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プロローグみたいなもの
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「んー……ここは何処だ?」
気がつくと俺は、真っ白の『部屋』にいた。
あれ?僕は確か---------
「かぁ~―ッ今日も残業だよぉッ!」
「そう言うなよ、しっかりウチの上司は残業代も払ってくれているじゃないか。」
「でもさ、でもさぁ!もう少し早く帰りたいよ私は!!」
「お前が悪いんだろ。きちんと仕事こなせば、定時とはいかなくてもっと早く帰れるのに。僕まで巻き込みやがってお前の仕事だろ?」
「グッ!辛辣じゃないか!私だって頑張ってるわ!」
「頑張ってるのは皆同じだっつうの。それに周りに比べてウチはホワイトな方だぞ。」
「グぅッくそっ!ヨッシャ!今日も飲むぞ!ユウキも勿論来るよな!?」
「ああ。僕が居ないとお前は何時も酒に呑まれるもんな。」
「クッ!ユウキが苛める……。どうせ私は下戸ですよ……」
「あーもう、悪かったよ。言い過ぎた。今日は僕の奢りだからそれでいいだろ?」
「うぉっ!マジ!?ヨッシャ今日は沢山飲むぜぇ!」
彼女はニシシと笑う。
「ハァ…呑まれない程度にだぞ。」
仕事帰り何時ものように、こんな会話をするのは同僚であり親友の加藤真夏だ。
子供の頃から付き合いがあり、迷惑ばかり掛けられてきたが、そのお陰もあってか今ではコイツの撒いた種を処理する係みたいなものになっている。しかし、反対に僕も沢山コイツに助けられて来ている。そんな彼女は大切な親友である。
「なぁッ!聞いてるのか!?」
「はいはい。聞いてますよ。」
そんな他愛もない会話をしていると居酒屋に着き、これでもかという程に愚痴を聞かされた。
「うう……。気持ちわりぃ……。」
「たく……止めたのにあんなに飲むからだよ。」
「すまん。」
「ああ、反省して今後に生かしてくれ。」
「ウェッ!本当に気持ち悪い……。」
「ここで吐くな。止めろ。」
「なぁ……ウプッ!知ってるか?ここの通りで起きた事件。」
「ああ。通り魔だろ?それにその犯人まだ捕まっていないんだってな。」
この通りで起こった連続通り魔事件。犯人は無差別に狙ってやっているとか。
「そうそう怖いよな。背丈や格好はそう…前のあの人みたい……ってえ?」
「どうした?ッ!?」
マナツの指差した方向を見ると沢山とは言えないが多少の人達の何に明らかに刃渡り5cm以上はあるナイフを持った男がとても普通とは言い難い禍々しい感じを漂わせながら、光の無い眼でこちらをみていた。男は小声で何かボソボソと呟いているようだった。
「あ、あれ……。」
「に、逃げるぞ!」
「お、おうッ!」
(ヤバい!アレは正気じゃない!ヤバいッ!刺される!)
しかしナイフを持った男は既に、二人の背後まで迫って来ていた。
(あの男!マナツをッ不味いッ!!)
気付いたら僕はそのままマナツを庇う様に男とマナツの間に入っていた。
「ユウキッ!?」
そんな叫びを上げるが、もう遅かった。
『グサッ!』
そんな音が聞こえた様な気がした。ユウキが自分の腹部を見ると、ナイフが深々と突き刺さっており、ジワジワと赤い染みが広がって行った。男はすぐさまナイフを抜き、もう一度トドメと言わんばかりに突き刺した。
「うわあああ!!!!俺は、俺は悪くないんだ…!皆が、周りの皆が悪いんだ!皆俺を蔑んだ目で見やがって!」
男はブツブツとずっと虚ろな目で呪文の様に唱えていた。しばらくもしない内に警察や人が集まってくる。連続通り魔事件が会ったことで警察も警戒していた様だ。警戒していてもこの様な事件を起こしたその事実に、ユウキは警察を恨んだ。警察が来ると早急に男は取り押さえられた。
「救急車を呼べ!」「人が一人倒れているぞ!」そんな声が飛び交っているようだった。
「ユウキッ!!!!」
親友であるマナツがユウキにすぐさま駆け寄る瞳には涙を貯めている様だ。
「ゴホッ!ほ、本当に災難だ、な。」
「喋るな!ごめん、本当にごめんユウキ…!」
ボロボロと涙を流す。
「全く、仕方が無い奴、だな。」
(喋ると苦しい。熱い。腹部がとても熱い。)
長くは無いだろう。ユウキは自分の今の状態を見てそう判断した。ドクトクと流れる熱い感覚を感じる。意識が薄れていく。
(やり残したことは、無いことはない。でもそこまで大事でもないか。ゆういつ心配の事と言えば隣でボロボロと涙を溢すマナツの事だ。)
「なぁ、ゴホッ!マナツ…最後のお願いがあるんだ…。お前はしっかりやれば出来るんだ。だから、ゴフッ!!」
「わかった!わかったからしっかりやるから、頑張るから、もう喋らないでくれ…お願いだ……!!」
彼女の心配が見てとれる。
「ごめん。僕はもう多分長くない…。今だって意識が途切れそうだ。だからマナツ、、」
「そんなこと言わないでくれ…!死なないでくれ……。」
そんな叶わない願いを聞きながら、僕は最後の願いを力を振り絞って言う。
『僕の分まで、生きてくれ。』
それが僕が今まで助けられてきたことの恩返し。勝手だってわかってる。それでも僕は、続ける。
『は、はは…僕が君の命を救ったんだ。だから僕の分まで、ゴホゴホッ!!頼んだよ』
ああ、意識が消えていく……僕は目を閉じる。
