後天性オメガは未亡人アルファの光

おもちDX

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 翌日からは通常どおりの生活に戻った。以前ルシアーノに貰ったお茶をこっそりと買い足したり、使用人が薬師に聞いた滋養に良い食べ物などがさりげなく食卓に並んだり。健康のための努力は続けている。
 
 寒さも厳しくなってきたので遠出はしばらく控えようと思う。その代わりと言っては何だが、王都の貴族は冬も夜会に忙しいのだ。

 数は絞っているものの、ルシアーノと一緒に片手で足りないくらいには夜会に参加している。初回が兄の登場で後味の悪いものだったためルシアーノ抜きで参加すると伝えたのだが、彼は頑としてミルファをひとりで行かせなかった。

 とはいえ、運良くあれ以来家族には会っていない。あのとき兄はルシアーノに怯えているように見えたから、避けられているのかも。

 今日参加しているのは侯爵家主催、立食形式のダンスパーティーだ。規模が大きいため、残念ながら今回はミルファの兄夫妻に加え、両親を引き連れた妹まで見えたのでウンザリしてしまった。とにかく無視を決め込むことにする。

 ミルファはルシアーノに踊ってみる? と誘いをかけたものの、申し訳なさそうに断られてしまった。

「すまない……ダンスは踊ったこともなくて」
「あ、謝らないで! 今度屋敷に先生を呼ぼうよ。僕が相手役してあげるからさ」

 ルシアーノはダンスレッスンさえも受けたことがないのかもしれない。ミルファは自分がそこまで思い至らなかったことを反省した。
 よくよく考えてみれば、ルシアーノと踊るなら体格的に自分が女性役だろうし、ミルファにも練習が必要だ。

 乗馬もあっという間に習得した彼なら、すぐにダンスもできるようになるだろう。きっと様になって格好いいだろうなぁ。
 目立つのは覚悟の上で、いつか一緒に踊りたい。男同士で踊るペアは少ないし、相手が平凡な自分であることはこの際置いといて。

 演奏家の奏でる優美な音楽を聴きながら、ルシアーノと一緒に食事の並ぶテーブルへと移動した。贅を凝らした食事が煌びやかに並び、踊る花々よりもミルファの目を楽しませる。

 ミルファが自分の皿に好きなものを乗せているあいだ、ルシアーノは給仕から受け取った酒を口にするだけだ。彼はいつもそう。
 いつもミルファと同じ量しか食べないことからも分かるとおり、元々食は細めなのだが、パーティ会場ではさらに食欲をなくすらしい。

「まだ全然慣れない?」
「うん、まぁ、少なくとも時間の経過は読めるようになってきたかな……」
「あはは。注目を浴びるのはもはや宿命だよ。こんなに格好いい、んだ……もん……」

 つい本音で容姿を褒め称えてしまい、言葉が詰まる。あれ、これくらい伝えたことあるはずなのに。
 急に恥ずかしくなってきて、頬を淡く染めながらミルファは目を逸らした。今日も眩しいほどタキシードが似合っているのは言うまでもない。

 そのとき、ルシアーノの手がミルファの顎に添えられ視線を戻される。見上げた先にはなぜか楽しそうに目を細めた美丈夫。

「ミルファがそう思ってくれるなら、嬉しいな」
「ひぇ」

(色男すぎる!!!)

「失礼、ミルファ卿かな?」

 ミルファなんかに向けて垂れ流された色香に、情けない声が漏れた直後。パラティーノ伯爵家の当主に声を掛けられた。ロマンスグレーの髪が似合うダンディな御仁だ。

「閣下。ご無沙汰しております」
「君だね!? セリオ侯爵の……驚いた! 噂を聞いて半信半疑だったが……いやはや」

 ついに来た。

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