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第4話 夜の教室
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茉央の声を聞いてる間はいいのだが。
言葉が途切れるとあっと言う間に恐怖心が桜を襲う。
「夜の校舎に入って行くシーン、って良く小説や映画に有るじゃない?
少し憧れていたのよね」
茉央の声が廊下に響く。
そんな廊下を進藤桜は歩いてる。
電灯が照らしだす床には木目が見えて、足で踏むとキュイキュイと音を立てる。
木の素材と言うのは昼の光の中見れば、生物の温かみが感じられるのかもしれない。
こんな暗がりの中だと、何か潜んでいるのではないか、そんな思いが先に立つ。
「ここが2年生の教室よね」
「うーん……おそらく」
玄関の有る場所にあった部屋は教室らしくなかった。
下駄箱に、保健室、職員室。
次の階が1年生の教室とすれば、その更に上の此処が2年生の教室。
教室は正面に黒板があって、その上には時計。
時計はガラス面にひびが入り、針は動きを止めている。
少し立派な教壇があって対面に生徒のものであろう机と椅子が並ぶ。
進藤桜は見慣れた風景に少し安堵する。
「へー、全部木製なのね」
と言いながら教室の奥の方へ進む茉央に着いて行く。
確かに椅子や机、その脚が安っぽいスチール製では無い。
全てが木製。
桜が試しに椅子を引っ張ってみると、脚の長さが不揃いでガクガクする。
「これで一日中授業受けるのはシンドそうだな」
「そう?
バランスボールみたいに、不安定を楽しめばいいんじゃない」
勉強しながら?
それにバランスボールだって、不安定を楽しむためのモノじゃないだろう。
後ろの方には、木で出来た棚。
ロッカーなのか、一応扉は閉まるが、鍵さえついてない。
「カビた臭いがするわ。
誰がお弁当でも入れっぱなしにしたんじゃない」
「食べ物なんて……とっくの昔に干からびてる。
ロッカーそのものにカビが生えてるんだ」
「いやね。
胞子が飛んできそう」
「次行きましょう」
茉央も桜もロッカーには触れず、机だけ見て回った。
この教室には何も無い。
隣の教室も同じ。
全く同じ造りの教室。
机と椅子があって、後方には木の棚。
こちらは先ほどと違って派手なカビの臭いは漂っていない。
「ホントウ?
まだカビた臭いしてるわよ」
「このロッカーじゃないよ。
校舎そのもの、木造なんだ。
建物そのものにカビが発生してるんだよ」
先程の教室では怖くて扉を開けたくなかったが、ロッカーの扉を開けて見る。
正方形に近い形の空間。
中にはホコリだけ、何も入ってはいない。
「桜、入り口側からね」
茉央が教室の奥に移動して、ロッカーの扉を開け始める。
彼女が電灯を持って行ってしまうと、桜の居る方は暗くなってしまうのだけど。
仕方なく、スマホを取り出しライトモードに。
懐中電灯ほど強力な明るさじゃ無いが、ロッカーの中を見るくらいなら十分。
なのになんだか、心細い。
茉央が近くにいないから?
教室の奥では乱暴に木の扉を開け閉めしてるでは無いか。
隣に居ないだけで不安を感じるなんて。
どれだけ、後輩に頼っているのか。
さすがに自分が情けなく感じられて。
茉央の方を見ない様にロッカーの扉を開けていく。
なにやら衣服の様な物が奥に詰め込まれていて。
腐った運動着らしいと気づいて顔をしかめてしまう。
茉央の方も似たようなモノにぶち当たったらしい。
「もう!
なんなの、幽霊どころか。
ホコリとカビと腐った雑巾しか無いじゃないの。
やってられないわ」
プリプリしている少女を眺める。
怒った顔も見惚れてしまう。
眉間にシワの寄った表情もまた魅力的なのだ。
あれ。
運動着の隅になにやらキラリと光を反射する物がある。
「ん……」
汚れた衣服に出来るだけ触らない様にして、取り上げて見る。
これ。
職員室で見た物に似てる気がする。
等と思っていると白い手が伸びてきて、光るアクサセリーが取り上げられた。
もちろん、この場には茉央しかいない。
「へええ。
ネックレス、少し素敵ね」
「……ネックレスとペンダントって違うのかな」
「この場合一緒よ。
首に着けるアクサセリーなら、なんでもネックレス。
その中でもペンダントトップがある物がペンダント。
ペンダントはネックレスの一種って事ね。
でもペンダントトップがあれば、首につけない物でもペンダントって呼ぶわね。
カバンに着ける飾りとか」
常識よ。
と言う様に茉央は滔々と話す。
話す事が全て真実かは分からないが、言葉を聞くだけで楽しい。
茉央は手にしたペンダントを自分の首に着けようとしている。
「どう、似合う?」
「似合うけど……止めなよ。
泥棒になる」
「このまま置いて行ったら、建物と一緒に壊されるのよ。
泥棒じゃないわ。
破壊の手からアクセサリーを救い出したの」
首にキラリと光る瑪瑙のペンダントを着け、茉央はそんな事を言った。
言葉が途切れるとあっと言う間に恐怖心が桜を襲う。
「夜の校舎に入って行くシーン、って良く小説や映画に有るじゃない?
