神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。

猫丸

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勇者召喚

第23話 未来視

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「ま、待ってください! なにがあったんですか!」

 僕はセラさんの後ろから彼女に現状を問う。
 セラさんは僕に急げとだけ告げるとそのまま走りだした。
 スキルで全身を強化してセラさんの後ろをついていく。
 だけど追いつけない。
 たぶんセラさんの方が速いんだろう。
 これに関してはまだセラさんとのステータスの差があるから……と、そんなことを考えながら必死に足を動かす。
 いきなりすぎて訳が分からない。
 僕のさっきの質問は無視されるかとも思った。
 そんな暇はないと言われるかとも。
 だけど、セラさんは意外にも律儀に答えてくれた。

「私は予言というスキルを持っている」

 予言……? スキル名から判断するに未来を予知するスキルだろうか?

「不確定ではあるが未来を予知するスキルだ。確定でもないし、断片的にしか見えない、その上発動タイミングも自分では選べないというひどく曖昧な力だが……」

 つまり、そのスキルがセラさんに何かを視せたんだ。
 セラさんがここまで急かしてくるだけの何かが―――

「王が殺されていた」

「……え?」

 あまりにも唐突な言葉。
 咄嗟に反応できない。
 
「そ、それってまずいんじゃ……?」

 いや、待て。
 何があったのかは分からない。 
 僕にはそんなスキルないから知りようがない。
 だけど、王様が仮に殺されてたなら……みんなは?

「お前の仲間も死んでいた」

「―――ッ!」

 死んでた? いや、だけどありえないことじゃない。
 王様が殺されたなら王城にいるみんなが異変に気付くだろう。
 そうなった場合その王様を殺す何かに巻き込まれることも……
 死ぬ……?
 姫木さんが、秋山さんが、栗田さんが、リリアが―――皆が、死ぬ……?
 ゾッとした。
 背筋に巨大な氷塊を押し当てられたような寒気。

「そ、それならセラさんだけでも先に行ってください! 僕は後で追いつきますから!」

 僕に合わせてたら余計に遅れる。
 先にセラさんだけでも王城に向かって対処するべきだ。
 だけど―――

「それはできない」

 あっさりと拒否される。
 僕が困惑しているとその疑問を先読みしたセラさんが答える。

「予言で視えた未来……惨劇の場にはお前だけがいなかった」

「それは……どういう?」

「おそらく……私がお前の言う通りにしたんだろう。私だけが先行して王城に向かった」

 だから、そうなったと?
 セラさんがいるだけじゃまだ足りないということなのか?

「……つまり、僕がいたら皆が助かる?」

 だけどセラさんは首を振る。

「そこまでは分からない。さっきも言ったがこのスキルはひどく曖昧な力だ。確定した未来を告げるものではない」

 そこまで聞いたところで前方から何かがやってきた。
 開けた視界。
 広がっている草原の先に人のようなものが見える。

「オークか」

 セラさんの呟きと同時に僕もその姿を視界にとらえる。
 オーク……くそ、こんなときに!
 しかも両手では数えきれない数がいる。
 まるで僕たちを足止めするように立ちはだかっていた。
 今は少しでも急がないといけないというのに。
 セラさんの考えも気になる。
 だけどそんな余裕はない。
 今は少しでも早く―――

「セラさん! 回り込みましょう!」

 多少遅れるだろうが、戦闘になるよりはマシだ。
 だけど―――

「問題ない」

 気付けばオークたちの胴体が分かれていた。
 残った下半身。
 その断面から血が噴き出る。
 
「セラさん半端ないですね」

 と、僕の言葉には答えずにセラさんが疾走する。
 それに遅れるようにしてオークの残った肉体が倒れ伏した。
 僕はそれを横目にセラさんについていく。
 そして、ふと気になったことを聞く。

「僕がいた場合の未来は視えなかったんですか?」

 すると、セラさんは「視えた」とだけ簡潔に答えた。
 一瞬だけ間を空けてセラさんが続ける。

「お前はそこで心臓を貫かれていた」

「え?」

 それは、つまり―――

「もう一度言うが確定した未来ではない。あくまでそうなるという可能性だ。
 お前が来なくても仲間は助かるかもしれないし、お前が来てもお前が死ぬとは限らない」

「だけど、その可能性はある……」

「その通りだ」

 なら迷う必要なんてない。
 僕は自分が死なない可能性に賭ける。

「博打だな」

 博打……それも分の悪い賭けに思える。
 正直恐怖はあった。
 だけど……僕はこんな時だというのに笑みを浮かべた。
 セラさんが怪訝そうに振り向いて僕を見る。
 そのままセラさんに言う。
 大丈夫ですよ―――と。
 心の中だけで呟く。

 僕、神様にも勝ったことありますから。




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