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『秋は栗なのか芋なのか』の章
第29話
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「輝子、ここは古い家ですし。
部屋に鍵も無いです。
一緒に住むと言うのは少し考えた方が……」
「古い家なのは承知してます。
この際、建て替えるのは如何でしょう?
耐震構造になってるとは思えません。
東京には必ず大地震が来ると言われてます」
六郎さんと輝子ちゃんは何やら言い合っている。
「しかしですね」
「私は昔からこの家で六郎さんと住むのに憧れていましたし」
「それはアナタが小学生の頃の話でしょう」
何となく疎外感感じて淋しくなっちゃう和泉さんだ。
そんな和泉さんの方に輝子ちゃんは顔を向ける。
「昔は良く言っていました。
『テルは六郎さんのお嫁さんになる』」
輝子ちゃんが言う。
お嫁さんっ?
何故か和泉さんの顔を見て挑むように言うのだ。
「和泉さん、輝子さんが小さい頃の話ですよ。
本当に小さい子供の頃」
「ああ」
小っちゃい子がパパのお嫁さんになるって言うような、そんな話。
「そうですね。
でも今でもそのつもりだと言ったらどうします?」
輝子ちゃんは和泉さんを見ながらそう言った。
「輝子?! 輝子さん……いったい何を……」
「六郎さん、今日は六郎さんの部屋で寝て良いですか?」
「いやっ、この居間で寝てください。
布団は持ってきます」
「この部屋は広くて落ち着かない。
大きいガラスで庭からも丸見えじゃないですか。
私は六郎さんと一緒が良いです。
昔の思い出話をしましょう」
えーと、えーと。
今でもそのつもり、というのは。
六郎さんのお嫁さんになるつもり。
六郎さんの部屋で寝るっ?!
女子高生が?!
キレイ目の美少女が。
そんなバカな。
「輝子ちゃんっ。
あたしの部屋で寝よっ」
和泉さんのお部屋。
長尾家の二階は和泉さんの部屋だけ。
本当は六畳二間だったのだけどフスマを外して一間にしてしまった。
キレイに片付いてるかと言うとそうでもない。
一階は六郎さんが毎日掃除。
古い家だけど、キレイにしてるのがすぐ分かる。
二階は和泉さんのスペース。
六郎さんはあまり立ち入らないようにしてる。
入るのは朝、なかなか起きない和泉さんを起こす為にくらい。
輝子ちゃんは勉強をしている。
和泉さんのパソコンデスク。
PCを退ければ勉強するに十分。
「輝子ちゃん、ベッド使う?」
「お気遣いなく、畳に布団敷くので充分です」
うーん。
和泉さんは床を眺める。
畳が見えるとこが無い。
着替えやら、私物やらが床にやたら転がってるのだ。
気が付くと輝子ちゃんがジト目で見てる。
明らかに片付いてない部屋を見回してる。
チラリと和泉さんに向けた眼つきは冷たい。
「あははは。
普段はもっと片付いてるんだよ。
ちょうど夏物と冬物の服入れ替えたりしてて。
ホラ土曜に掃除しようとしてたの」
完全にウソな訳でも無い。
毎週土曜はお掃除してる。
といっても見えるとこに掃除機かけてるだけというウワサも。
そんな事ないもん。
今週は夏物クリーニングに出すつもりだったもん。
そうするとモノが減るからそれで全面掃除する予定だったもん。
心の中で言い訳してしまう和泉さん。
部屋に鍵も無いです。
一緒に住むと言うのは少し考えた方が……」
「古い家なのは承知してます。
この際、建て替えるのは如何でしょう?
耐震構造になってるとは思えません。
東京には必ず大地震が来ると言われてます」
六郎さんと輝子ちゃんは何やら言い合っている。
「しかしですね」
「私は昔からこの家で六郎さんと住むのに憧れていましたし」
「それはアナタが小学生の頃の話でしょう」
何となく疎外感感じて淋しくなっちゃう和泉さんだ。
そんな和泉さんの方に輝子ちゃんは顔を向ける。
「昔は良く言っていました。
『テルは六郎さんのお嫁さんになる』」
輝子ちゃんが言う。
お嫁さんっ?
何故か和泉さんの顔を見て挑むように言うのだ。
「和泉さん、輝子さんが小さい頃の話ですよ。
本当に小さい子供の頃」
「ああ」
小っちゃい子がパパのお嫁さんになるって言うような、そんな話。
「そうですね。
でも今でもそのつもりだと言ったらどうします?」
輝子ちゃんは和泉さんを見ながらそう言った。
「輝子?! 輝子さん……いったい何を……」
「六郎さん、今日は六郎さんの部屋で寝て良いですか?」
「いやっ、この居間で寝てください。
布団は持ってきます」
「この部屋は広くて落ち着かない。
大きいガラスで庭からも丸見えじゃないですか。
私は六郎さんと一緒が良いです。
昔の思い出話をしましょう」
えーと、えーと。
今でもそのつもり、というのは。
六郎さんのお嫁さんになるつもり。
六郎さんの部屋で寝るっ?!
女子高生が?!
キレイ目の美少女が。
そんなバカな。
「輝子ちゃんっ。
あたしの部屋で寝よっ」
和泉さんのお部屋。
長尾家の二階は和泉さんの部屋だけ。
本当は六畳二間だったのだけどフスマを外して一間にしてしまった。
キレイに片付いてるかと言うとそうでもない。
一階は六郎さんが毎日掃除。
古い家だけど、キレイにしてるのがすぐ分かる。
二階は和泉さんのスペース。
六郎さんはあまり立ち入らないようにしてる。
入るのは朝、なかなか起きない和泉さんを起こす為にくらい。
輝子ちゃんは勉強をしている。
和泉さんのパソコンデスク。
PCを退ければ勉強するに十分。
「輝子ちゃん、ベッド使う?」
「お気遣いなく、畳に布団敷くので充分です」
うーん。
和泉さんは床を眺める。
畳が見えるとこが無い。
着替えやら、私物やらが床にやたら転がってるのだ。
気が付くと輝子ちゃんがジト目で見てる。
明らかに片付いてない部屋を見回してる。
チラリと和泉さんに向けた眼つきは冷たい。
「あははは。
普段はもっと片付いてるんだよ。
ちょうど夏物と冬物の服入れ替えたりしてて。
ホラ土曜に掃除しようとしてたの」
完全にウソな訳でも無い。
毎週土曜はお掃除してる。
といっても見えるとこに掃除機かけてるだけというウワサも。
そんな事ないもん。
今週は夏物クリーニングに出すつもりだったもん。
そうするとモノが減るからそれで全面掃除する予定だったもん。
心の中で言い訳してしまう和泉さん。
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