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第34話 空のデート
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ハンプティはペンテシレイアから逃げおおせていた。私は用が有りまして、と女宰相からそそくさと距離を取ったハンプティなのである。
すでに場所は村外れも近い森の中。
くっ!
私ともあろう者が、気圧された!
相手は宰相ではあるが、年齢的には自分と変わらない程度の女性。
なのに一方的に手のひらで転がされるように脅かされた。
彼女はなんと言っていた?
アーサー・マーティンの情報……あの男に何か有るのか。
宰相が気にする程のナニカ。
気にはなるが、今は王都に戻る事にしよう。報告事項も出来たし、いつまでもこんな辺鄙な場所にいたくはない。そう思うハンプティである。
KuGYAAAAAAAAAAAAAA!!
その時凄まじい音が辺りに鳴り響いた。
見上げたハンプティの視界には何かが飛んで行くのが見えた。
「は、ははははははは。
気のせいだな。
見間違いだ。
女宰相に脅されたのがそんなに神経にこたえたのか。
飛竜《ワイバーン》がこんな人里の近くにいるものか。
そんなモノが居たら大騒ぎになるに決まってるじゃないか。
ハンプティ、何か村で騒ぎになっているか?
何も、誰も騒いじゃいない。
すなわち!
アレは飛竜《ワイバーン》じゃ無いと言う事だ」
論理的な帰結に満足するハンプティ・ダンディであった。
ちなみに村人達はもう何度か見て慣れている。
ガロレィ村長も言っていた。
「ああ、あれは少し大きいがアーサーさんとこの馬だそうじゃ」
「そうなのか、翼があった気もするが……」
「アレだよ、あんた。
翼のある馬、ペガサスってヤツだよ」
「おおーっ! 天馬《ペガサス》!!
聞いた事あるな」
「さぁっすが、アーサーさん。
元高名な冒険者だけあるね」
「おお、あの人がいてくれると安心だぜ」
ことほど左様に辺境の村人と言うモノは逞しく、都の人間から見て非常識な事態にもすぐ対応する応用力を持っているモノなのである。
「ほーら、ソフィアちゃん。
リントヴルムちゃんに乗るのハジメテよねぇ。
可愛いわよ、リントヴルムちゃん」
「リントヴルム、今日は子供を連れてるからな。
いつもよりゆっくり飛んでくれよ」
飛竜《ワイバーン》の背に跨っているのはアーサーとアリスであった。背に跨ってるととりあえず表現はしたが、実際のサイズ感はそんなものでは無い。巨大なリントヴルムの首筋にちょこんと二人は掴まっているのであった。
「ほーら、アレがオーディンヴァレー村よ~
上から見ると小さいわね」
と、アリスは赤ん坊のソフィアを抱き上げ、眼下に広がる景色を見せる。
うわーーーっ?!?!
高いたかい! タカイたかい高い高いーーーーーっ!!!!
怖いやん、怖いにきまってるやん。
かあちゃん、やめて!
いや、お母さま、オーマイマミー。
頼む、後生や。
オシッコちびってまう。
ソフィアは泣きそうになってるのだが、アリスは気付いてない。
村は森や畑で構成され、人家がところどころに見える。緑の多い平和な村。
しかし。
その途中から崖のように地面が裂けているのである。
大地に割れ目が広がり、村の外の荒野を渡りその先の山脈まで地割れは続いている。
「ホントだ。
思ったよりデッカイ地割れになっちゃってる」
「そうね。
火山の影響なんでしょ。ブッソウね。」
「……う、うん。
あははは。
安心しろアリス。
もう火山は活動しない」
「そうなの?
なんでそんな事分かるの、アーサー」
「それは…………
ホラ今日ペテンシレーアに来て貰ったじゃん。
彼女に聞いたんだよ。
彼女いろいろ知り合い多いから、間違い無いってさ」
「……ふーん、そうなんだ」
ソフィアはそんな両親の会話など耳に入らない。
なんじゃこれ?!
あっしはナニに乗ってるんじゃ?
ゴ〇ラ?!
いや、ゴ〇ラは飛ばんかったか。
するってーと、モス〇? キングギ〇ラ?
どっちにしろ怪獣やんかーーーー!!!
