出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ

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027:圧

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 新居ができてトイレ作りの為のスラリン培養を工房でしていると、エステラがやってきた。

「ジン?」
「ん?」
「サリナって子が来てるんだけど?」
「あぁ……うん。そうか……」

 うっは。気まずいなんてもんじゃない。空気が重い。

「んじゃあ、そうね。工房に通してくれる?」

 エステラの視線が痛い。視線で人を殺すことができそうなほどに。

「どういう関係?」
「幼なじみの妹……」
「へぇ?」
「紹介されたんだ」
「……へぇ」

 俺。何でこんなに危機感を覚えているんだろう。別に疚しい事は何もしてないのに。そこでエステラが一言。

「まぁさ。別に私たち、現在は付き合っているわけじゃないし? いいのよ。別に。私は押し掛けで居候の身だし。別にさ。イチャイチャしたって責めやしなわよ?」
「…………」

 めっちゃ言葉に圧が乗ってますやん。言わないけども。言えないけども。

「そ、そうだね」
「でもさ。これだけは言える」
「何?」
「無責任なことはしちゃ駄目よ?」

 お前が言うな。

「分かってるよ。しないし、する予定もないよ」
「ふぅ~ん」

 そう言ってエステラは店の方へ。そして、これまた機嫌の悪いサリナが登場。

「……こんにちは」
「う、うん。こんにちは」
「店員さんを雇ったんですね」
「店員と言うか、まぁ、うん。ちょっと違うけど、そんな感じ」
「ふぅ~ん」

 気まずい。最高に気まずい!

 どうしろってんだよぉ。

「で? どういう関係なんですか?」
「……元カノで現在は事情があって一緒に住んでる」
「へぇ。一緒に住んでるんですか……」

 怖ぇえええ。目と声に圧がぁああああ。俺はエステラが押しかけてきた経緯を話す。すると少し圧が減った。

「へぇ。子種を……で?」
「で?」
「抱いたんですか?」
「してないよ。それは出来ない」
「何故ですか? さっさと子種をバラ撒いて帰ってもらったら良いじゃないですか」
「……その子が。その子がもし優秀じゃなかったら?」
「え?」
「その子がもし優秀じゃなくて普通の子だったら、どうなるんだろうなってさ」
「それは……」
「きっと伯爵家から追い出される。虐待をされるかもしれない。そしてエステラも肩身が狭い思いをする。俺は責任を感じる。誰も幸せにならない。最悪の結果を招く。それが分かってなお抱けと?」

 俺は少し怒っている。それがサリナにも分かったようだ。

「ごめんなさい」

 素直に謝罪をしてきた。

「いいさ」

 でも、この件は今後どうするのかちゃんと考えたほうが良いな。子種をバラ撒くのはダメ。そして今の状態を続けても駄目。ならもう出来ることはエステラの父である伯爵様を説得するしかないんだけど……

 それをするとなると、俺が王都まで出向かなければいけない。エステラの父は領地を持たない貴族だ。正確には分割相続が続いた結果、生計を立てられない程度の土地しか与えられていない。そのために優秀な子孫を欲っして今回の騒動を起こした。

 でも、王都まで行くとなると俺が今の生活を放り出すことになる。まだ軌道にすら乗っていないこの忙しい時期に!

「どうしたものか……」

 まぁとりあえず打てる手は打とう。

 エステラに、しばらく手紙で父親の説得をさせるのだ。

 エステラほどの器量があれば、すぐに良い嫁ぎ先が見つかるさ。

 それまでの辛抱だ。
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