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『こぼれ話 大学生だよ和泉さん』
第46話
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さて一週間が過ぎて。
何故か和泉さんは長尾家に住み着いているのである。
フシギな事に。
あの日長尾六郎さんは言っていた。
「ああ、同居人募集の貼り紙ですか。
申し訳無い。
私としてはもう少し高い年齢の方を想定していまして。
社会人、経験を積んだ大人の方をと思っていたんです。
学生さん、若い女性の方は考えていないんです。
すいませんね、カキザキさん」
だけれども玉江さんは声を掛けた。
夜はコンビニのバイトが有るので帰っていく和泉さん。
「和泉ちゃん、明日も来てね。
絶対よ、約束よ」
約束になってしまった。
行かない訳にはイカナイ和泉さんである。
長尾家にやって来た和泉さん。
「ここがアナタの部屋ね、お二階。
階段が急だけど、若いから大丈夫でしょ」
テキパキと玉江さんが決めていく。
あの。
エット。
息子さんにはダメと言われたんですが。
「何言ってんの。
ご飯美味しいって言ってたじゃない。
テストなんだから合格ってコトよ」
そうなのかな。
多分、絶対違うと思うけど。
それにコーポに荷物が有る。
引っ越すと言っても今スグにとはいかない。
「荷物?、家具ってどれくらい有るの。
何だ、その程度。
オトコどもにやらせましょ」
玉江さんが電話を掛けると、間もなく軽トラックがやって来た。
お年を召した男性が数人。
「よく来てくれたわね」
「玉江さんの頼みだ」
「断るワケにはいかねーよ」
あっという間に、和泉さんの家具は軽トラックへ。
そのまま長尾家の二階へ運び込まれた。
「昔馴染みの商店街の人達よ。
アタシ、昔は彼らのマドンナだったの。
ほとんど全員からラブレター貰ったの。
全部取ってあるのよ」
「その話は無しだぜ、玉江さん」
「また呼んでくれよな、
今度は二人っきりで」
お爺ちゃん達は帰って行った。
みんな元気だな。
仕事から帰って来た長尾六郎さん。
食卓に居る和泉さんを見て眉をピクつかせたけど。
それ以上何も言わなかった。
和泉さんは玉江さんの好意に甘えて長尾家に住み着いた。
図々しいかなと思うけど。
夜、布団に入って、朝起きる。
大学に行って、帰って夜ご飯。
それがこんなに幸せだったなんて。
生活サイクルが普通に戻った。
それだけで和泉さんはハッピー。
とてもこの生活、手離せない。
それに玉江さんとも仲良くなってしまった。
和泉さんは自分ではオシャベリでは無い方だと思ってる。
けど、玉江さんと話すと会話が尽きない。
和泉さんの話をなんでもニコニコ聞いてくれるのだ。
和泉さんは実家では家族が多い。
両親に弟が二人、妹一人。
今時の日本では大家族と言えるだろう。
騒がしい弟達に囲まれて。
一人で静かに暮らしたい。
そんなコト思っていたのだ。
一人暮らしなんて。
やってみたらそんなに楽しいモノでも無かった。
丁度家族が恋しいタイミング。
玉江さんとの会話は久々に楽しい時間だった。
玉江さんは話題が豊富。
さすが、お年を召してるだけは有る。
このお家は終戦してすぐに建てられたモノらしい。
えーっ、築何年なの!?
