7 / 43
勇者召喚
第7話 食事
しおりを挟む意見を交わし合いそれなりにまとまってきた頃。
誰かが扉をノックする音が聞こえてきた。
代表して姫木さんが出た。
僕も立ち上がろうとしたんだけど姫木さんの方が速かった。
こんなところでも対抗してくるような行動は姫木さんらしい。
しばらくして姫木さんが戻ってくる。
「夕食だそうです」
もうそんな時間か。
僕は立ち上がり部屋を出るとメイド服を着た女の子についていく。
姫木さん、栗田さん、秋山さんも同じように長い廊下を歩くこと数分。
何気に遠くて暇だったので神眼スキルを使ってみる。
意識すると鑑定結果があちこちから表示されてちょっと面白い。
なるほど、頭が情報量の多さでパンクしないように意図して使わないと発動しないのか。
と、そんな考察をしているとメイドの少女が立ち止まる。
「こちらになります」
メイドの少女の言葉に従って前へと進む。
すると外に出たのかと一瞬錯覚してしまうほどの広い部屋に出た。
椅子がいっぱいある……もしかしなくてもこの馬鹿みたいに大きなテーブルは僕たちのためなのだろう。
料理が端から並べられていくのを見て気分が高まる。
ふと聞いてみる。
「席は好きなところを選んでもいいんですか?」
「はい、構いませんよ」
「それなら早い者勝ちですね」
と、後輩の栗田さんがどれにするか迷うように視線を動かした。
んー、と可愛らしく考え込む。
秋山さんもどこの席が好きなものを取りやすいかを悩んでいるようだった。
そんな二人を見て姫木さんは「どこでもいいじゃないですか……」と、言いながらもどこか微笑ましそうにしていた。
「………」
だけど僕は咄嗟に動けなかった。
(嘘をついた……?)
偶然だった。
スキルの感覚に少しでも慣れようと使ってみただけだった。
本当に何の意図もなく言葉の真偽に対してスキルを使っただけ。
だけど、僕の使用した神眼スキルは確かにメイドの少女の嘘を感知した。
ほんの一瞬。
それでも間違いなくその言葉は僕に揺らぎを見せた。
「? 佐山先輩、座らないんですか?」
「ああ、ちょっとボーッとしてた」
姫木さんが呆れたように見てくる。
だけど僕はそれどころじゃなかった。
少女が嘘をつく意味が分からなかったから。
慌てて頭を回転させる。
(今の言葉が嘘だとして……好きなところを選ばれたくないってこと、だよね? どういうことだ……? 席なんてどこを選んでも同じだろ? いや、そもそも何でこの子が嘘をつく必要があるんだ?)
嘘をつくことがこの子にとって得になるとする。
仮に……そう、仮にこの子に害意のようなものがあったとする。
勇者の敵……? それなら……
「んー迷いますね、決めれないので選んでもらえませんか?」
「そのくらい自分で決めればいいじゃないですか」
姫木さんが苦言を口にする。
しかし、メイドの少女は特に気にした様子もなくクスッと微笑を浮かべ「それでは……」と、一つの席を選んだ。
それと同時に神眼スキルを発動。
仮にこの子が勇者サイドの敵だとしたらまず間違いなく狙われるのは僕だ。
これは自惚れではない。
僕がその立場なら強い勇者から狙うのは常套手段だろうから。
「………」
椅子……じゃない。
そこの場所自体は何も怪しい反応はない。
僕は何でもない風を装いながらその席に恐る恐る座った。
……何もないな。
他の3人も席へと座り食事の開始を待った。
そして、目の前に運ばれてきた前菜に神眼による鑑定を使用した。
――――――――――――
デッドリーリーフ。
一口で死に至る神経系の猛毒を含んだ葉。
一見すると普通のレタスのような色をしているため判別は難しい。
魔族領の一部の地域でのみ栽培されている。
―――――――――――――
(わぁお……)
秋山さんの席を見る。
普通のものだ。
姫木さんのところも栗田さんのところもだ。
これ確実に僕狙ってきてるよね。
ほかの3人には目もくれずに僕だけは確実に殺そうという魂胆が見える。
メイドの少女を見る。
目が合うとにこりと微笑まれた。
――――――――――――
リリア(淫魔族)
Lv29
15歳
生命 700
攻撃 130
防御 50
魔力 550
俊敏 100
幸運 160
スキル 変装、偽装、魅了、変換
加護 魔王の加護
――――――――――――
文字通り悪魔の微笑みだった。
えーでもそれってこの国かなり終わってない?
勇者の食事に毒混ぜれるってその気になれば国の中枢一瞬で落とされる気がする……
まあ何にしてもこの状況は見過ごせないな。
細かいことはこの子に話してもらうとしよう。
33
あなたにおすすめの小説
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる