100万ℓの血涙

唐草太知

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町はずれで、それは起きていた。
「あがあぁ・・・」
無数の人間が、偽物のエナトリアを惨殺していた。
「あれは・・・自分が最初にクルバスさんに会った時に襲われた人と同じ・・・どうしてここに」
レスキィは不思議そうな顔をする。
「やめろ!」
俺は急いで駆け付ける。
そして、見ず知らずの人間に剣を向けたのだった。
「だ、誰だ!」
男は驚いて抵抗する。
「戦うな、その男は敵じゃない」
ギルシュバインが叫ぶ。
「社長・・・どういうことですか?」
男は動きを止める。
俺はその瞬間、蹴り飛ばす。
「消えろ!」
「ぐっ」
男は吹き飛ぶ。
そして、地面に倒れるのだった。
「クルバス・・・やはり来たか」
「どういうことだ、ギルシュバイン」
「どういうことって、見てわかるだろう。
世界の敵を殺してるのさ」
「世界の敵って、それはかつての仲間だろうが!」
俺は叫ぶ。
「かつての・・・仲間?」
レスキィは驚いていた。
「そうかもしれないな」
「ギルシュバイン、てめぇ!」
「エナトリアは、すでに世界の敵となってる。
誰かと協力して殺すのは誰かに求められる仕事だと思うが?」
「金のために殺してるのか?」
「あぁ」
ギルシュバインは冷たく言い放つ。
「エナトリアが・・・本物の彼女が居るかもしれないんだぞ!」
「別に本物のエナトリアが見つからなくても僕はいいと思ってるんだ」
「なんだと?」
「君は少し誤解してる、僕はね、エナトリアが心配だからこうしてるんじゃない、君が心配だから行動してるんだ」
「どういう意味だ」
「かつて恋人同士だった者が血で血を洗う戦いを繰り広げる。それは・・・とても辛いことじゃないか」
「そんなことはどうでもいい、エナトリアに会えるのであれば、贋作を壊したところで罪悪感など無い」
「本当にそうだろうか、僕にはそうは思えない」
「・・・」
「もしも・・・僕に愛する人が居たとして・・・その人が誰かを殺す瞬間を何度も目撃したり、何度も僕に憎悪を向けてきたり・・・そして、何度も僕に愛の言葉を囁く。しかも、全て似た顔で、さらには似た声で、何度も何度も・・・それを目の当たりにして辛くないと本気で思えるのか?いいや、僕には思えない」
「だったらどうした」
「クルバス・・・君が背負う必要はないんだ」
「なに?」
「僕が代わりに果たそう、エナトリアを殺す。
僕は仲間だったかもしれないが、恋人ではなかった。だから関係性としては僕の方が浅い。
なら、心の傷も・・・僕の方が浅くなるはずだ」
「お前じゃ本物は見つけられない」
「別にいいんだ、それでも」
「はぁ?」
「君は少し、エナトリアに執着しすぎなんだ。
この世界にはもっとたくさんの女性が居る。
別にエナトリアに限定しなくてもいいじゃないか。
例えば・・・ほら、あの子とか」
「レスキィのことか?」
「自分?」
急に名前が出て驚いていた。
「ふふ・・・あの子と言ってすぐに名前が出るじゃないか。随分と気にしてるな、あの子を」
「俺の知り合いが少ないだけだ」
「それでもいいさ、エナトリアじゃないのならね」
「どうして彼女を否定する。
お前だって仲間だっただろう?」
「確かに仲間さ、彼女に助けられた場面もある。
でもね、今は違う。彼女は正気を失い、人々を襲ってる。そんな人間をいつまでも仲間だと言い続けてる君の方が変なんだよ、クルバス」
「・・・」
俺は黙る。
「僕はね、こう思ってる。本物も、偽物も関係なく、全てのエナトリアを殺す。そうすれば彼女は世界的な悪として名を終えることとなるだろう。世界は彼女の死に何の疑問も抱かなくなる。クルバス。君は自由になれるんだ」