丈夫なお家。
土台がしっかりしてるらしい。
お家の中のリフォームや細かい修繕は何回も行ってるけど全体を作り直す必要は無い。
バイクの話。
お家に置いてあるバイク。
息子さんのかと思ったら玉江さんのだった。
息子さんは自動車免許は持っていてもバイクは乗れない。
和泉さんが実家でバイクに乗ってたと言ったら話が弾んだ。
玉江さんは自分の年齢を考えてもう乗るのを辞めた。
自分が事故を起こしても自業自得だけど。
事故で他人を傷つけちゃったら。
そう思うと乗れない。
うん、淋しいけどその通りだと思う。
和泉ちゃん、あのバイク使ってよ。
まだ結構新しいのよ。
使わないとすぐ痛んじゃうわ。
玉江さんはそう言ってくれた。
大学に行くのはともかく。
週末お買い物に行ったりするのに使わせて貰おう。
玉江さんのダンナさんは少し前亡くなってしまったらしい。
しんみり。
イイ男だったんだって。
息子さんを見ても分かる。
顔立ちが整ってる。
玉江さんの息子さん。
六郎さん。
年齢不詳。
玉江さんのお年から考えて結構な年齢のハズだけど。
なんだか若く見える。
和泉さんの父親は四十台。
計算上その十年は年上のハズ。
でも見た目に父より十年若く見えちゃうのだ。
マホウ?
魔法使い六郎さん。
六郎さんが玉江さんに向ける顔は優しい。
声も優しい。
笑顔なんて本当に優しい。
優しさのカタマリか。
いいなあ、玉江さん。
和泉さんは六郎さんの声が気に入ってる。
声が柔らかい。
男性らしく低い声なのだけど。
しゃがれたところが無い。
和泉さんに話す声だって柔らかいのだ。
だけど。
笑顔。
玉江さんに向ける笑顔と和泉さんに向ける笑顔は違う。
六郎さんが玉江さんに向ける笑顔は無限に優しさが詰まってる。
和泉さんに向ける顔はニコヤカなんだけど優しさが無いのだ。
営業的スマイル。
スマイルはゼロ円です。
目尻は下がってるし、口角も上がってるのだけど。
玉江さんに向ける笑顔を見ちゃうと違いは明らか。
瞳の奥が笑ってない。
あの玉江さんに向ける笑顔。
あの半分くらいの優しさでいいから和泉さんに向けてくんないかな。
半分なんてゼータク言わない。
四分の一でもいいや。
それだけでシアワセな気持ちになれそーな気がするのに。
何故か和泉さんは長尾家に住み着いているのである。
フシギな事に。
あの日長尾六郎さんは言っていた。
「ああ、同居人募集の貼り紙ですか。
申し訳無い。
私としてはもう少し高い年齢の方を想定していまして。
社会人、経験を積んだ大人の方をと思っていたんです。
学生さん、若い女性の方は考えていないんです。
すいませんね、カキザキさん」
だけれども玉江さんは声を掛けた。
夜はコンビニのバイトが有るので帰っていく和泉さん。
「和泉ちゃん、明日も来てね。
絶対よ、約束よ」
約束になってしまった。
行かない訳にはイカナイ和泉さんである。
長尾家にやって来た和泉さん。
「ここがアナタの部屋ね、お二階。
階段が急だけど、若いから大丈夫でしょ」
テキパキと玉江さんが決めていく。
あの。
エット。
息子さんにはダメと言われたんですが。
「何言ってんの。
ご飯美味しいって言ってたじゃない。
テストなんだから合格ってコトよ」
そうなのかな。
多分、絶対違うと思うけど。
それにコーポに荷物が有る。
引っ越すと言っても今スグにとはいかない。
「荷物?、家具ってどれくらい有るの。
何だ、その程度。
オトコどもにやらせましょ」
玉江さんが電話を掛けると、間もなく軽トラックがやって来た。
お年を召した男性が数人。
「よく来てくれたわね」
「玉江さんの頼みだ」
「断るワケにはいかねーよ」
あっという間に、和泉さんの家具は軽トラックへ。
そのまま長尾家の二階へ運び込まれた。
「昔馴染みの商店街の人達よ。
アタシ、昔は彼らのマドンナだったの。
