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噂はただの噂だったとアロに聞いた。僕を惑わせるかもしれない噂からも、彼は僕を守ろうとしていた。過保護にも程があると思う。その前に気持ちを伝えてくれていたら……僕はいつだって……
「あなたから離れて、他人に欲をもって触れられるかもしれないと実感したときに初めて、あなた以外は無理だと思った。それくらいなら死んでやると、檻の中で考えていた……」
カルディア様の声が聞こえてこなかったら、変態国王に買われる前に舌を噛み切っていたかもしれない。そう思えるほど。
「助けに来てくれて、ありがとうございました。またカルディア様のそばに戻ってこられて、僕は……一生この家から出られなくてもいいってくらいに幸せです。でも……叶うなら、また、あなたに愛されたいんです。わがままで、ごめんなさい。でも、大好きで……っ!」
「フェレス、もういい……!」
声が掠れ、視界はうるうると揺れている。カルディア様に優しく抱きしめられて、その肩口に目元を押し付ける。
彼はしばらく僕の背中を落ち着かせるようにゆっくりと撫で、静かに語りだした。
「私は君に対して負い目があった。若い君が私を憧れの目で見ているのを知っていて、節度を守れず君を自分のものにした」
「僕はっ、あのとき……!」
「今は分かってる。あのとき先に気持ちを伝えていればと、あとから何度も考えたよ。だが私は臆病だった。君が私から離れていくのが怖くて、周囲を牽制することばかりを考えていた。君は自分の魅力に無頓着だが、私は無垢で美しい君に愛想を尽かされないよう必死だったんだ」
「…………」
アロから事実を聞いてカルディア様の気持ちは想像できていた。けれど本人から後悔の念とともに吐き出される事実は、いっそうの重苦しさを運んでくる。
「私には権力も計画力もあった。だから強引に君の周囲を固めるたび、こんな自分を知られたくないと感じて余計に何も言えなくなってしまった。いつしか君には私の気持ちが伝わっているだろうと自分に言い聞かせるようになって、問題自体を見ないようにしていたんだ。でも、そのせいで……君は私の元から離れてしまった。おかげであんな目に遭って……私のせいだ。今だって君を手元に置いたものの、申し訳なくてなにもできないでいたんだ。どうしたら許してもらえるのか分からない。いったい、私はどうしたらいい?」
「カルディア様」
肩から顔を離して名前を呼ぶと、彼は僕の顔をそっと覗き込んできた。膝の上に乗っていることで、顔の距離はいつもよりかなり近い。
彼は迷子になった子どものような顔をしている。その途方に暮れた表情を見て、僕はこの人を年上の大人だと思うことをやめた。
恋愛面で見れば僕とほぼ同じ……つまり、まともな恋は初めてなのかもしれない。僕を鳥籠に入れて守ろうとしたのも国を動かして取り返そうとしたのも、できるからやっただけだ。
仕事でなら頭が回るけど、好きな人相手だと途端に不器用になる。僕たちは似た者同士だ。言葉にすればよかったと、お互いに後悔している。
「悪いと思っているなら、謝ってください。僕は知らないところで守られるよりも、自分の意志で他人を跳ね除けたかった」
「……すまない」
カルディア様から謝罪の言葉を聞いたとき、背筋にぞくぞくと愉悦の震えが走った。国の宰相ともあろう人が、ひと回り歳下の部下にすんなりと謝るなんて、これを愛と言わずして何と言う?
「それから……僕のことをどう思っているのか、ちゃんと教えて下さい」
「……愛してる……」
「よくできました」
なんて愛おしいんだろう。両手で彼の頬を挟み込んで、にこっと微笑んだ。もう不安にならなくていいように、はっきりと伝える。
「僕も愛しています。ずーっと、昔から」
「あなたから離れて、他人に欲をもって触れられるかもしれないと実感したときに初めて、あなた以外は無理だと思った。それくらいなら死んでやると、檻の中で考えていた……」
カルディア様の声が聞こえてこなかったら、変態国王に買われる前に舌を噛み切っていたかもしれない。そう思えるほど。
「助けに来てくれて、ありがとうございました。またカルディア様のそばに戻ってこられて、僕は……一生この家から出られなくてもいいってくらいに幸せです。でも……叶うなら、また、あなたに愛されたいんです。わがままで、ごめんなさい。でも、大好きで……っ!」
「フェレス、もういい……!」
声が掠れ、視界はうるうると揺れている。カルディア様に優しく抱きしめられて、その肩口に目元を押し付ける。
彼はしばらく僕の背中を落ち着かせるようにゆっくりと撫で、静かに語りだした。
「私は君に対して負い目があった。若い君が私を憧れの目で見ているのを知っていて、節度を守れず君を自分のものにした」
「僕はっ、あのとき……!」
「今は分かってる。あのとき先に気持ちを伝えていればと、あとから何度も考えたよ。だが私は臆病だった。君が私から離れていくのが怖くて、周囲を牽制することばかりを考えていた。君は自分の魅力に無頓着だが、私は無垢で美しい君に愛想を尽かされないよう必死だったんだ」
「…………」
アロから事実を聞いてカルディア様の気持ちは想像できていた。けれど本人から後悔の念とともに吐き出される事実は、いっそうの重苦しさを運んでくる。
「私には権力も計画力もあった。だから強引に君の周囲を固めるたび、こんな自分を知られたくないと感じて余計に何も言えなくなってしまった。いつしか君には私の気持ちが伝わっているだろうと自分に言い聞かせるようになって、問題自体を見ないようにしていたんだ。でも、そのせいで……君は私の元から離れてしまった。おかげであんな目に遭って……私のせいだ。今だって君を手元に置いたものの、申し訳なくてなにもできないでいたんだ。どうしたら許してもらえるのか分からない。いったい、私はどうしたらいい?」
「カルディア様」
肩から顔を離して名前を呼ぶと、彼は僕の顔をそっと覗き込んできた。膝の上に乗っていることで、顔の距離はいつもよりかなり近い。
彼は迷子になった子どものような顔をしている。その途方に暮れた表情を見て、僕はこの人を年上の大人だと思うことをやめた。
恋愛面で見れば僕とほぼ同じ……つまり、まともな恋は初めてなのかもしれない。僕を鳥籠に入れて守ろうとしたのも国を動かして取り返そうとしたのも、できるからやっただけだ。
仕事でなら頭が回るけど、好きな人相手だと途端に不器用になる。僕たちは似た者同士だ。言葉にすればよかったと、お互いに後悔している。
「悪いと思っているなら、謝ってください。僕は知らないところで守られるよりも、自分の意志で他人を跳ね除けたかった」
「……すまない」
カルディア様から謝罪の言葉を聞いたとき、背筋にぞくぞくと愉悦の震えが走った。国の宰相ともあろう人が、ひと回り歳下の部下にすんなりと謝るなんて、これを愛と言わずして何と言う?
「それから……僕のことをどう思っているのか、ちゃんと教えて下さい」
「……愛してる……」
「よくできました」
なんて愛おしいんだろう。両手で彼の頬を挟み込んで、にこっと微笑んだ。もう不安にならなくていいように、はっきりと伝える。
「僕も愛しています。ずーっと、昔から」
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