だってウルト〇マンじゃないのは間違いない。
背に乗ってるからその全貌は良く分からないが、少なくともウルト〇マンは蝙蝠のような翼は生やして無いだろう。
頭部には角っぽいナニカもにょきにょき生えてるし、背から尻尾にかけてはウロコちっくな肌なのだ。
しかもたまに叫び声を上げる。ギャアアアァアアアと悪魔の様な雄叫びが聞こえるのである。
アクマ?!
アクマなんか?!
あっしアクマに生贄として捧げられたりするんか。
助けて、にいちゃん!!!
既にオシメの中に軽く漏らしてしまったソフィアなのである。
「アーサー、わたしたち此処に来て良かったわよね」
「ん、アリス急にどうした?」
「平和な村だわ。
わたしの野菜を育てるにも良いし、村の人達も親切だわ」
「ああ、ここに来るまで忙しかったもんな。
……ペテンシレイアもエカテリーナもひどいんだよな。
魔王を追い返したらもう好きにしていい、とか言ってたくせに。
やれパレードだとか、ほれ辺境にモンスターの残党が出たとか。
いつまでもこき使ってさ」
「わたしも、ゴメンなさい。
村に来るのが遅くなっちゃったの、わたしのせいね。
わたしの料理楽しみにしてる人がたくさんいたから……
急には店を止められなくて、料理人にレシピ教えたりチェーンが軌道に乗るまで時間かかっちゃった」
「そんなの、キミは悪くないさ。
結局格安の物件に引っ越し出来たんだ。
良かったんだよ」
「そうね。
家族で暮らせて、うるさい人も少なくていい場所だわ」
「ナイトも元気になったもんな」
「そうよ、あの子子供だってのに変に深刻な顔で黙りこくってる事が多くて……
ホントに心配だったの」
「ここに来て友達も出来たし……
ひひひ、こないだカワイコちゃんと一緒に歩いてるの見ちゃったぜ」
「ウソッ?!
彼女なの、早すぎない?!
ああ……でも8歳だから、初恋はわたしだってもっと早かったかしら」
「アリスの初恋!?
相手は俺じゃないの!」
「ああ、でも。
まだ少しナイトの事は心配だわ.
あの子ったら最近…………
剣相手に喋ってるの。
なんだか黒い剣が伝説の魔剣だと思い込んでるみたいで……
剣から話しかけられて、それに答えるように話してる素振りなの」
「ああ。
それは……
アリス、心配するな。
男の子なら必ず通る道なんだ。
気にしないでやってくれ」
「……そうなの?
じゃあ気づかないフリしてればいいのかしら」
「うん、そうだね。
あっ……くれぐれも言っておくけど。
もう少しナイトが大きくなってもその事でからかうのはやめてあげてくれ。
特に…………女の子が家に遊びに来たりなんかして、その時にそれをネタなんかにされた日には…………
ぐはぁっ!
うっううううぅ……うぐわああああああ!!!
いかん。
自分がその立場だったらと想像するだけでダメージを受けてしまうっ!」
「……分かった!
分かったから、泣かないでアーサー」
そんな二人は現在空の上を飛んでいるのだ。
リントヴルムがゆっくりと宙を舞う。
その下には辺境の景色が広がっている。
少し離れて村が見える。どこにでもある平凡な辺境の村。と言ってもその地面に亀裂が入ってしまっているので、平和で牧歌的な風景から少しばかり遠ざかってしまっている。
しかし、アリスもアーサーもそんな亀裂のことなんかまったく気にしていないのである。
「アリス、俺キミと一緒に居れて幸せだ」
「まあ、アーサーったら……
わたしも幸せよ」
アーサー・マーティンとアリス・マーティンの顔を日の光が照らす。空の上のデートを楽しみながら二人はキスをした。
一般的な辺境のごく普通の夫婦は現在幸せなのである。
「一般的じゃないっ!
一般的な訳あるかーーっ
空の上飛んでる時点でもうフツーじゃないんだよっ!
当たり前の事言わせんなよっ!
常識だろ!
当然だろ!
明らかにごく普通じゃないんだよーーーーっ!!!!!!」
誰がそう言おうとも、アーサーとアリスは平凡なスローライフを楽しむ夫婦なのであった。
【第一部完】 続くかどうかは知らない。
次回は一回番外編です。
すでに場所は村外れも近い森の中。
くっ!
