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最終話
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それは綺麗な青だった。
ブルートルマリンのような淡い色。
その美しい青い瞳が俺の事を見つめてる。
「私・・・は」
エナトリアが目を覚ます。
「おはよう、エナトリア」
「君の・・・顔が良く見える・・・今まで霞んでいたけれど・・・はっきりと見える」
俺の膝で眠るエナトリアは俺に向かって手を伸ばす。
そして頬を撫でる。
「ずっと会いたかった。
君が居ない世界は悪夢のように長く感じた」
「待たせて済まなかった・・・クルバス」
「あぁ・・・」
「ようやく起きたわね、エナトリア」
「ルル・・・」
「うちが回復させてあげたのよ。
全く・・・感謝して欲しいものだわ」
「ありがとう・・・ルル・・・」
「素直にお礼を言わないでよ、バカ」
ルルはツンツンする。
「僕も君に会いたかった・・・」
「ギルシュバイン」
「あぁ・・・そうだ・・・覚えててくれてありがとう」
「臆病な君の事はとてもよく覚えてる。
私が仲間にしたいと思ってるのは臆病な人だからね」
「それは初めて知ったな」
「臆病な人は勇敢な人よりも長生きするからね。悲しみを背負わなくていい」
エナトリアはそんなことを言う。
「そう・・・だったんだね」
「君が生きてて嬉しいよ、ギルシュバイン」
「エナトリア・・・」
「君は・・・初めて見る顔だね」
エナトリアはレスキィの方を見る。
「あの・・・新人のレスキィです」
「こっちに来て」
「は・・・はい」
レスキィはエナトリアに近づく。
「戦ってる最中、君の事は見えていた」
「そう・・・だったんですね」
「優しい人だ・・・戦ってる最中でも・・・致命傷を狙わないようにしてるね?」
「気づいてたんですね」
「あぁ・・・」
「エナトリアさん・・・」
「少し疲れた、このまま寝ていたい」
「あぁ・・・俺が背負って帰る」
「悪いね、クルバス」
「さぁ・・・帰ろう・・・家に」
俺はエナトリアを背負って家に帰るのだった。旅が終わり・・・月日が立つ。
数か月後の出来事だった。
家の中で俺は飾りつけを行う。
色付きの紙をハサミで切断。
長方形の形に整えたら、丸く畳んで輪っかを作る。
それをのりで張り付けて作る。
「くるばーーーーーーーーす!」
エナトリアが飛んでくる。
そして勢いよく抱き着いてくる。
「どうした」
俺は作業を中断する。
「ぎゅーっ」
エナトリアは強く抱きしめてくる。
「痛いよ、エナトリア」
「痛いくらいでいいじゃないか、私が元気な証拠だ」
「まぁ・・・そうだね」
ドアをノックする音が聞こえる。
「お客さんだ、悪いがエナトリア。
出てくれないか?」
「分かった」
エナトリアは玄関に向かう。
そして、出てきたのはレスキィだった。
「お久しぶりです、2人とも」
「んーーっ、会いたかった!」
エナトリアはレスキィを抱きしめる。
「苦しいですよ、エナトリアさん」
「私を救ってくれた1人だもん、歓迎しないとね」
「あの、これお土産です」
かご一杯に緑、黄、赤、白、黒と色とりどりの野菜があった。
「いっぱいね!」
「今日のために使えないかと」
「OK!上がって!」
エナトリアはレスキィを招待する。
「あの・・・いいんでしょうか。
勇者一行のメンバーに自分何かが入って」
レスキィは申し訳なさそうな顔をする。
「つまらない考えね!