(死後の世界な、んてある、のかなぁ…?)そんなことを考えながら僕は意識を手放した
気がつくと俺は、真っ白の『部屋』にいた。
あれ?僕は確か---------
「かぁ~―ッ今日も残業だよぉッ!」
「そう言うなよ、しっかりウチの上司は残業代も払ってくれているじゃないか。」
「でもさ、でもさぁ!もう少し早く帰りたいよ私は!!」
「お前が悪いんだろ。きちんと仕事こなせば、定時とはいかなくてもっと早く帰れるのに。僕まで巻き込みやがってお前の仕事だろ?」
「グッ!辛辣じゃないか!私だって頑張ってるわ!」
「頑張ってるのは皆同じだっつうの。それに周りに比べてウチはホワイトな方だぞ。」
「グぅッくそっ!ヨッシャ!今日も飲むぞ!ユウキも勿論来るよな!?」
「ああ。僕が居ないとお前は何時も酒に呑まれるもんな。」
「クッ!ユウキが苛める……。どうせ私は下戸ですよ……」
「あーもう、悪かったよ。言い過ぎた。今日は僕の奢りだからそれでいいだろ?」
「うぉっ!マジ!?ヨッシャ今日は沢山飲むぜぇ!」
彼女はニシシと笑う。
「ハァ…呑まれない程度にだぞ。」
仕事帰り何時ものように、こんな会話をするのは同僚であり親友の加藤真夏だ。
子供の頃から付き合いがあり、迷惑ばかり掛けられてきたが、そのお陰もあってか今ではコイツの撒いた種を処理する係みたいなものになっている。しかし、反対に僕も沢山コイツに助けられて来ている。そんな彼女は大切な親友である。
「なぁッ!聞いてるのか!?」
「はいはい。聞いてますよ。」
そんな他愛もない会話をしていると居酒屋に着き、これでもかという程に愚痴を聞かされた。
「うう……。気持ちわりぃ……。」
「たく……止めたのにあんなに飲むからだよ。」
「すまん。」
「ああ、反省して今後に生かしてくれ。」
「ウェッ!本当に気持ち悪い……。」
「ここで吐くな。止めろ。」
「なぁ……ウプッ!知ってるか?ここの通りで起きた事件。」
「ああ。通り魔だろ?それにその犯人まだ捕まっていないんだってな。」
この通りで起こった連続通り魔事件。犯人は無差別に狙ってやっているとか。
「そうそう怖いよな。背丈や格好はそう…前のあの人みたい……ってえ?」
「どうした?ッ!?」
マナツの指差した方向を見ると沢山とは言えないが多少の人達の何に明らかに刃渡り5cm以上はあるナイフを持った男がとても普通とは言い難い禍々しい感じを漂わせながら、光の無い眼でこちらをみていた。男は小声で何かボソボソと呟いているようだった。
「あ、あれ……。」
「に、逃げるぞ!」
「お、おうッ!」
(ヤバい!アレは正気じゃない!ヤバいッ!刺される!)
しかしナイフを持った男は既に、二人の背後まで迫って来ていた。
(あの男!マナツをッ不味いッ!!)
気付いたら僕はそのままマナツを庇う様に男とマナツの間に入っていた。
「ユウキッ!?」
そんな叫びを上げるが、もう遅かった。
『グサッ!』
そんな音が聞こえた様な気がした。ユウキが自分の腹部を見ると、ナイフが深々と突き刺さっており、ジワジワと赤い染みが広がって行った。男はすぐさまナイフを抜き、もう一度トドメと言わんばかりに突き刺した。
「うわあああ!!!!俺は、俺は悪くないんだ…!皆が、周りの皆が悪いんだ!皆俺を蔑んだ目で見やがって!」
男はブツブツとずっと虚ろな目で呪文の様に唱えていた。しばらくもしない内に警察や人が集まってくる。連続通り魔事件が会ったことで警察も警戒していた様だ。警戒していてもこの様な事件を起こしたその事実に、ユウキは警察を恨んだ。警察が来ると早急に男は取り押さえられた。
「救急車を呼べ!」「人が一人倒れているぞ!」そんな声が飛び交っているようだった。
「ユウキッ!!!!」
親友であるマナツがユウキにすぐさま駆け寄る瞳には涙を貯めている様だ。
「ゴホッ!ほ、本当に災難だ、な。」
「喋るな!ごめん、本当にごめんユウキ…!」
ボロボロと涙を流す。
「全く、仕方が無い奴、だな。」
(喋ると苦しい。熱い。腹部がとても熱い。)
長くは無いだろう。ユウキは自分の今の状態を見てそう判断した。ドクトクと流れる熱い感覚を感じる。意識が薄れていく。
(やり残したことは、無いことはない。でもそこまで大事でもないか。ゆういつ心配の事と言えば隣でボロボロと涙を溢すマナツの事だ。)
「なぁ、ゴホッ!マナツ…最後のお願いがあるんだ…。お前はしっかりやれば出来るんだ。だから、ゴフッ!!」
「わかった!わかったからしっかりやるから、頑張るから、もう喋らないでくれ…お願いだ……!!」
彼女の心配が見てとれる。
「ごめん。僕はもう多分長くない…。今だって意識が途切れそうだ。だからマナツ、、」
「そんなこと言わないでくれ…!死なないでくれ……。」
そんな叶わない願いを聞きながら、僕は最後の願いを力を振り絞って言う。
『僕の分まで、生きてくれ。』
それが僕が今まで助けられてきたことの恩返し。勝手だってわかってる。それでも僕は、続ける。
『は、はは…僕が君の命を救ったんだ。だから僕の分まで、ゴホゴホッ!!頼んだよ』
ああ、意識が消えていく……僕は目を閉じる。
(死後の世界な、んてある、のかなぁ…?)そんなことを考えながら僕は意識を手放した
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