少し憧れていたのよね」
茉央の声が廊下に響く。
そんな廊下を進藤桜は歩いてる。
電灯が照らしだす床には木目が見えて、足で踏むとキュイキュイと音を立てる。
木の素材と言うのは昼の光の中見れば、生物の温かみが感じられるのかもしれない。
こんな暗がりの中だと、何か潜んでいるのではないか、そんな思いが先に立つ。
「ここが2年生の教室よね」
「うーん……おそらく」
玄関の有る場所にあった部屋は教室らしくなかった。
下駄箱に、保健室、職員室。
次の階が1年生の教室とすれば、その更に上の此処が2年生の教室。
教室は正面に黒板があって、その上には時計。
時計はガラス面にひびが入り、針は動きを止めている。
少し立派な教壇があって対面に生徒のものであろう机と椅子が並ぶ。
進藤桜は見慣れた風景に少し安堵する。
「へー、全部木製なのね」
と言いながら教室の奥の方へ進む茉央に着いて行く。
確かに椅子や机、その脚が安っぽいスチール製では無い。
全てが木製。
桜が試しに椅子を引っ張ってみると、脚の長さが不揃いでガクガクする。
「これで一日中授業受けるのはシンドそうだな」
「そう?
バランスボールみたいに、不安定を楽しめばいいんじゃない」
勉強しながら?
それにバランスボールだって、不安定を楽しむためのモノじゃないだろう。
後ろの方には、木で出来た棚。
ロッカーなのか、一応扉は閉まるが、鍵さえついてない。
「カビた臭いがするわ。
誰がお弁当でも入れっぱなしにしたんじゃない」
「食べ物なんて……とっくの昔に干からびてる。
ロッカーそのものにカビが生えてるんだ」
「いやね。
胞子が飛んできそう」
「次行きましょう」
茉央も桜もロッカーには触れず、机だけ見て回った。
この教室には何も無い。
隣の教室も同じ。
全く同じ造りの教室。
机と椅子があって、後方には木の棚。
こちらは先ほどと違って派手なカビの臭いは漂っていない。
「ホントウ?
まだカビた臭いしてるわよ」
「このロッカーじゃないよ。
校舎そのもの、木造なんだ。
建物そのものにカビが発生してるんだよ」
先程の教室では怖くて扉を開けたくなかったが、ロッカーの扉を開けて見る。
正方形に近い形の空間。
中にはホコリだけ、何も入ってはいない。
「桜、入り口側からね」
茉央が教室の奥に移動して、ロッカーの扉を開け始める。
彼女が電灯を持って行ってしまうと、桜の居る方は暗くなってしまうのだけど。
仕方なく、スマホを取り出しライトモードに。
懐中電灯ほど強力な明るさじゃ無いが、ロッカーの中を見るくらいなら十分。
なのになんだか、心細い。
茉央が近くにいないから?
教室の奥では乱暴に木の扉を開け閉めしてるでは無いか。
隣に居ないだけで不安を感じるなんて。
どれだけ、後輩に頼っているのか。
さすがに自分が情けなく感じられて。
茉央の方を見ない様にロッカーの扉を開けていく。
なにやら衣服の様な物が奥に詰め込まれていて。
腐った運動着らしいと気づいて顔をしかめてしまう。
茉央の方も似たようなモノにぶち当たったらしい。
「もう!
なんなの、幽霊どころか。
ホコリとカビと腐った雑巾しか無いじゃないの。
やってられないわ」
プリプリしている少女を眺める。
怒った顔も見惚れてしまう。
眉間にシワの寄った表情もまた魅力的なのだ。
あれ。
運動着の隅になにやらキラリと光を反射する物がある。
「ん……」
汚れた衣服に出来るだけ触らない様にして、取り上げて見る。
これ。
職員室で見た物に似てる気がする。
等と思っていると白い手が伸びてきて、光るアクサセリーが取り上げられた。
もちろん、この場には茉央しかいない。
「へええ。
ネックレス、少し素敵ね」
「……ネックレスとペンダントって違うのかな」
「この場合一緒よ。
首に着けるアクサセリーなら、なんでもネックレス。
その中でもペンダントトップがある物がペンダント。
ペンダントはネックレスの一種って事ね。
でもペンダントトップがあれば、首につけない物でもペンダントって呼ぶわね。
カバンに着ける飾りとか」
常識よ。
と言う様に茉央は滔々と話す。
話す事が全て真実かは分からないが、言葉を聞くだけで楽しい。
茉央は手にしたペンダントを自分の首に着けようとしている。
「どう、似合う?」
「似合うけど……止めなよ。
泥棒になる」
「このまま置いて行ったら、建物と一緒に壊されるのよ。
泥棒じゃないわ。
破壊の手からアクセサリーを救い出したの」
首にキラリと光る瑪瑙のペンダントを着け、茉央はそんな事を言った。
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