そんなこと気にしないで一緒に料理作りましょう!」
エナトリアは強引にレスキィを家の中に招待する。
「はい!」
レスキィは笑みを浮かべるのだった。
「レスキィは野菜を切って、私はチキンを焼くわ!」
「分かりました」
レスキィは台所に立つ。
「スパイス各種に、塩を振りかけるわ。
これで味は間違えなく、ケンタ〇キーよ!」
エナトリアは豪快にやる。
「何だかショーみたいです」
レスキィは感銘を受ける。
「ここからが本番よ」
エナトリアは聖剣をチキンに刺す。
「国の秘宝を、いいんですか!?」
レスキィは驚いていた。
「へーき、へーき」
エナトリアはけらけら笑う。
そのまま聖剣で刺したチキンを庭にある炭火焼きセットに乗せる。
炭火に魔法で点火する。
そうして、鉄の網の上でチキンが焼かれていく。
炭火の香ばしさと、チキンの香りが混ざり、食欲をそそる香りが家の中にも来るのだった。
だから、俺は思わず家の中から声を投げかける。
「芸術的かつ、学術的かつ、歴史的価値があるであろう、聖剣を、BBQ用の鉄串代わりに使おうって発想になるのは多分、世界を探してもエナトリアぐらいだろうな」
俺はそんなことを言う。
「やっぱり・・・エナトリアさんって変です」
レスキィはそんなことを言う。
「世界の学者も泣いてるだろうな、聖剣の持ち主がこんな風に扱うんだから」
俺は呆れる。
「ひっどーい、せっかくチキン焼いてあげてるのに。
そんな言い方ってある?」
エナトリアは怒る。
「普通に鉄串でいいだろ」
俺はまともなことを言う。
「こっちの方が味が良いのよねぇ」
エナトリアはチキンの刺さった聖剣を振り回す。
そこに、誰かがやって来る。
「いい香りがするね」
「ギルシュバイン!」
エナトリアはギルシュバインに抱き着く。
「こんにちわ」
「今ね、チキンを焼いてるのよ。
貴方にも食べさせてあげる」
エナトリアは得意げだ。
「チキンもいいけど、これも無いとかなって思って」
ギルシュバインは袋から取り出す。
そこにあったのはワインの瓶と、ジュースの瓶だ。
「気が利くわね!」
エナトリアは嬉しそうだ。
「せっかく勇者が復帰したんだ。
ワインでも飲むべきだろう?」
ギルシュバインはウィンクして見せた。
「それじゃ、美味しいの焼かないとね!」
エナトリアは自信満々に言うのだった。
「これ・・・焦げてるんじゃないの?」
いつの間にか来ていた魔女のルルが言う。
「きゃーーっ、焦げちゃう!」
エナトリアはチキンの傍に行くのだった。
「ったく、危なっかしいわね」
ルルはため息を吐く。
「よぅ、久しぶりだな」
俺はルルに挨拶をする。
「別に来たくなかったけれど、
食べ物を腐らせるのは勿体ないかなって思って」
ルルはずいと俺に箱を押し付けてくる。
「何だよこれ」
「ケーキ!」
「食後に貰うよ」
俺は箱を受け取る。
「勘違いしないでね、
別にあんたのためじゃないから。
たまたま、店の前を通りかかったら見た目が悪いってことで売れ残ったらしいから、フードロスの観点から買ってあげただけよ、でも、買ったはいいけど・・・1人じゃ食べきれないなぁって思っただけだからね!」
「分かってるよ」
俺は苦笑する。
ルルはいったん、こういう強がりを言わないとダメな性格なんだなと思う。彼女の面白い所であり、可愛い所でもある。
「さぁ~チキンが焼けたわ!」
どんとエナトリアはチキンを皆に見せる。
こんがりと焼けており、いい色だった。