私ともあろう者が、気圧された!
相手は宰相ではあるが、年齢的には自分と変わらない程度の女性。
なのに一方的に手のひらで転がされるように脅かされた。
彼女はなんと言っていた?
アーサー・マーティンの情報……あの男に何か有るのか。
宰相が気にする程のナニカ。
気にはなるが、今は王都に戻る事にしよう。報告事項も出来たし、いつまでもこんな辺鄙な場所にいたくはない。そう思うハンプティである。
KuGYAAAAAAAAAAAAAA!!
その時凄まじい音が辺りに鳴り響いた。
見上げたハンプティの視界には何かが飛んで行くのが見えた。
「は、ははははははは。
気のせいだな。
見間違いだ。
女宰相に脅されたのがそんなに神経にこたえたのか。
飛竜《ワイバーン》がこんな人里の近くにいるものか。
そんなモノが居たら大騒ぎになるに決まってるじゃないか。
ハンプティ、何か村で騒ぎになっているか?
何も、誰も騒いじゃいない。
すなわち!
アレは飛竜《ワイバーン》じゃ無いと言う事だ」
論理的な帰結に満足するハンプティ・ダンディであった。
ちなみに村人達はもう何度か見て慣れている。
ガロレィ村長も言っていた。
「ああ、あれは少し大きいがアーサーさんとこの馬だそうじゃ」
「そうなのか、翼があった気もするが……」
「アレだよ、あんた。
翼のある馬、ペガサスってヤツだよ」
「おおーっ! 天馬《ペガサス》!!
聞いた事あるな」
「さぁっすが、アーサーさん。
元高名な冒険者だけあるね」
「おお、あの人がいてくれると安心だぜ」
ことほど左様に辺境の村人と言うモノは逞しく、都の人間から見て非常識な事態にもすぐ対応する応用力を持っているモノなのである。
「ほーら、ソフィアちゃん。
リントヴルムちゃんに乗るのハジメテよねぇ。
可愛いわよ、リントヴルムちゃん」
「リントヴルム、今日は子供を連れてるからな。
いつもよりゆっくり飛んでくれよ」
飛竜《ワイバーン》の背に跨っているのはアーサーとアリスであった。背に跨ってるととりあえず表現はしたが、実際のサイズ感はそんなものでは無い。巨大なリントヴルムの首筋にちょこんと二人は掴まっているのであった。
「ほーら、アレがオーディンヴァレー村よ~
上から見ると小さいわね」
と、アリスは赤ん坊のソフィアを抱き上げ、眼下に広がる景色を見せる。
うわーーーっ?!?!
高いたかい! タカイたかい高い高いーーーーーっ!!!!
怖いやん、怖いにきまってるやん。
かあちゃん、やめて!
いや、お母さま、オーマイマミー。
頼む、後生や。
オシッコちびってまう。
ソフィアは泣きそうになってるのだが、アリスは気付いてない。
村は森や畑で構成され、人家がところどころに見える。緑の多い平和な村。
しかし。
その途中から崖のように地面が裂けているのである。
大地に割れ目が広がり、村の外の荒野を渡りその先の山脈まで地割れは続いている。
「ホントだ。
思ったよりデッカイ地割れになっちゃってる」
「そうね。
火山の影響なんでしょ。ブッソウね。」
「……う、うん。
あははは。
安心しろアリス。
もう火山は活動しない」
「そうなの?
なんでそんな事分かるの、アーサー」
「それは…………
ホラ今日ペテンシレーアに来て貰ったじゃん。
彼女に聞いたんだよ。
彼女いろいろ知り合い多いから、間違い無いってさ」
「……ふーん、そうなんだ」
ソフィアはそんな両親の会話など耳に入らない。
なんじゃこれ?!
あっしはナニに乗ってるんじゃ?
ゴ〇ラ?!
いや、ゴ〇ラは飛ばんかったか。
するってーと、モス〇? キングギ〇ラ?
どっちにしろ怪獣やんかーーーー!!!
