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第二章
友情のホットドッグ②
しおりを挟む次の日、ダダンが持ってきてくれたパンは予想を上回る出来で、この世界でできたパンでメーニューが増やせる事を喜んだ。
と言うものの、トルーからいい返事をもらえることはなく、営業開始が遅いのもあり、下準備を済ませてはお願いに、また休みの日もお願いに、トルーの所へ通った。
だけど残念なことにいい返事はもらうことができなかった。
それどころか、どんどん邪険にされるようになった気さえする。
今では門前払いが当たり前だ。
目に見えて項垂れる私の肩を叩きながら
「向こうのソーセージをそのまま使う方向で考えよう。」
とルヴァンは言ってくれるが、どうせならこの世界の人達の作った美味しいもので一緒に何かを作り上げたい。
わがままなのかもしれないけど、自己満足かもしれないけど、何故かこのホットドッグは成功させたい。
ただ、お客様のニーズに合ったものを作るにしても、今、話題になっているうちに新しいものを作りたい。
何時迄もいい返事を貰えない、と言うか返してくれる様子が見えないトルーを待ち続けるのは得策ではないのかもしれない。
「ちょっと考えてみる。」
と返事をすれば、隣のパン屋からダダンが現れた。
「あれ?サラちゃん。」
「あ、ダダン。」
「暗い顔をしてるけど、どうしたの?」
「えーと、それが…」
事のあらましを説明すれば
「サラちゃん、ごめん。」
と突然頭を下げられて驚いた。
「え、え?なんでダダンが謝るの?」
「それは…」
何処か話すのをためらうように、視線を逸らし、あまりの長い沈黙にルヴァンと視線を重ねて首をかしげる。
すると思いもよらない言葉が返ってきた。
「トルーがリンランの事を好きだと知りながら、僕がリンランをデートに誘ったから、僕の作ったパンと一緒に自分が作ったものを使われるのが嫌なんだと思うんだ。」
「「え?」」
二人揃った驚きの声と間抜けな顔は、それはそれは綺麗な事だろう。
色恋が原因だとは思わなかったのだ。
「あ、でも、偶々同じ人を好きになっちゃうのは仕方ないよ、リンラン可愛いし…。」
「いや、リンランの事は可愛いと思うよ。けど恋愛とかって言う感情はないよ。」
「ならなんでデートなんて…。」
ハイセンスなオシャレボーイはプレイボーイって事かな?
そもそもリンランは弄ばれているの?
暴走しそうになる私の肩をルヴァンが支えてくれて、何とかその場でとどまることができた。
「リンランには悪いと思ってる。けど…トルーに近寄る女はみんなトルーと、そして僕と仲良くなって、後々トルーがその子のことを好きになって告白するとひどい事を言って傷付けるんだ。トルーはその内容を教えてくれないけどいつも傷ついた顔をしてる。」
苦虫を潰したような顔をしながら更に続ける。
「それなのに、そんな事があっても僕に馴れ馴れしく話しかけてくるし、トルーとは気まずいから二人で出かけようとか言ってくるんだ。」
えっとー、それは、ダダンに近付く為って事?
「そのせいで昔は仲よかったのに、トルーからは避けられるようになるし、どうせ避けられるならトルーが傷つく前に近く女の本性を暴いてやろうと思って…。」
悲しみに揺れる水色の瞳は静かに影を落とす。
「トルーは兄のような存在なんです。だから幸せになって欲しいのに上手くいかなくて…」
「なら、その気持ちトルーに話そう!」
「えっ?!けどトルーは怒ってるし…。」
「ダダンはトルーと仲直りしたくないの?今のままでいいの?」
「そんな事は!!」
「だったら全部、ぜーんぶ話してスッキリしようよ?」
「けど…。」
「明日!明日もトルーの所に行くから、どうしたいか考えて!もし行くなら例のパンも作ってね!」
ダダンの手を両手で握りしめてブンブン上下に振り回して手を離せば、あとは言い逃げよろしく
「そしたら、明日!トルーの所に行く前に寄るから!またねー。」
少し小走りしながら後ろを振り返り、手を振りその場を離れた。
後からついてきたルヴァンに
「サラ、少し強引すぎないかな?」
と言われたけど
「人の気持ちなんて伝えないとわからないんだから!いつまでもボタンを掛け違えたままだと直すのに時間がかかるし、気付いたならその時に修復しないと。」
ニッと振り向きざまに笑顔を向ければ、一瞬固まったルヴァンが
「参りました。」
と小さく両手を上げていた。
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