底辺デザイナー、異世界では魔法陣クリエイターとして最強でした

新川キナ

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040:王都到着

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 王都にある館の執務室。そこで私はソファに身を沈めて、しみじみと呟いた。

「いやぁ、ほんっと何にもない旅でしたね」

 私の感想にバリッシュ様は報告書を読みながら呆れ顔を作ってみせた。器用だな。

「何かあったほうが良かったのか?」
「そうは言わないですけど。こう……盗賊とかに襲われて私が拐われてぇ、みたいな?」
「ばかたれ。何処の世界に二十名近い騎士に守られた貴族の馬車を襲う盗賊がいる?」
「居ないんですか?」
「居たらバカの所業だ。武装した戦闘のプロを襲うぐらいなら、行商人とかを襲った方が確実だろう?」
「なるほど」

 私が納得すると、しかしバリッシュ様。

「ただまぁ今回はお前が居たからな。可能性はゼロではなかった」
「私?」
「帝国の一部で有名になっているらしい。クレザンティール王国には魔導書を改良した獄炎の魔女が居るというな」
「私だってバレたんですか?」

 驚きだ。

「あぁ。王国の中にも当然、諜報員や内通者や売国奴がいるからな」
「私ってばヤバい?」
「そこで俺の存在だ」
「バリッシュ様?」
「そうだ。俺が君を友人として扱うことで壁になっているんだ。手を出したら辺境伯がでてくるぞ、とな」
「あぁ。そのための名前呼び?」
「そうだ。それだけ近しいと思わせておけば、君の安全も少しは守れる」
「少し、なんですか?」
「どこにでも、欲に濁った馬鹿は居るからな」

 ふへぇ。既に対策とかして動き出していたんですね。ここはお礼を言うべきか。

「ありがとうございます?」
「いや。私の利益のためでもあるから。利害の一致だ」
「そこは素直に、うむ。苦しゅうないとか言って高笑いして鷹揚にしたら良いのでは?」
「そんなキャラじゃない」
「そうですか。そうですね」

 確かに高笑いするようなキャラじゃないな。

「さて。バカ話はここまでだ」
「バカって酷くないですか?」
「いちいち絡むな。話が前に進まない」
「はぁい。で?」
「あぁ。今後の予定だ。さっき、王城に問い合わせをしていたことに返事があった。登城の日程が決まった。三日後だ」
「待たされるんですか? 何だか時間にムダが……」
「ん? なにか急ぎの用事でもあるのか?」
「別にないですけどね」
「なら、よかろう」

 私は暇が嫌なのだ。よし、ならば!

「……王都の観光ってしに行っていいですか?」
「護衛を連れて行くならな」

 護衛かぁ。ちょっと偉くなった気分だが同時にプライドが傷つく。

「あのぉ。私これでも三級の冒険者なんですけど?」
「知ってる。だが魔物を相手にするのと人間を相手にするのは根本的に違う。まさか街なかで襲われてファイアーストームを使うわけにも行くまい?」
「う……」
「ファイアーアローでさえ危険だ。つまり魔法という手段が封じられた君に何が出来る?」
「す、ストーンアローなら使えますよ?」
「ほぉ。もしそれで民間人を誤射したら? ゴメンナサイでは済まないな」
「ぬぅ……」
「諦めろ。王都を見て回るのなら護衛は絶対だ」

 はぁ。まぁいっか。

「しょうがないですね。ちなみにですけど領都ではどうなるんですか?」
「そっちは街なかに君の知り合いが多いからな。職人街に居る限り余所者が手出しはできない。それに密かに護衛もさせているしな」
「私の知らないところで不穏だ」
「それだけ君に価値があるということだ。モテる女は大変だな」
「なんですか? 皮肉ですか? 珍しい。それともヤキモチですか?」
「ばかたれ。もう下がっていいぞ」

 そう言ってバリッシュ様は再び視線を書類に落とした。私が部屋を退出しようとすると彼が言った。

「出掛ける時はちゃんと前もって言付けるように。いいな」
「私は子供か!」
「中身はともかく、外見はまだ子供だな」
「ぐぬ」

 確かに成人はしたが、十七ではまだギリ子供だろう。

「はぁ。早く大人になりたいね」
「くく。五十歳を越えた子供とか……」
「外見の話よ!」

 私は今度こそ彼の執務室を後にしたのだった。
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