優しく恋心奪われて

静羽(しずは)

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第25話|嘘か本気かの狭間で

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今まで気づかないふりをしてきた感情が点と点で静かにつながっていく。

女の人が好きだった。
それは、嘘じゃない。

でも――

安心できる同性。に惹かれる気持ちも確かに自分の中にあった。



「俺、、、。」



小さく呟いた声は、最後まで形にならなかった。
答えはまだ出ない。
でも。今回は綾瀬だったから同じ気持ちになった。
それだけはもう誤魔化せなかった。
湊はに手を当てる。
これは。
なんていう感情なんだろう。
分からない。
分からないけど。
それでもこの鼓動が教えてくれてる気がする。

湊は、ハッと我に返った。
時計に目をやると約束の十五分まであと一分もない。



――やばい。



考えは正直まだまとまっていない。
何をどう言えばいいのかもはっきりしない。
それでも湊は慌てて綾瀬に電話をかけた。
でもこの十五分で一つだけはっきり気づいたことがある。
だから時間は無駄じゃなかった。


湊からの着信に気づいた。
綾瀬もこの十五分の間、正直なところ色々なことを考えていた。



――十五分って、こんなに長かったっけ。



いつもならあっという間に過ぎる時間がやけにゆっくり流れていく。
それだけ、 自分も落ち着かなかったのだと今さら気づく。
約束の時間、ほんの一分前。



、、、ギリギリまで考えてたんだろうな。



そう思うと自然と湊の顔が浮かぶ。
真面目で不器用で。
でもちゃんと向き合おうとするところがいかにも湊らしい。
それにしても、きっちり時間を守るあたり、、、。



「職業病、か。」



小さく笑いながら通話ボタンを押した。
その瞬間胸の奥に張りついていた緊張が少しだけほどけた気がした。



「もしもし?」



綾瀬が先に出た。



「あっ、すみません!時間、、、過ぎちゃいましたか?」



電話越しでも分かるくらい、湊の声は焦っている。



「いや。たぶん、約束の二十秒前くらいだったぞ。」



少し茶化すように答えると、



「ふぅ~~!!間に合いました、、、? ギリギリセーフですか?」



大げさに息を吐く声が聞こえてきた。



「うん。今回はセーフだな。」



そう言うと電話の向こうで小さく息をつく気配がした。
湊は本当に胸を撫で下ろしているんだろう。



「それで。話は、まとまったのか?」



そう問いかけると、



「あっ!」



湊が我に返ったように声を上げる。



「俺!!思い出したんです!!」



「ん?何を?十五分の間で、、何を思い出したんだ?」



そう思いながら綾瀬は促す。



「おれ、、、!!!」



一拍、間が空いた。



「おれもっ!男性が好きかもしれません!!!」



「、、、へっ?」



思わず、間の抜けた声が出た。
まさかそんな言葉が飛んでくるとは思っていなかった。
想定外すぎる告白に綾瀬は一瞬言葉を失う。
電話の向こうでは湊が息を詰めてこちらの反応を待っているのが分かる。



、、、いや、待て。
おかしいだろ。
湊がこんなこと言っておいてそのまま黙るなんて。
冗談、、、?
え、冗談なのか?
それとも、、本気?
一瞬で頭の中がぐちゃぐちゃになる。
声のトーンも、勢いも、ふざけているようには聞こえなかった。
でもあまりにも唐突すぎる。



「、、、湊?」



思わず名前を呼んでいた。



「それ、、、冗談で言ってるのか?」



自分でも驚くくらい、声は真剣だった。



「それとも、、本当なのか?」



どっちなんだ。
冗談なら冗談で笑ってくれ。
本当なら――いや、その先を考えてる場合じゃない。
うーん。まじで、分からん。
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