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結局、ぐっすり眠っているからと嘘をついてルシアーノとの晩餐も断らせてもらい、ミルファはひっそりと部屋で病人食をいただいている。
微熱でも食欲がなくなるのには難儀して、それでもなんとか飲み下す。明らかにやつれた様子なんて見せたら、すぐに彼は気づいてしまうと思ったからだ。
介助役にはポモナ。ルシアーノへ秘密にする代わり、彼女と料理人にはミルファの不調が明かされている。ここで間違ってもセルピナに伝えてはいけない。
「ミルファ様、ルシアーノ様にお抱かれになったのですか?」
「ぶっ。え? ゲホッゲホッ……なに!?」
パン粥を吹き出すところだった!
あからさまな発言に、熱とは別の意味で顔が赤くなるのを感じる。ポモナは心配そうにこちらを見つめるわりに、容赦しない。
「お二人が見るたびに仲良くなってきていることには気づいております。お好きなんでしょう。ミルファ様ったら、わかり易すぎますよ?」
「うそぉ……隠してるのに!」
「ほほ、まだまだ未熟ですわね、我らがご主人は。……それで、二人で外泊した途端に体調を崩されたのでそういうことかと思ったのです。風邪っぽくは見えませんしねぇ……男性で受け入れる側は負担が大きいと聞きますから」
「う、受けっ……!? 違うから! まだまだ全然片想いだから……はぁ……」
恥ずかしくって大声を出した代償に、くらりと目眩が襲ってくる。「落ち着きなさいませ」って、ポモナのせいなんですが。
その後身体を拭いてもらうときにも「痕跡はありませんね」と確認してくるものだから、まだ疑っていたのかとミルファは目を剥いた。なんだか疲れてしまい、たくさん寝たのにその夜もぐっすり眠ってしまった。
しかし、翌朝もミルファの熱は下がっていなかった。動けないほどではないからとルシアーノと共に朝食をとり、「寝すぎちゃった、あはは」とごまかしの笑み。
「やっぱり顔色が……」
「大丈夫だから! じゃあ、もう出仕するから。ルシアーノはゆっくり食べてて」
「あ、ああ……俺も今日は出かけるから」
ミルファに合わせてルシアーノも立ち上がったので、またハグされる! と今日ばかりは危機感をいだき慌てて食堂を後にする。距離を縮めてくれるのは嬉しいけど……今はちょっと……ウッ。
自室に戻ってすぐ、ミルファは少ない朝食を戻してしまった。
「ゔぅ……ごめん」
「医者を呼びましょう」
「でも、ルシアーノに……」
「ああもう! 頑固なんですから……ルシアーノ様が出かけた後にします」
「ありがと……ちょっと、横になりたい」
無理に朝食を食べたのが仇となったらしい。ディードーに介抱されながら、ミルファはソファへぐったりと横になる。ほんと、どうしちゃったんだこの身体は。
その後寝台までミルファを運ぶため、力自慢の侍従ロービーが呼ばれ彼にも不調がバレてしまった。
ロービーは「ミルファ様、死なないでくださいぃ!」と耳元で騒ぐからすぐに部屋を放り出された。ちょっと泣いていたから可哀想だったけど。
王宮には代理人に手紙を届けてもらい、ミルファもしくしく泣きたい気分だ。はじめて体調不良なんかで仕事を休んでしまった罪悪感は大きい。
長官も同僚も優秀なので問題はないと思っていても、自分自身が居た堪れなかった。それに、給金を支払っている使用人たちを不安にさせてしまうに違いない。
もうこれは医者に治してもらうしかない! とミルファ自身も気合いを入れて呼んでもらったのだが、彼も原因には匙を投げ。街で評判の薬師を呼んでみるか? と相談していたところ、昼を過ぎてミルファの体調が回復してきたので結局その話も流れた。
やっぱり病気とかじゃないと思うんだよなぁ。
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