「俺も準備出来てる」
俺は部屋の飾りつけを行っていた。
色とりどりの紙が飾られてるので、カラフルに見える。華やかな印象を与えるのだった。
「自分も切り終えました!」
レスキィは皿にカットした野菜を乗せる。
チキンを取り囲むようにトマトを置いて、下にはレタスを敷く。味を変えるように輪切りにしたレモンも置く。チキンに好みでかけるようだ。
「さぁ~、皆さま。不肖、この私めの復帰を祝いましてぇ~、乾杯の音頭を取らせていただきます。
さぁ~、グラスの用意はよろしいですか?」
エナトリアが司会を務める。
「僕は大丈夫」
ワインを持つ。
「自分も平気です」
オレンジジュースを持つ。
「うちもね~」
ウィスキーを持つ。
「俺もOKだ」
麦茶を持つ。
「それじゃ~乾杯!」
エナトリアが音頭を取る。
「乾杯!」
皆でグラスをぶつけあうのだった。
「あぁ、割れました!」
レスキィのが割れる。
乾杯の時に調子乗ってグラスをぶつけるとこうなる。
「へーき、へーき」
エナトリアはけらけら笑う。
「皆さん、飲んでてくださ~い」
レスキィは新しいのを取りに行った。
「が~」
エナトリアは豪快に樽で酒を飲む。
「凄い、飲み方だな」
俺はそんな感想を漏らす。
「いっぱい飲んでも、クルバスが起こしてくれるから大丈夫」
エナトリアは俺に謎の信頼を寄せる。
「まぁ、いいか」
俺は好きに飲ませることにした。
「僕も負けないぞ・・・それっ」
ギルシュバインはワイン瓶を一気に飲む。
「そういえばお前も酒好きだったな」
「あははは・・・実はエナトリアに少し憧れてそうしてるんだ」
ギルシュバインはそんなことを言う。
「そうなのか?」
「うん・・・なんだかその豪快な飲み方がかっこいいなって」
ギルシュバインはそんなことを言う。
「悪い参考だな」
俺は呆れる。
「何言ってんだよ、最高じゃんか」
エナトリアはご機嫌だ。
「だから今日は僕も飲むぞ!」
「お~。飲め、飲め」
エナトリアがどんどん酒を進める。
「ただいま戻りました」
レスキィが座る。
「お帰り」
俺は告げる。
「チキン食べてもいいですか?」
レスキィが尋ねる。
「どんどん食え~。私の歓迎会だからなぁ」
エナトリアはご機嫌だった。
酒の所為なのか、復帰したばかりだからなのか、
妙にハイテンションだった。
「これ、美味しいです」
レスキィは感動する。
「だろ~聖剣で焼くと美味いんだ、これが」
エナトリアはそんなことを言う。
「多分、この事実に知ってるのは世界で俺たちだけだろうな」
俺はそんなことを言う。
「私のお陰だな」
エナトリアは俺の事を見てニヤッと笑う。
「はいはい、そうですよ」
俺はむつけるように言う。
「本当に不思議ね、鉄串で焼くのと味が違う」
ルルも感動する。
「どうだ~、私は料理が上手なんだぞ」
エナトリアはご機嫌だ。
そうして、一通り食事を終える。
残ったのはケーキだけだ。
「そろそろ皆、どうだろう。ケーキは?」
俺は尋ねる。
皆は特に反論することもなく、OKを出す。
なので、俺はケーキを持ってくる。
「へぇ・・・これは」
エナトリアはケーキを見て感心する。
そこに刺さっていたロウソクは5本。
俺、エナトリア、レスキィ、ギルシュバイン、ルル。
明らかに意識してるだろう。
「何よ」
ルルは顔を赤くしてる。
「可愛いだから、もう、ルルちゃんは」
エナトリアはルルに抱き着く。
「抱き着くなって、バカ!