「自由?」
「君はもう戦わなくてよくなるんだ。
彼女の事を、エナトリアのことを忘れさえすればね。
誰も君を責めはしない、世界的な悪女を愛してる方が世界は君を責めるだろう、でもね、君がエナトリアさえ、執着しなければ他の女性と平和に過ごすことが出来る。別にあのレスキィって子じゃなくてもいい。
何なら、僕の会社の社員を紹介してもいいんだ。
皆、戦闘は得意だし、家事だって得意な子も沢山居るんだ、クルバス、君はもう戦わなくてもいいんだ。
後の事は僕ら社員で戦うから」
「俺が戦わなくていい?」
「そうだよ、そのために僕は長い時間をかけて兵力を集めたんだ。数多のエナトリアを滅ぼすために、まぁ、殆どの人はエナトリアのことを知りはしなけどね、だから本物とか偽物とかの区別は出来ない。でも、それでいいじゃないか。だろう、クルバス?」
「それは出来ない相談だ、ギルシュバイン」
「どうしてだ、僕はこんなにも君に幸せを望んでるのに。どうして君は拒否するんだ」
「エナトリアが待ってるんだ・・・俺を」
「なに?」
「聞こえる気がするんだ、寂しいと、彼女がそう言ってる気がするんだ。だから見つけてあげないと。
それは俺じゃなきゃダメなんだよ、ギルシュバイン」
「どうしても・・・君は止めないんだね」
「あぁ、そうなるな」
「・・・」
ギルシュバインは斧を構える。
「社長・・・私たちも」
従業員たちが一斉に武器を構える。
「悪いが、この戦いは僕1人にやらせてくれ」
「はい・・・どうか無事で」
従業員たちは見守る。
「レスキィ、お前も手を出すな」
「でも・・・いえ、分かりました」
レスキィは俺の傍を離れる。
「助かる・・・さて」
俺は剣を構える。
そして、ギルシュバインに近づく。
「エナトリアの聖剣は今や君の物か」
「いずれ返す物だけどな」
「ずっと持っていても構わない」
「返すって言ってるだろうが!」
俺は剣を下から上に向けて切り上げる。
しかし、ギルシュバインをそれを防ぐ。
「身長差があるから、君はどうしても下からの攻撃になる。
だろ、クルバス?」
「くっ」
俺の身長は180cm。
対してギルシュバインは身長は193cm。
その差は13cmもある。
例えるならば人が使うであろう眼鏡ほどのサイズ。
その差は些細なものかもしれないが、
こと戦いにおいては致命的になる。
だが、この状況を覆す方法も無くは無い。
というのも、エナトリアが持っていた聖剣にはある効果がある。
それは光を集めることでサイズが自在に変化するというもの。
剣の長さは120cm。
対するギルシュバインの斧は140cmだ。
通常ならば押し負けるだろうが、聖剣を持ってるこちらにも部はある。決して敗北が決まってる戦いではない。
何処かに好機がある。
「クルバス、君の聖剣は光を集めることで長さを変えられる。
魔王との戦いでも、その力は見たことあるよ」
「悪い所だけ覚えてるんだな」
やはり知り合いと戦うと手の内がバレてるのが辛い。
「良い所だと思うけど」
「それじゃ、どうするよ?」
「そうだね・・・こうしようかな」
ギルシュバインはどんどん近づいてくる。
「ぐっ」
俺は攻撃できずに防御ばかりになる。
不利的状況が続く。
「伸縮自在と言っても、持ち手が慣れてなければ真価は発揮できない。そういう意味で言えばエナトリアの方が上手だったね」
剣を伸ばしていれば遠くの敵にもダメージが与えられる。
しかし、接近を許してしまうと、急いで長さを戻さないといけなくなる。そうなると、剣が扱いにくくなる欠点がある。
イメージとしては野球のバッターのイメージだ。
長いバットだから、どんな球も打ち返すことが出来るか?