ほとんど全員からラブレター貰ったの。
全部取ってあるのよ」
「その話は無しだぜ、玉江さん」
「また呼んでくれよな、
今度は二人っきりで」
お爺ちゃん達は帰って行った。
みんな元気だな。
仕事から帰って来た長尾六郎さん。
食卓に居る和泉さんを見て眉をピクつかせたけど。
それ以上何も言わなかった。
和泉さんは玉江さんの好意に甘えて長尾家に住み着いた。
図々しいかなと思うけど。
夜、布団に入って、朝起きる。
大学に行って、帰って夜ご飯。
それがこんなに幸せだったなんて。
生活サイクルが普通に戻った。
それだけで和泉さんはハッピー。
とてもこの生活、手離せない。
それに玉江さんとも仲良くなってしまった。
和泉さんは自分ではオシャベリでは無い方だと思ってる。
けど、玉江さんと話すと会話が尽きない。
和泉さんの話をなんでもニコニコ聞いてくれるのだ。
和泉さんは実家では家族が多い。
両親に弟が二人、妹一人。
今時の日本では大家族と言えるだろう。
騒がしい弟達に囲まれて。
一人で静かに暮らしたい。
そんなコト思っていたのだ。
一人暮らしなんて。
やってみたらそんなに楽しいモノでも無かった。
丁度家族が恋しいタイミング。
玉江さんとの会話は久々に楽しい時間だった。
玉江さんは話題が豊富。
さすが、お年を召してるだけは有る。
このお家は終戦してすぐに建てられたモノらしい。
えーっ、築何年なの!?
丈夫なお家。
土台がしっかりしてるらしい。
お家の中のリフォームや細かい修繕は何回も行ってるけど全体を作り直す必要は無い。
バイクの話。
お家に置いてあるバイク。
息子さんのかと思ったら玉江さんのだった。
息子さんは自動車免許は持っていてもバイクは乗れない。
和泉さんが実家でバイクに乗ってたと言ったら話が弾んだ。
玉江さんは自分の年齢を考えてもう乗るのを辞めた。
自分が事故を起こしても自業自得だけど。
事故で他人を傷つけちゃったら。
そう思うと乗れない。
うん、淋しいけどその通りだと思う。
和泉ちゃん、あのバイク使ってよ。
まだ結構新しいのよ。
使わないとすぐ痛んじゃうわ。
玉江さんはそう言ってくれた。
大学に行くのはともかく。
週末お買い物に行ったりするのに使わせて貰おう。
玉江さんのダンナさんは少し前亡くなってしまったらしい。
しんみり。
イイ男だったんだって。
息子さんを見ても分かる。
顔立ちが整ってる。
玉江さんの息子さん。
六郎さん。
年齢不詳。
玉江さんのお年から考えて結構な年齢のハズだけど。
なんだか若く見える。
和泉さんの父親は四十台。
計算上その十年は年上のハズ。
でも見た目に父より十年若く見えちゃうのだ。
マホウ?
魔法使い六郎さん。
六郎さんが玉江さんに向ける顔は優しい。
声も優しい。
笑顔なんて本当に優しい。
優しさのカタマリか。
いいなあ、玉江さん。
和泉さんは六郎さんの声が気に入ってる。
声が柔らかい。
男性らしく低い声なのだけど。
しゃがれたところが無い。
和泉さんに話す声だって柔らかいのだ。
だけど。
笑顔。
玉江さんに向ける笑顔と和泉さんに向ける笑顔は違う。
六郎さんが玉江さんに向ける笑顔は無限に優しさが詰まってる。
和泉さんに向ける顔はニコヤカなんだけど優しさが無いのだ。
営業的スマイル。
スマイルはゼロ円です。
目尻は下がってるし、口角も上がってるのだけど。
玉江さんに向ける笑顔を見ちゃうと違いは明らか。
瞳の奥が笑ってない。
あの玉江さんに向ける笑顔。
あの半分くらいの優しさでいいから和泉さんに向けてくんないかな。
半分なんてゼータク言わない。
四分の一でもいいや。
それだけでシアワセな気持ちになれそーな気がするのに。
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