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21.雨上がり
『心ここにあらず』を体現している瑞は、しばらく桔都を避けてしまっている。といっても少し前の桔都みたいにあからさまではなく、自分から誘うことはしないだけだ。
元々桔都から誘ってくることもなかったので――その隙もないくらい瑞が誘っていたとも言う――二人で過ごす時間は相対的に減った。
通常授業が始まると気を引き締めさせるかのごとく宿題も多く、模試の対策なんかもあって自室に籠もる時間が増えた。とはいえ机に向かっても、すぐにぼんやりと考え事をしてしまうため捗っていない。
学校で桔都と佐倉が一緒にいる姿は見ていないものの、元々桔都とはクラスが離れていて接点がないからよくわからない。
桔都の帰りが遅くなると「佐倉さんを家まで送り届けてたのかな」と考えてしまうし、休日に桔都がお洒落して出かけていくと「デートかな」と思ってしまう。
もちろんそのお出かけに瑞のあげたスパイダーマンTシャツは着ていかない。学校での桔都に相応しい、本気お洒落男子のスタイルだ。
「はぁ~~~っ……」
ため息ばかり吐いてしまう。どうしてこんなに気分が浮かないのだろう。五月病ならぬ、九月病ってやつ?
秀治は無事告白に成功したらしく、同じクラスの女子と付き合い始めた。周囲には隠していて、一緒に昼飯を食べたりとか教室内で仲の良さを見せつけることはない。
そういうところが、なんか大人っぽくて癪に障る。応援しているはずなのに、桔都もそうしているのかなって考えてしまうから。
土曜日である今日も、桔都は昼から出かけて行った。朝ごはんのときに「友だちとボウリング行ってくる」と言っていたけど、「彼女となんじゃないの?」と瑞は内心邪推している。
我ながら性格が悪い。
「瑞ぃ?」
「はーい」
ノックの音が聞こえ、全く進まない勉強のノートから顔を上げて振り向くと母だった。というか丞さんも休日出勤で家におらず、母以外あり得ない。
「ぶどう食べない? シャインマスカット、丞さんのふるさと納税で届いたの」
「やったー! 食べる!」
ダイニングで向かい合ってぶどうを食べながら、久しぶりに母と二人でお喋りする。なんだか再婚前に戻ったような雰囲気に、心が落ち着いていく感じがした。
「なんだか最近寂しいわ。丞さんは仕事が忙しいみたいだし、桔都だけじゃなく瑞もリビングに出てこなくなっちゃって」
「ごめん……なんか学校始まったら、落ち着かなくて」
瑞も寂しかったけど、母も別の意味で寂しさを感じていたようだ。丞さんは最近帰ってくる時間が遅く、朝も早めに家を出たりしてあまり話す時間がなくなってしまった。
わかっている。丞さんは家族旅行のために夏休みを長期間取ったせいで、今忙しくなっているのだと。
「やあね、大丈夫よ? 丞さんって全然怒らないし、時間のあるときはラブラブなんだから」
「うん……」
瑞の不安げに揺れる瞳に気づいた母が、安心させるように手の甲を叩いてくる。すぐ怒りすぐに手を上げるかつての父と丞さんは全く違うとわかっていても、たまに不安が出てきてしまうのだった。
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