いいや、難しいだろう。
それは手元の所に球が飛んで来たら身体を逸らして打たなければいけなくなる。そういう通常とは違う動きを要求されるため、身体には負担がかかってしまう。
それでも、防がなければ自身に当たるので防御せざるを得ない。
そこをギルシュバインがついてきたのだ。
「やっぱり、俺は剣より槍だ・・・早く返したいよ」
俺は何とか防御に成功する。
斧が俺の眼前に迫る。
「っと、失言だったな」
「俺には正論に聞こえるがな」
「君を諦めさせるには、もう一度眠らせる必要がある。
拘束するのは友として可哀そうだと考えていたが・・・僕が甘かった、君は諦めるという言葉を知らないようだ。ならば、目隠しをして身体も拘束し、君を完全に監禁しよう。そうすれば、僕はその間、エナトリアの集団を滅ぼしてやれる。安心して欲しい、トイレや、食事などは全て僕の社員に世話させてあげるから」
「必要ない」
「全く、話を聞いてくれなくて困るよ、君は!」
ギルシュバインが回転する。
あれは、奴の得意技だ。
来る。
俺は身構える。
「戦斧鬼(せんぷうき)!」
ギルシュバインは斧を持って、その場で回転する。
すると台風のようなものが発生して、
徐々に俺に近づく。
あれに命中すると細切れのミンチ肉になるのは必須だ。
「手加減してくれると期待してたんだが、随分と本気だな」
「クルバスが相手だからね、これぐらいが丁度いいのさ!」
「輝け、聖剣ソルダート!」
俺は剣を輝かせる。
光を集めて、力を貯める。
「来るか」
「黄金断空切(おうごんだんくうせつ)」
空に向かって切り上げる技。
「跡を残すな、戦斧鬼!」
ギルシュバインは回転を強める。
そして、俺とぶつかった。
「おおっ」
剣と斧がぶつかる。
「ぬぐああああああっ」
ギルシュバインが叫ぶ。
「いっけぇえええええええ!」
俺は剣を押し込む。
「ぐっ・・・あああああああ!」
俺は押し合いに勝つ。
そして、斧をはじき上げた。
「くっ」
斧は遠くに3mほど先に飛ばされる
「俺の勝ちだな、ギルシュバイン」
「何故だ・・・何故僕が負けた」
「少々、ずるい方法だが」
俺は聖剣を大きくしたり、小さくしたりする。
「魔力が・・・そうか、お前」
「聖剣がお前と接触した際にお前から魔力を貰ってた。
お前とつばぜり合いを繰り返せば繰り返すほど、
お前と俺の魔力差は大きくなっていく。
という戦法さ」
「ドレイン作戦って所か」
「正解だ」
「ふっ、やられたよ、全く・・・」
ギルシュバインは倒れこむ。
「悪いが俺は先に行く」
「やはり、止まってはくれないのか・・・クルバス」
「あぁ」
「頼む・・・負けて言うセリフではないが、僕は君のことが嫌いでこうした訳じゃないんだ・・・クルバス、君に幸せになって欲しかっただけなんだ」
「何を勘違いしてるんだ、ギルシュバイン?」
「なに?」
「俺がエナトリアを殺して歩くのは不幸になりに行くためじゃないんだ。幸せになるために行くんだ」
「クルバス・・・」
「俺を信じてくれ、ギルシュバイン。
俺は・・・必ずエナトリアの本物を見つけてみせる。
そうしたら、お前の所に帰って来るさ・・・だから心配しなくていい。俺は幸せになるから」
「クルバス・・・」
ギルシュバインは涙を流す。
「社長・・・」
「悪かったな、付き合わせて。僕は少し休・・・む」
ギルシュバインは眠りにつく。
「社長!」
社員たちがギルシュバインに駆け寄る。
ここはもう大丈夫だろう。
「行くぞ、レスキィ」
俺は彼女を呼ぶ。
すると、レスキィは俺の傍にやってくる。
ついてくるのを確認したら、この場を後にするのだった。
「クルバスさん」
2人きりになった時に、レスキィが話しかけてくる。
「どうした」
「あの、ドレスアーマーの女性・・・エナトリアさんって言うんですか?」
「あぁ」
「あの人は・・・恋人だったんですか?」
「そう・・・だったんですね。
あの時、幻惑魔導士が言っていた辛い旅の意味がようやく分かりました」
「何だ、お前も止めろって言うのか?」
「いいえ、エナトリアさんを幸せにするために。
そして、クルバスさん、貴方が幸せになるために。
大事なことなんでしょう?なら、自分に止める権利はありません。むしろ協力したいくらいです」
「レスキィ・・・」
「旅は道連れ、最後までお供しますよ。
クルバスさん」
「あぁ・・・分かった」
そうして俺たちは歩き出すのだった。


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