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貧民街の魔少年

引っ繰り返す男Ⅲ

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「……知った顔はいるかい」

「ジャネル叔母さんの飼ってる連中ね」
「ジャネル叔母は持ってる店は全て上手くいっていない筈なのに、一時期金回りが良かった」

「ジャネル叔母はサラ様の5番目の娘さんだ」

アーニーが俺に教えてくれる。
ちなみに長男の娘がケイト、4女の息子がアーニーらしい。

いったい何人子供がいるんだ。

「自分が知る限り息子が5人、娘が8人だ」

ホントか。
バスケチームどころかサッカーチームが作れる。


「ジャネル!
 あの娘ただじゃすまさないよ。
 アタシに恥をかかせてくれたね」

サラ子爵と黒服どもは怒りながら去っていった。

また礼をしに来ると言っていた。
嫌いな女じゃないが、あまり会いたくは無い。
どっと疲れる。

カニンガムは酒を付き合わせようとしたが「心労が激しい」と言って帰って行った。
お前は何もしていないじゃないか。

デミアンとサマラも帰った。
報奨金は一時金でも人数が居た分それなりの額になった。
子供達の食料を買うのに不足は無いだろう。


元々デミアンの家は街の薬屋だった。
ファミリーに金を払わずにいたため、店を潰され貧民街へ追い出されたのだ。

デミアンは薬の知識を受け継ぎ、子供たちの治療をし治療薬の一部を闇ルートで販売した。
売買役は貧民街上がりの若いのだ。

その売買役が『赤いレジスタンス』の始まりとなっている。
デミアンによるとあの薬は自衛のために作ったもので、売ってはいないと言う。


「コーザンは?
 ヤツも貧民上がりか?」

「違うよ、用心棒として売り込んできたんだ。
 実際強い人は必要だったから」

「……でもあの男『赤いレジスタンス』の名前を勝手に使ってるフシが有るし……」

「……あの薬のレシピが行方不明になった事が有る。
 その後しばらくしたら戻ってきた。
 誰か盗んで書き写して返したんだ」

言外にコーザンが犯人だと言っている。


「デミアン、これを持っていけ」
「これは金貨じゃないか?!
 こんなに貰えない。
 さっきも報奨金を貰ったばかりだ」

「どうせ、拾い物さ。
 良いか、隠しておいてイザというとき使え!
 子供が金貨を見せびらかしてたらトラブルの元だ」
「分かった、大事にする」

金貨1枚稼ぐには普通の商売なら3カ月は懸かるだろう。
子供に持たせるには危ない額だが、デミアンならへまはしないだろう。



俺は宿屋に帰らずに寄り道した。
昨日今日と良く働いたのだ。
自分にご褒美したってバチは当たらない。

大通りからは外れてるが、それなりに上等な店に行く。
俺は良い酒と良い料理をジャンジャン頼んだ。

報奨金の前渡し分は全部デミアンに渡したが、調査次第で後金が出るはずだ。
馬車や武具の金も入る。
半分はデミアンに渡すとしても余裕は有る。

店の女を横に座らせる。
豪遊する俺に女は愛想が良かった。

「キミも飲むかい?」
「お客さん、景気がいいのね」

「ああ、臨時収入が有ったんだ」
「すごーい、冒険者でしょう。
 どこかでお宝でも手に入れたの?」

「盗賊を退治したのさ。
 最近山賊が出るってウワサだったろう。
 なにを隠そう、あれを退治したのがこのおれさ」
「うっそー?!
 そんな強そうに見えないわ」

「いや、人は見かけによらないっていうだろう。
 なんなら今夜試してみるかい」

良い感じに酔っぱらって店を出る。


路地裏をウロウロした後、また別の店に入る俺。
そこでも上等の酒を注文する。

前の店で食べ過ぎたから、今度は飲む専門だ。
葡萄酒を飲んで、エールで乾杯し、カクテルを注文して、蒸留酒を胃に流し込む。
ベロベロだった。

そのまま道をウロウロしていた俺は客引きの男に捕まる。

「……お客さん……いい娘いるよ」
「……ヒック……この辺で一番安い娼館はどこだ?」

「おいおい旦那。
 安いとこは値段の分、女もバケモノしかいないよ。
 そんなとこよりオススメの店があるんだ」
「良いんだよ。
 俺はゲテモノ趣味なんだ」

そのまま客引きと女の居る店に行く。

街はずれに近い場所だ。
パッと見では飯屋のようだったが、中に入るとそれなりにムーディーな飾りつけがされていた。

少し暗くした店内、女が何人か俺のテーブルに来る。
その中から選ぶ仕組みだとボーイが俺に説明する。
選んだ女と上の階に行き、朝まで過ごすのだ。

俺は身体が少しばかり大きいが、顔立ちの整った娘と二階へ行く。
ホットパンツにタイツ、色っぽい服装だ。
階段を上がる時、後ろから下着が見える。


「……ついてきてるわ」
「気が早いヤツだ。初日からか」
「何軒も店を廻った甲斐があったじゃない」
「2.3日そっち持ちで豪遊しても良かったんだがな」

俺の前を歩いていた男が部屋に入っていく。
やたら体格の良い男に美女がしなだれかかっている。
扉を閉めたら即、始めそうな雰囲気だ。

俺達もその隣の部屋に入る。
俺は部屋に入ると、水を飲みベッドに寝そべる。
なんせ俺は酔っぱらっている。

露出度の高い格好をした女が俺の横に寄り添う。

「どうせだから、ホントにやるかい?」
「光栄だがね……そんな時間は無さそうだ」

部屋の窓ガラスが割れる音がした。
二階の窓だってのに、外から誰か入ってくる。

「ジェイスン、ずいぶん楽しそうだな」

僧侶姿の男、コーザンだった。
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