を立てて控え室に戻る。
商人のおじさんは自分の番が来るときのために他の商品を手入れしていた。鳥籠に入れられた危険生物に指定されているカラフルな鳥が、「ガァッ」と鳴いて商人の手を食べようとしていた。
「おじさん! どんな人が来てるか教えて!」
「おっふ……想像以上に似合うじゃねぇか……」
商人は僕を見て鼻と口を押さえた。一瞬赤いものが鼻から垂れたように見えたけど気のせいだっただろうか。しかしそれどころじゃないと、僕は会場が見える舞台袖までぐいぐい商人を引っ張っていく。
「えっ」
闇オークションの会場は想像よりも遥かに広かった。ここへ運ばれてくるときは外を見せてもらえなかったのだ。
広い舞台と、それを半円状に囲む客席は階段状に上の方まで広がっている。強く照らされている舞台の中心以外は暗く、この角度からは客席も手前の方しか見えない。
嫌な予感がする。お目当ての貴族が奥の方にいたら、アピールしても届かないんじゃ……
「よかったな。前から二番目の席にいるのがこの国の王様だ」
「…………」
護衛で囲まれた中に、でっぷりと太った男が座っていた。豪華すぎる衣装が舞台上の光を受けてテラテラと輝いている。闇オークションだというのに堂々としすぎじゃないだろうか。
膝の上には童顔かつ豊満な身体をした女性を乗せていて、べたべた触って下卑た嗤いを浮かべている。ぞわ、と鳥肌が立つ。
「フェレスの順番は最後だ。楽しみに待ってろ!」
商人は目が合うだけで呪われそうな人形を持って舞台の方へ出ていった。
最悪の情報だけ得てしまい、聞かなきゃよかったと思った。でも、舞台に出れば真っ先に目に入ってくるのはあの国王だろう。
(やばい……)
あんなやつに買われるくらいなら死んだ方がマシかもしれない。でも膝に乗せていたような女性が好みなら、自分はかけ離れている。
いっそ他国の軍が王都に突入してくれないだろうか……などと現実逃避しているうちに、ついに自分の番が来てしまった。
「さぁっ、本日最後の出品は……みなさんお待ちかね、若い男の奴隷です! 見れば分かるでしょう。陶器のように滑らかな肌、柔らかな髪、ほっそりとした手足。顔立ちは天使のようで、極上の奴隷と断言できます。手に入れればあなたの好きに……。では、連れてきていただきましょう!」
「ちょっと……うわっ」
簡易的な檻に入れられた僕は、商人とその部下によって舞台の真ん中へと運ばれた。聞こえてきた煽り文句に耳を疑うが、もう遅い。
束の間シン、とした客席から数多の視線が突き刺さってくる。衣装があまりにも心もとなく、横座りになっていた僕は腕を身体に巻き付けた。ごくり、と複数人が喉を鳴らす。
「では、本日最高額の百万ゴルドからスタートです!」
「二百万」
「五百万」
「「……」」
「一千万」
「ついに出ました一千万! さぁ……他にございませんか?」
どんどんと競り札が上がり、価格を吊り上げていく。一千万と告げたのは国王の従者だ。買う気なのか、と肩を震わせてしまった。
会場が静まり返る。一人の奴隷に対し一千万ゴルドなんて正気じゃない。僕にとっても想像を遥かに超えた金額に、買ったら何をさせられるんだと震えが止まらなくなってくる。
(終わった。僕の人生終了のお知らせです……)
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