この酔っ払い!」
「ぐへへ・・・若い女はええ香りがするのぉ」
エナトリアは下卑た顔をする。
「オヤジ化するな!」
ルルはツッコむ。
「あ・・・」
俺はあることに気づく。
それは席が全員埋まってることだ。
「どうしたんですか、クルバスさん?」
レスキィが不思議そうに尋ねる。
「いや・・・何でもない」
俺は1人ほくそ笑む。
「それじゃ、明かりつけるわよ」
ルルは水晶から小さな炎を出す。
そして、ロウソクに点火する。
「雰囲気を出すために、明かりを消してくれ」
エナトリアが指示する。
「分かった・・・ふっ」
ギルシュバインは傍にあるランプの灯りを息で消す。すると、ロウソクの明かりだけが部屋を灯す。
「5本丁度だ、それじゃ皆で息を消そう」
俺は提案する。
「いいね、クルバス。君の案は最高だ」
エナトリアはにこっと笑う。
「僕もそう思うよ」
「自分も素敵だと思います」
「まぁ・・・うちも悪くないと思う」
「それじゃ、皆行くぞ・・・せーのっ」
俺たちは同時に火を消すのだった。
そうして世界は暗闇に包まれるのだった。
ブルートルマリンのような淡い色。
その美しい青い瞳が俺の事を見つめてる。
「私・・・は」
エナトリアが目を覚ます。
「おはよう、エナトリア」
「君の・・・顔が良く見える・・・今まで霞んでいたけれど・・・はっきりと見える」
俺の膝で眠るエナトリアは俺に向かって手を伸ばす。
そして頬を撫でる。
「ずっと会いたかった。
君が居ない世界は悪夢のように長く感じた」
「待たせて済まなかった・・・クルバス」
「あぁ・・・」
「ようやく起きたわね、エナトリア」
「ルル・・・」
「うちが回復させてあげたのよ。
全く・・・感謝して欲しいものだわ」
「ありがとう・・・ルル・・・」
「素直にお礼を言わないでよ、バカ」
ルルはツンツンする。
「僕も君に会いたかった・・・」
「ギルシュバイン」
「あぁ・・・そうだ・・・覚えててくれてありがとう」
「臆病な君の事はとてもよく覚えてる。
私が仲間にしたいと思ってるのは臆病な人だからね」
「それは初めて知ったな」
「臆病な人は勇敢な人よりも長生きするからね。悲しみを背負わなくていい」
エナトリアはそんなことを言う。
「そう・・・だったんだね」
「君が生きてて嬉しいよ、ギルシュバイン」
「エナトリア・・・」
「君は・・・初めて見る顔だね」
エナトリアはレスキィの方を見る。
「あの・・・新人のレスキィです」
「こっちに来て」
「は・・・はい」
レスキィはエナトリアに近づく。
「戦ってる最中、君の事は見えていた」
「そう・・・だったんですね」
「優しい人だ・・・戦ってる最中でも・・・致命傷を狙わないようにしてるね?」
「気づいてたんですね」
「あぁ・・・」
「エナトリアさん・・・」
「少し疲れた、このまま寝ていたい」
「あぁ・・・俺が背負って帰る」
「悪いね、クルバス」
「さぁ・・・帰ろう・・・家に」
俺はエナトリアを背負って家に帰るのだった。旅が終わり・・・月日が立つ。
数か月後の出来事だった。
家の中で俺は飾りつけを行う。
色付きの紙をハサミで切断。
長方形の形に整えたら、丸く畳んで輪っかを作る。
それをのりで張り付けて作る。
「くるばーーーーーーーーす!」
エナトリアが飛んでくる。
そして勢いよく抱き着いてくる。
「どうした」
俺は作業を中断する。
「ぎゅーっ」
エナトリアは強く抱きしめてくる。
「痛いよ、エナトリア」
「痛いくらいでいいじゃないか、私が元気な証拠だ」
「まぁ・・・そうだね」
ドアをノックする音が聞こえる。
「お客さんだ、悪いがエナトリア。
出てくれないか?」
「分かった」
エナトリアは玄関に向かう。
そして、出てきたのはレスキィだった。
「お久しぶりです、2人とも」
「んーーっ、会いたかった!」
エナトリアはレスキィを抱きしめる。
「苦しいですよ、エナトリアさん」
「私を救ってくれた1人だもん、歓迎しないとね」
「あの、これお土産です」
かご一杯に緑、黄、赤、白、黒と色とりどりの野菜があった。
「いっぱいね!」
「今日のために使えないかと」
「OK!上がって!」
エナトリアはレスキィを招待する。
「あの・・・いいんでしょうか。
勇者一行のメンバーに自分何かが入って」
レスキィは申し訳なさそうな顔をする。
「つまらない考えね!
