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8.今度は軟禁中。
「ん……」
窓から差し込む朝日の光で目覚めた。身じろぐと腹に回った腕がぎゅっと僕を引き寄せてくる。そーっとその腕から抜け出して、寝台を出てから未だ夢の中にいる主人を見つめた。
「隈、消えたな……」
いつだったか、「君といるとよく眠れる」と言っていたのはリップサービスではなかったのかもしれない。隈のなくなった顔は相変わらず美しく、眠っていると少しだけあどけない。
しばらく見つめてから、んーっと背伸びをしてキッチンへと向かう。いま僕は毎日、カルディア様の食事を作っているのだ。
僕は少し前、カルディア様に連れられてインサニア王国に戻ってきた。そのままカルディア様の家に住むように言われて、頷くしかなかった。拒否できるような雰囲気じゃなかったのは言うまでもない。
前の部屋を引き払って荷物を運ぶよう手配してくれたのはカルディア様だ。僕は戻ってきてから一度もこの家を出ることを許されていない。
きっとまだ怒っているのだ。だから毎日仕事の見送りと出迎えをしているだけ。せめてもと食事を作らせてもらっているのが現状だ。
カルディア様の屋敷は、その立場からは想像もつかないほど小さく――といっても僕の住んでいた部屋とは比べ物にならないが――使用人も通いの家政婦が一人しかいない。
彼は他人が家にいるのを好まないため、仕事で外出している間に屋敷の掃除などだけを任せている。
僕がいるのはいいのか? と気になるけれど、まあ何度もセフレとして肌を重ねてきたし、今は毎晩抱き枕よろしく一緒に眠っているから問題ないらしい。
しかしながら、カルディア様と再会して以降そういうことはしていない。
それが僕を悩ませていた。他国で救ってもらい、そばにいることを許してもらって、これ以上望むなんて我ながらどれだけわがままなのだろうか。
だけど元々セフレなのにセックスがなかったら、元々部下として拾ってもらったのに仕事さえもしてなかったら、自分の存在意義がわからない。
「では、行ってくる」
「カルディア様っ。あの……牛乳が、なくなったので、買いに行ってもいいですか……?」
「明日来る家政婦に頼めばいい。料理だって無理にしなくていいんだ。だから、街に出ようとしないでくれ」
じゃあ、僕は一体なんのためにここにいるの? 婚約はどうなったの?
思わず尋ねてしまいそうになったけど、黙って頷いた。
抱かれないということは、もう僕に性的魅力を感じていないということだ。一方的に仕事を辞めて、迷惑をかけた。
だからきっとこれは罰なのだ。恩のあるカルディア様に対して、好き勝手してしまった僕に与えられた。
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