だってウルト〇マンじゃないのは間違いない。
背に乗ってるからその全貌は良く分からないが、少なくともウルト〇マンは蝙蝠のような翼は生やして無いだろう。
頭部には角っぽいナニカもにょきにょき生えてるし、背から尻尾にかけてはウロコちっくな肌なのだ。
しかもたまに叫び声を上げる。ギャアアアァアアアと悪魔の様な雄叫びが聞こえるのである。
アクマ?!
アクマなんか?!
あっしアクマに生贄として捧げられたりするんか。
助けて、にいちゃん!!!
既にオシメの中に軽く漏らしてしまったソフィアなのである。
「アーサー、わたしたち此処に来て良かったわよね」
「ん、アリス急にどうした?」
「平和な村だわ。
わたしの野菜を育てるにも良いし、村の人達も親切だわ」
「ああ、ここに来るまで忙しかったもんな。
……ペテンシレイアもエカテリーナもひどいんだよな。
魔王を追い返したらもう好きにしていい、とか言ってたくせに。
やれパレードだとか、ほれ辺境にモンスターの残党が出たとか。
いつまでもこき使ってさ」
「わたしも、ゴメンなさい。
村に来るのが遅くなっちゃったの、わたしのせいね。
わたしの料理楽しみにしてる人がたくさんいたから……
急には店を止められなくて、料理人にレシピ教えたりチェーンが軌道に乗るまで時間かかっちゃった」
「そんなの、キミは悪くないさ。
結局格安の物件に引っ越し出来たんだ。
良かったんだよ」
「そうね。
家族で暮らせて、うるさい人も少なくていい場所だわ」
「ナイトも元気になったもんな」
「そうよ、あの子子供だってのに変に深刻な顔で黙りこくってる事が多くて……
ホントに心配だったの」
「ここに来て友達も出来たし……
ひひひ、こないだカワイコちゃんと一緒に歩いてるの見ちゃったぜ」
「ウソッ?!
彼女なの、早すぎない?!
ああ……でも8歳だから、初恋はわたしだってもっと早かったかしら」
「アリスの初恋!?
相手は俺じゃないの!」
「ああ、でも。
まだ少しナイトの事は心配だわ.
あの子ったら最近…………
剣相手に喋ってるの。
なんだか黒い剣が伝説の魔剣だと思い込んでるみたいで……
剣から話しかけられて、それに答えるように話してる素振りなの」
「ああ。
それは……
アリス、心配するな。
男の子なら必ず通る道なんだ。
気にしないでやってくれ」
「……そうなの?
じゃあ気づかないフリしてればいいのかしら」
「うん、そうだね。
あっ……くれぐれも言っておくけど。
もう少しナイトが大きくなってもその事でからかうのはやめてあげてくれ。
特に…………女の子が家に遊びに来たりなんかして、その時にそれをネタなんかにされた日には…………
ぐはぁっ!
うっううううぅ……うぐわああああああ!!!
いかん。
自分がその立場だったらと想像するだけでダメージを受けてしまうっ!」
「……分かった!
分かったから、泣かないでアーサー」
そんな二人は現在空の上を飛んでいるのだ。
リントヴルムがゆっくりと宙を舞う。
その下には辺境の景色が広がっている。
少し離れて村が見える。どこにでもある平凡な辺境の村。と言ってもその地面に亀裂が入ってしまっているので、平和で牧歌的な風景から少しばかり遠ざかってしまっている。
しかし、アリスもアーサーもそんな亀裂のことなんかまったく気にしていないのである。
「アリス、俺キミと一緒に居れて幸せだ」
「まあ、アーサーったら……
わたしも幸せよ」
アーサー・マーティンとアリス・マーティンの顔を日の光が照らす。空の上のデートを楽しみながら二人はキスをした。
一般的な辺境のごく普通の夫婦は現在幸せなのである。
「一般的じゃないっ!
一般的な訳あるかーーっ
空の上飛んでる時点でもうフツーじゃないんだよっ!
当たり前の事言わせんなよっ!
常識だろ!
当然だろ!
明らかにごく普通じゃないんだよーーーーっ!!!!!!」
誰がそう言おうとも、アーサーとアリスは平凡なスローライフを楽しむ夫婦なのであった。
【第一部完】 続くかどうかは知らない。
次回は一回番外編です。
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