そんなこと気にしないで一緒に料理作りましょう!」
エナトリアは強引にレスキィを家の中に招待する。
「はい!」
レスキィは笑みを浮かべるのだった。
「レスキィは野菜を切って、私はチキンを焼くわ!」
「分かりました」
レスキィは台所に立つ。
「スパイス各種に、塩を振りかけるわ。
これで味は間違えなく、ケンタ〇キーよ!」
エナトリアは豪快にやる。
「何だかショーみたいです」
レスキィは感銘を受ける。
「ここからが本番よ」
エナトリアは聖剣をチキンに刺す。
「国の秘宝を、いいんですか!?」
レスキィは驚いていた。
「へーき、へーき」
エナトリアはけらけら笑う。
そのまま聖剣で刺したチキンを庭にある炭火焼きセットに乗せる。
炭火に魔法で点火する。
そうして、鉄の網の上でチキンが焼かれていく。
炭火の香ばしさと、チキンの香りが混ざり、食欲をそそる香りが家の中にも来るのだった。
だから、俺は思わず家の中から声を投げかける。
「芸術的かつ、学術的かつ、歴史的価値があるであろう、聖剣を、BBQ用の鉄串代わりに使おうって発想になるのは多分、世界を探してもエナトリアぐらいだろうな」
俺はそんなことを言う。
「やっぱり・・・エナトリアさんって変です」
レスキィはそんなことを言う。
「世界の学者も泣いてるだろうな、聖剣の持ち主がこんな風に扱うんだから」
俺は呆れる。
「ひっどーい、せっかくチキン焼いてあげてるのに。
そんな言い方ってある?」
エナトリアは怒る。
「普通に鉄串でいいだろ」
俺はまともなことを言う。
「こっちの方が味が良いのよねぇ」
エナトリアはチキンの刺さった聖剣を振り回す。
そこに、誰かがやって来る。
「いい香りがするね」
「ギルシュバイン!」
エナトリアはギルシュバインに抱き着く。
「こんにちわ」
「今ね、チキンを焼いてるのよ。
貴方にも食べさせてあげる」
エナトリアは得意げだ。
「チキンもいいけど、これも無いとかなって思って」
ギルシュバインは袋から取り出す。
そこにあったのはワインの瓶と、ジュースの瓶だ。
「気が利くわね!」
エナトリアは嬉しそうだ。
「せっかく勇者が復帰したんだ。
ワインでも飲むべきだろう?」
ギルシュバインはウィンクして見せた。
「それじゃ、美味しいの焼かないとね!」
エナトリアは自信満々に言うのだった。
「これ・・・焦げてるんじゃないの?」
いつの間にか来ていた魔女のルルが言う。
「きゃーーっ、焦げちゃう!」
エナトリアはチキンの傍に行くのだった。
「ったく、危なっかしいわね」
ルルはため息を吐く。
「よぅ、久しぶりだな」
俺はルルに挨拶をする。
「別に来たくなかったけれど、
食べ物を腐らせるのは勿体ないかなって思って」
ルルはずいと俺に箱を押し付けてくる。
「何だよこれ」
「ケーキ!」
「食後に貰うよ」
俺は箱を受け取る。
「勘違いしないでね、
別にあんたのためじゃないから。
たまたま、店の前を通りかかったら見た目が悪いってことで売れ残ったらしいから、フードロスの観点から買ってあげただけよ、でも、買ったはいいけど・・・1人じゃ食べきれないなぁって思っただけだからね!」
「分かってるよ」
俺は苦笑する。
ルルはいったん、こういう強がりを言わないとダメな性格なんだなと思う。彼女の面白い所であり、可愛い所でもある。
「さぁ~チキンが焼けたわ!」
どんとエナトリアはチキンを皆に見せる。
こんがりと焼けており、いい色だった。
「俺も準備出来てる」
俺は部屋の飾りつけを行っていた。
色とりどりの紙が飾られてるので、カラフルに見える。華やかな印象を与えるのだった。
「自分も切り終えました!」
レスキィは皿にカットした野菜を乗せる。
チキンを取り囲むようにトマトを置いて、下にはレタスを敷く。味を変えるように輪切りにしたレモンも置く。チキンに好みでかけるようだ。
「さぁ~、皆さま。不肖、この私めの復帰を祝いましてぇ~、乾杯の音頭を取らせていただきます。
さぁ~、グラスの用意はよろしいですか?」
エナトリアが司会を務める。
「僕は大丈夫」
ワインを持つ。
「自分も平気です」
オレンジジュースを持つ。
「うちもね~」
ウィスキーを持つ。
