セフレのはずの宰相が国家規模で僕を追いかけてくる

おもちDX

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 カルディア様を見送ったあと、やることがないため早々に夕飯の仕込みをして、玄関の掃除をしていたときだった。

 見覚えのある赤褐色が屋敷前の通りに見えた僕は、「アロ!」と声を上げる。懐かしの同僚がはっと顔を上げ、左右をきょろきょろと確認しながら小走りで屋敷にやってきた。

「フェレス! よかった無事で……居場所も教えてもらえなかったから……」
「どうしたの? 仕事中でしょ?」
「とにかく家に入れてくれる? あの人に知られたら……殺されるかも」
「は?」

 出したハーブティーをひと口飲んでふぅと息を吐いたアロは、心配そうに僕を見つめた。

 仕事中じゃないの? と思ったが、カルディア様がメルギトゥル王国に向かっている間秘書たちは休みなく働いていたため、順番に休みをもらっているそうだ。
 久しぶりの休息日にわざわざ探して会いに来てくれたらしい。ただし、カルディア様には秘密で。

「フェレス、攫われたって聞いてたけど大丈夫なのか? カルディア様、すごい怒ってたし……酷いことされてない?」
「うん。助けてもらったから大丈夫。酷いことなんて何もないよ」
「じゃあなんで仕事に復帰しないんだ? ここに住んでるってことは、よりを戻したんだろ?」
「……?」

 アロの物言いに違和感を抱いて、こて、と首を傾ぐ。どうやら認識に相違があるみたいだ。よりを戻すって、元々付き合っていたみたいな言い方だよな?

 どうせ好きなのはバレていたみたいだし仕事も辞めてしまっているからいいか、と開き直って僕はアロに説明した。元々カルディア様とはただのセフレで、戦争のついでに助けてはくれたものの、ここにいるのは僕への罰なのだと。

 なんだそういうことか、と納得してもらえると思っていたのだけれど、説明していくうちにアロは驚愕を顔に浮かべた。目を見開き、「まじか……そこまで不器用だったなんて……」とぶつぶつ言っている。

「お前らこじれすぎだろ! こんなの軟禁じゃん? あの人もほんと……言葉足らずなくせして行動力だけはめちゃくちゃあるからな……」
「やっぱり僕、ここを出てったほうがいいと思う?」
「ちげー! そんなことしたら地の果てまで追いかけてくるだろ。フェレスのために国を動かした人だぞ?」
「……え?」

 アロが何を言っているのか理解できなかった。僕が本気で分からないという顔をしていると、「言っていいのかな……でも一生すれ違ってそう」とまた独り言を呟いている。
 とても重要な事実をアロは知っていて、僕に話すか迷っているようだ。

 他人から聞いちゃ駄目なことなのかもしれない。けれどカルディア様に関することなら知りたいし、今の苦しい現状を打破するためなら多少のルール破りは受け入れる。
 僕はアロに頭を下げ、カルディア様にはアロから聞いたことを(というかここで会ったことも)言わないと約束して、ようやく僕の知らないカルディア様の行動を教えてもらったのだった。

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