底辺デザイナー、異世界では魔法陣クリエイターとして最強でした

新川キナ

文字の大きさ
44 / 46

044:リサの覚悟

しおりを挟む
 私はドレスを纏い、内務大臣が主催のパーティに出席した。魔導書を一冊持って。攻撃系の魔導書だが、バリッシュが根回しをしてくれたので持ち込みが許された。

 私は出番のあるその時まで無難に受け答えをしながら待っていた。

 一時間ぐらいだろうか。会場が温まってきた頃にバリッシュが戻ってきた。

「リサ。根回しは済んだ。いつでも大丈夫だ」
「ありがとう。バリッシュ」

 私はドキドキしながら、それでもここでやらなきゃいけないことなのだと自分を叱咤した。そして会場の中央へ。すると皆の注目が集まった。何が始まるのか興味津々のようだ。

 バリッシュが合図をすると、私の前に魔導書が運ばれてきた。私は大きく息を吸って大声を張り上げる。

「皆さん! 聞いて下さい!」

 会場がガヤガヤと慌ただしくなる。ここには色んな立場の人が居る。その中でも主催者である内務大臣は穏健派なのだそうだ。今回の出兵に否を唱える立場の人。だから止めない。

「私はリサ・ロックハート。旧姓をウィルニムと言います! 今から十数年前に帝国の手によって一つの開拓地が襲われ、それによって子爵家が一つ没しました。小さくて貧しい家でしたが。それでも私は幸せだった」

 そこでいったん、言葉を切った。言葉に抑揚を付けるために。

「それなのに卑怯にも帝国はコレを奪った! 開拓地を襲われ、逃げた私は行商人に拾われて戦災孤児として孤児院で育てられました。そこで魔法陣作家のフォレスト師匠の弟子として貰われ、私自身も師匠亡き後も、その技を継ぎ魔法陣作家となった」

 私は師匠の顔を思い出す。師匠。ごめんなさい。名前を使います。

「私は殺人者になりたくない。いや。侵略に手を貸す外道になりたくない! 帝国のようにはなりたくない! フォレスト師匠も私にそんな者にさせるために魔法陣の描き方を。マジックスクロールや魔導書を作らせたわけではないはずだ! それなのに、今。そんな私や師匠の思いを踏みにじろうとする輩が出てきた! 本人が居ない前で、その者たちの名を挙げるようなことはしない! それは卑怯だから。ただ……私はこれ以上、侵略戦争へ加担するような真似はしないと誓おう。今日たった今から七日後に魔導書の製造を完全停止する!」

 場がザワザワと慌ただしくなった。会場を駆け出して行く者もいる。たぶん強硬派の人たちなのだろう。

「その証明として、まずこの魔導書を破壊する!」

 そう宣言して私はエアバレットなる風の魔法を十発ぐらい火の魔導書に打ち込んだ。粉々に砕け散る魔導書。一部に女性の悲鳴が上がったが、概ね静かだ。最後に付け加える。

「王との最初の約束が果たされるまで私は魔導書を一切作らない!」

 高らかに宣言した直後。パチパチパチと拍手が鳴った。私が視線を向けると、そこには主催者の内務大臣。すると周りでも拍手が鳴った。

 バリッシュに視線を向けると、にやりと笑った。なるほど。根回しってこういう時に必要なんだね。

 私は内務大臣にお詫びとお礼を伝えて、帰路についたのだった。

 製造が停止され、現在稼働している魔導書は十一冊のみ。それは戦場へと投入され猛威を振るっているらしい。

 その報告は私の心を傷つける。

「こんなことなら魔導書を保護するシールドを脆弱にしておけばよかった」

 ただ魔導書を持つ魔導士が魔導書ごと捕縛されるなんて事も出てきた。魔導書の数が減っていく。相手の国も必死なのだ。

「たった十一冊で戦場をいつまでも支配できるはずもなし」

 製造を停止して、さらに一ヶ月が経過。前線から魔導書の不足で戦線を維持できなくなったと悲鳴が届き始めている。バリッシュから現状の報告があった。

「強硬派が代替案を模索しているらしい」
「新兵器以外に?」
「そうだ。現在東と南で兵や魔導書を分けていたのを、一箇所に集めて一点突破をしようという話が出ているそうだ」
「出来るの?」
「いや。東のバル王国と南のロンドロス王国は同盟を結び、この国難に挑んでいる。どっちも引かないさ。引いてもらっては困るしな」
「もしかして、そっちにも根回しをしてる?」
「当然だ。バル王国にもロンドロス王国にも製作者の意向と覚悟を伝えてある。新兵器たる魔導書が今以上に作られることはない、とな」

 後は、王しだいだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

私、実はマンドラゴラです! 仲間が根絶やしにされかかってたので守ってあげることにしました! 街でポーション屋を開きつつ、ついでに魔王軍も撃退

あなたのはレヴィオサー
ファンタジー
【一行あらすじ】  擬人化マンドラゴラの女の子主人公が仲間たちを守るために街でポーション屋を開きつつ魔王軍を追っ払う話。 【ちゃんとしたあらすじ】  とあるポーション屋の店主、アルメリア・リーフレットの正体は"擬人化"したマンドラゴラである。魔物について、とりわけ強い魔力を持つ個体は、成長に伴って人の姿へ近づく——そんな現象が古くより報告されてきた。スライムからドラゴンまで前例は様々あるが、アルメリアはなんとその希少すぎるマンドラゴラ版。森で人間の少女として拾われ、育てられた彼女はある日ふと思う。——もしかしてこの広い世界のどこかに、自分と同じような存在がいるのではないか? そうと確信し、旅に出る。やがて通常のマンドラゴラたちがひっそりと暮らす集落にたどり着くが……。そこではちょうど彼らを巡って、魔王軍と冒険者たちが衝突しているところだった。このままではいずれ、自分たちは根絶やしにされてしまうだろう。シクシクと泣いている彼らをまえに、見捨てて立ち去るわけにもいかず。アルメリアは深いため息とともに覚悟を決めた。 「……はぁ、わかりました。そういうことでしたら」

SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~

しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、 目を覚ますと――そこは異世界だった。 賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、 そして「魔法」という名のシステム。 元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。 一方、現実世界では、 兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。 それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、 科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。 二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。 異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。 《「小説家になろう」にも投稿しています》

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

処理中です...