「俺もOKだ」
麦茶を持つ。
「それじゃ~乾杯!」
エナトリアが音頭を取る。
「乾杯!」
皆でグラスをぶつけあうのだった。
「あぁ、割れました!」
レスキィのが割れる。
乾杯の時に調子乗ってグラスをぶつけるとこうなる。
「へーき、へーき」
エナトリアはけらけら笑う。
「皆さん、飲んでてくださ~い」
レスキィは新しいのを取りに行った。
「が~」
エナトリアは豪快に樽で酒を飲む。
「凄い、飲み方だな」
俺はそんな感想を漏らす。
「いっぱい飲んでも、クルバスが起こしてくれるから大丈夫」
エナトリアは俺に謎の信頼を寄せる。
「まぁ、いいか」
俺は好きに飲ませることにした。
「僕も負けないぞ・・・それっ」
ギルシュバインはワイン瓶を一気に飲む。
「そういえばお前も酒好きだったな」
「あははは・・・実はエナトリアに少し憧れてそうしてるんだ」
ギルシュバインはそんなことを言う。
「そうなのか?」
「うん・・・なんだかその豪快な飲み方がかっこいいなって」
ギルシュバインはそんなことを言う。
「悪い参考だな」
俺は呆れる。
「何言ってんだよ、最高じゃんか」
エナトリアはご機嫌だ。
「だから今日は僕も飲むぞ!」
「お~。飲め、飲め」
エナトリアがどんどん酒を進める。
「ただいま戻りました」
レスキィが座る。
「お帰り」
俺は告げる。
「チキン食べてもいいですか?」
レスキィが尋ねる。
「どんどん食え~。私の歓迎会だからなぁ」
エナトリアはご機嫌だった。
酒の所為なのか、復帰したばかりだからなのか、
妙にハイテンションだった。
「これ、美味しいです」
レスキィは感動する。
「だろ~聖剣で焼くと美味いんだ、これが」
エナトリアはそんなことを言う。
「多分、この事実に知ってるのは世界で俺たちだけだろうな」
俺はそんなことを言う。
「私のお陰だな」
エナトリアは俺の事を見てニヤッと笑う。
「はいはい、そうですよ」
俺はむつけるように言う。
「本当に不思議ね、鉄串で焼くのと味が違う」
ルルも感動する。
「どうだ~、私は料理が上手なんだぞ」
エナトリアはご機嫌だ。
そうして、一通り食事を終える。
残ったのはケーキだけだ。
「そろそろ皆、どうだろう。ケーキは?」
俺は尋ねる。
皆は特に反論することもなく、OKを出す。
なので、俺はケーキを持ってくる。
「へぇ・・・これは」
エナトリアはケーキを見て感心する。
そこに刺さっていたロウソクは5本。
俺、エナトリア、レスキィ、ギルシュバイン、ルル。
明らかに意識してるだろう。
「何よ」
ルルは顔を赤くしてる。
「可愛いだから、もう、ルルちゃんは」
エナトリアはルルに抱き着く。
「抱き着くなって、バカ!
この酔っ払い!」
「ぐへへ・・・若い女はええ香りがするのぉ」
エナトリアは下卑た顔をする。
「オヤジ化するな!」
ルルはツッコむ。
「あ・・・」
俺はあることに気づく。
それは席が全員埋まってることだ。
「どうしたんですか、クルバスさん?」
レスキィが不思議そうに尋ねる。
「いや・・・何でもない」
俺は1人ほくそ笑む。
「それじゃ、明かりつけるわよ」
ルルは水晶から小さな炎を出す。
そして、ロウソクに点火する。
「雰囲気を出すために、明かりを消してくれ」
エナトリアが指示する。
「分かった・・・ふっ」
ギルシュバインは傍にあるランプの灯りを息で消す。すると、ロウソクの明かりだけが部屋を灯す。
「5本丁度だ、それじゃ皆で息を消そう」
俺は提案する。
「いいね、クルバス。君の案は最高だ」
エナトリアはにこっと笑う。
「僕もそう思うよ」
「自分も素敵だと思います」
「まぁ・・・うちも悪くないと思う」
「それじゃ、皆行くぞ・・・せーのっ」
俺たちは同時に火を消すのだった。
そうして世界は暗闇に包まれるのだった。
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そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
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